細胞は、形を保ち、移動し、隣の細胞と接着するために、アクチンというタンパク質からなる細胞骨格を絶えず組み替えています。しかし、同じ細胞の中で、場所に応じて太さや形の異なるアクチン線維束がどのようにつくり分けられるのか、その仕組みには不明な点が残されていました。
徳島大学フォトニクス健康フロンティア研究院 分子細胞機能ユニットの坂根亜由子イニシアティブユニットリーダーらの研究グループは、細胞内の「液滴」の中身が変わることで、細胞骨格をつくる働きまで変化することを明らかにしました。JRAB/MICAL-L2というタンパク質が形成する液滴は、太いアクチン線維束の形成を促進します。一方、Rab13というタンパク質がこの液滴に加わると、液滴の硬さは約1.5倍となり、アクチン線維束の形成面積は約10分の1に減少することが、精製タンパク質を用いた試験管内実験で明らかになりました。また、JRAB/MICAL-L2を欠損させた上皮細胞では、細胞周辺部の太いアクチン線維束や接着構造が乱れ、細胞同士の接着も不安定になりました。これらの結果は、液滴が単なるタンパク質の集合体ではなく、その構成分子に応じて物理的性質と働きを変え、細胞骨格の形成に関わることを示しています。
本成果は、細胞内の液滴が分子を集めるだけでなく、その「中身」の変化によって働きを切り替えるという、新たな細胞制御の考え方を提示し、細胞の形や接着を支える仕組みの理解を深めるものです。本研究は、2026年10月29日21時(日本時間)に国際学術雑誌『Journal of Cell Science』に掲載されました。
【プレスリリース】細胞内の「液滴」は、中身が変わると働きも変わる!―液滴の中身が硬さを変え、細胞骨格の形成を切り替える仕組みを発見― (PDF 701KB)
