北海道⼤学総合イノベーション創発機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)・同⼤学電⼦科学研究所の⼩松崎⺠樹教授らの研究グループは、徳島⼤学先端研究推進センターの堀川⼀樹教授、東京⼤学⼤学院総合⽂化研究科の澤井 哲教授、⼤阪⼤学産業科学研究所の永井健治教授らとの共同研究により、細胞性粘菌キイロタマホコリカビ(Dictyostelium discoideum)が飢餓状態で形成する化学シグナル(cyclic-AMP、cAMP と略記)の波と細胞集団の運動との関係を新しい画像解析技術によって明らかにしました。この⽣物は、餌がなくなると単独で動いていた細胞が互いに「cAMP」と呼ばれる化学物質を送り合いながら集まり、⼀つの個体のように⾏動します。しかし、個々の細胞がこの波にどのように反応して集団運動へ移るのか、その⻑期間にわたる過程は、これまで断⽚的にしか分かっていませんでした。
研究グループは、蛍光タイムラプス画像にぼかし処理を施し、粒⼦画像流速測定法(Particle Image Velocimetry:PIV)とウェーブレット解析を組み合わせることで、細胞レベルでの運動と化学波(=化学シグナルの波)の濃度勾配や運動を同時に解析する新しい⼿法を開発しました。ぼかさない画像からは細胞⼀つ⼀つのレベルの動きが、強くぼかした画像からは化学波の動きが取り出せることを発⾒しました。その結果、細胞は化学波に受動的に運ばれるのではなく、波が近づくタイミングを⾒計らって波の進⾏⽅向へ向かって(濃度勾配を感じて)運動し、波が通り過ぎた後は向かうべき⽅向を⾒失って休むような状態になることを初めて体系的にかつ定量的に⽰しました。この振る舞いは、次に来る波へ向かって漕ぎ出し、波に乗った後は次の波を待つサーファーの⾏動によく似ています。
本研究は、独⽴した細胞性粘菌が協調的な集団へと移⾏する⻑期的な過程を定量的に捉えた初めての成果であり、傷の治癒、免疫細胞の集合、発⽣、⽣物の集団形成など、多くの⽣命現象を理解する新しい解析技術として期待されます。
なお、本研究成果は、2026 年 8 ⽉ 24 ⽇(⽉)公開の Scientific Reports 誌にオンライン掲載されました。
【プレスリリース】化学シグナルの「波」に乗る細胞の集団⾏動を可視化~細胞が波を待ち、波に乗り、集合体をつくる仕組みを解明〜 (PDF 967KB)
