平成29年度徳島大学卒業式・修了式式辞

平成30年3月23日(金曜日)

会場 アスティとくしま

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徳島大学を代表いたしまして、学部卒業生の皆様、大学院修了生の皆様に、心からお祝いを申し上げます。

ご卒業、修了、誠におめでとうございます。

多くの皆様が青春の最も多感な時期を徳島大学で過ごしていただきましたことに対して、本当に感謝いたします。ありがとうございました。

徳島大学は1949年に設立され、2019年に70周年を迎えます。これまでに、学部卒業生55,517名、大学院修了生15,468名で合計70,985名の多くの卒業生・修了生を送り出してきました。来年、2019年には、70周年記念行事などを開催いたしますので、是非、参加してください。

 

「徳島大学70周年記念事業」

http://www.tokushima-u.ac.jp/anniversary_70th/

 

さて、本日は、今日の式次第にも書いてありますが、2つの言葉を贈りたいと思います。一つは、「未来は予測するものではなく、創るものである」であり、もう一つは、「早く失敗しよう! 安く失敗しよう! 賢く失敗しよう!」という言葉です。言葉の意味を解説する必要はないと思いますが、私の気に入っている例を紹介します。

現在、世界は様々な問題を抱えています。世界の様々な問題については、SDGs(エス・ディー・ジーズ)を参照してください。

 

「外務省」
SDGs(持続可能な開発目標)持続可能な開発のための2030アジェンダ

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/about/doukou/page23_000779.html

 

SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。SDGsは2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連加盟193か国が2016年~2030年の15年間で達成するために掲げた目標です。これは、国連が示した世界の課題解決目標のリストで、1) 貧困をなくそう、2) 飢餓をゼロ、3) 全ての人に健康と福祉を、4) 質の高い教育をみんなに、5) ジェンダー平等を実現しよう、6) 安全な水とトイレを世界中に、など17の目標があります。皆様には、このような問題を解決する人材として、世界でご活躍いただきたいと思っています。

ここで、実際に地球の問題を解決しようとしている人物を紹介します。その名前は、アメリカ合衆国のイーロン・マスク氏です。彼はまさに、「未来は創るもの」を実践している有名人です。

そのイーロン・マスク氏を紹介している本をまず紹介します。本の題名は、 「世界をつくり変える男 イーロン・マスク」です。

 

「株式会社ダイヤモンド社」イーロン・マスク 世界をつくり変える男

https://www.diamond.co.jp/book/9784478102848.html

 

著者は竹内一正氏です。竹内氏は、1981年に徳島大学大学院工学研究科を修了された、皆様の先輩です。松下電気(現パナソニック)やアップルコンピュータにお勤めになり、現在は、コンサルタント会社オフィス・ケイを経営しておられます。

 

「竹内一正プロフィール」

http://www.office-kei.jp/company.html

 

イーロン・マスク氏は、1971年生まれの47歳ですが、24歳の時に、インターネットのイエローページ版を作成する会社を立ち上げて成功し、イグジットして約22億円を手に入れます。その後、地球において、人口が増加し、人類が全て地球に住めなくなることを想定し、この人口増加問題を解決するために「ヒトを火星に送り、そこで生活できるようにすること」、つまり火星移住計画を提案し、実行しています。そのための企業を経営しています。ロケットの会社:スペースX社、電気自動車と太陽光発電の会社:テスラ社です。テスラ社はまさに、SDGsを実践する企業となり、太陽光による発電から蓄電までを垂直に統合した世界初の「サステイナブル・エナジー・カンパニー」になっています。それぞれ、簡単に紹介します。

最初は、人類を火星に送るためのロケットの開発会社「スペースX」です。スペースX社は、民間企業として宇宙ロケット、ファルコンを開発してきました。これまでのロケット製作経費を1/100にすることを目指していますが、それをどのように成功に導くのかが課題です。その答えは、シュミット博士の言葉にあります。つまり、「早く失敗しよう! 安く失敗しよう! 賢く失敗しよう!」ということです。何か新しいアイディアを実現したいと考えると、新しいことであればあるほど、失敗する確率が高いでしょう。そうであれば、早く実行して、失敗した場合は、その原因などを分析し、次のアイディアを試すしか、成功する方法はないのです。従って、失敗は悪いことではなく、失敗からいかに学ぶかが重要なのです。例えば、「挑戦しろ、だけど失敗するな」と言われると、誰も挑戦できないでしょう。古くから日本では、「失敗は成功の素」と言われてきました。まさに、失敗からしか人は学べないのです。

イーロン・マスク氏は、打ち上げに使用したロケットをそのまま回収することにより、費用を削減することを考えました。そこに至る過程は失敗の連続でした。

現在の世の中にある多くのものが、実は多くの失敗から生まれています。まさに、成功の歴史は、失敗の歴史です。

さて、スペースXですが、多くの失敗の後に、本年2月に史上最大級のロケット「ファルコン・ヘビー」の打上げに成功し、2基のブースターロケットを同時に着陸させる史上初の偉業までなしとげました。

2つ目の企業はテスラ社で、電気自動車の会社です。ロケットを開発して、人類を火星に送るにはまだ時間がかかります。それまで、地球の環境を維持するため、電気自動車を開発することにしたのです。

この車が搭載している電池は、パソコンで使用されているリチュウム電池で、7000個程度を組み合わせて使用しているそうです。

テスラ社は、太陽光発電から蓄電のための部門があります。

 

「株式会社ゼック」
「太陽光パネル第三者所有モデルって?」
2016年10月26日発より引用

http://zecj.jp/太陽光パネル第三者所有モデルって?2016年10月26日発/

 

第三者所有モデルという方法で、発電設備を広げています。つまり、テスラ社が資金を出して、一般の家庭の屋根に太陽光発電設備を備えつけます。そのパネルから生み出された電力はその家庭で自家消費を行い、余剰電気は売ります。この方式により、米国の太陽光パネル化が進展しています。

さらにイーロン・マスク氏は、3つ目の会社を経営しています。それは、ニューラリンク社です。「脳とコンピュータを繋いで、病気を治療する」のが目的だそうですが、人工知能AIに対応して、ヒトの脳を高度化する方法を開発する会社のようです。詳細は省略いたしますが、是非、注目してください。AIがヒトの脳の能力を獲得する時点はシンギュラリティと呼ばれています。それまでには、脳とコンピュータが繋がっている可能性があり、予想できない社会が到来するでしょう。

イーロン・マスク氏の世界は、まさに未来は、予測するものではなく、創るものであるとの言葉がピッタリくる世界です。

 

「日刊工業新聞 電子版」2017年8月27日に掲載されています。

https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00440858

 

竹内氏からのメッセージを紹介します。

「20世紀はいかに失敗をしないかが重要でした。しかし、これからの時代は、失敗を避けるだけの人材などいりません。失敗をして、それを活用できる人材だけが、世界の課題を解決できるのです。しかし、「自分は失敗する勇気なんてないよ」という人もいるでしょう。そんな人には、周りで新たなことに挑戦しようとしている人、挑戦して失敗した人を見つけたら、批判するのではなく、勇気づける人になっていただきたい。足を引っ張るのではなく、少なくともそっと見守ってあげられる人になってください。いつも主役であるとは限りませんので、その場合は、頼りがいのある支援者になってください。」というメッセージです。

最後になりますが、皆様も、失敗を恐れずに、是非大きな課題にチャレンジして、自ら未来を創造してください。

以上、私の式辞にいたします。本日はおめでとうございます。

 

学長式辞の参考動画は以下で見ることができます。

 

最終更新日:2018年4月4日

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