【プレスリリース】抗体のクラススイッチを制御し微生物感染から生体を防御する分子の発見 ~感染症や免疫難病に対する治療法開発への手がかりに~

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 徳島大学大学院医歯薬学研究部・生体防御医学分野の九十九伸一助教、安友康二教授、モントリオール大学のJavier M Di Noia 教授、岐阜大学の前川洋一教授、滋賀医科大学の伊藤靖教授、東京大学の太田峰人特任助教、藤尾圭志教授らの研究チームは、遺伝学的な解析から自己免疫疾患との関連が示唆されながら機能未知であったAFF3遺伝子*1が、抗体のクラススイッチ*2を促進し、微生物感染から生体を防御する役割を持つことを明らかにしました。

 Genome-wide association studies (GWAS) *3は、遺伝的な多型を手掛かりに、さまざまな疾患や形質がどのような遺伝子と関連しているかを探索する研究手法です。GWASによって疾患に関連している可能性がある多くの候補遺伝子が報告されている一方で、各候補遺伝子がどのような機能を持っているかについて未知な場合も多く、これがGWASの知見を治療や予防に生かすための妨げのひとつとなっています。

 本研究では、複数の自己免疫疾患で共通する候補遺伝子をGWASのデータベースから選び、その中から機能が未知であり、発現様式が免疫細胞に比較的限局している遺伝子としてAFF3を抽出しました。AFF3分子の機能を知るために、Aff3遺伝子欠損マウスを作製・解析し、その免疫応答における役割について調べました。その結果、AFF3分子はリンパ球の一種であるB細胞において抗体のクラススイッチを促進する機能を持つことを発見しました。また、AFF3分子が欠損することにより寄生虫感染やウイルス感染に対する抗体価が著明に低下することも見出しました。ヒトにおいても、AFF3の発現と抗体遺伝子であるIGHG2、IGHA2のmRNA発現量が相関することも明らかにしました。本研究の結果は、AFF3は抗体のクラススイッチを制御することで自己免疫疾患の病的な自己抗体や、微生物に対する感染抵抗性に関わる抗体量を決める重要な分子であることを示唆しています。今後、感染症や免疫難病に対してAFF3を制御することによる薬剤開発が期待されます。

 本研究成果は、 米国東部時間 2022 年 8 月 24 日 14 時(日本時間 2022 年 8 月 25 日3時)公開の Science Advances 誌に掲載されました。

【用語解説】
*1 AFF3遺伝子
斜体で記載のAFF3は人間の遺伝子、斜体で記載のAff3はマウスの遺伝子、非斜体で記載のAFF3は動物種に関係なく分子、タンパク質を表す。
*2 (抗体の) クラススイッチ、スイッチ領域
抗体は、外来異物 (自己免疫疾患の場合は自己抗原) を認識する多様性に富んだ部分と、定常的な部分からなっている。定常的な部分はIgM, IgG1など数種類あり抗体のクラスと呼ばれる。異物を認識する部分が同一なまま、クラスが変わることをクラススイッチという。スイッチ領域は、このクラススイッチを誘導するために存在するゲノムDNA上の領域のこと。
*3 GWAS
比較的多くのヒトで認められるDNAの多型を50万個以上選び、その多型となんらかの疾患や形質との統計的関連を調べる研究手法。多数の遺伝子によって影響を受ける疾患・形質について、その発症メカニズムなどを解明するために用いられる。

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大学院医歯薬学研究部医学域生体防御医学分野
担当者:安友 康二 教授、九十九 伸一 助教
電話番号:088-633-7077
E-mail:(安友)yasutomo@tokushima-u.ac.jp、(九十九)stsukumo@tokushima-u.ac.jp

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電話番号:088-633-9116
E-mail:isysoumu1k@tokushima-u.ac.jp

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