【プレスリリース】タンパク質フォールディングの速度論的制御分子の開発に関する最新の知見と展望

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 東京農工大学大学院工学研究院の村岡貴博教授、東北大学学際科学フロンティア研究所の奥村正樹准教授、徳島大学先端酵素学研究所の齋尾智英教授の研究グループは、タンパク質フォールディングを促進する酵素のメカニズム解明、および類似機能を持つ低分子化合物の開発に関して、「遅延制御」という独自の機構を提唱し、世界をリードする重要な成果をこれまで多数発表してきました。本論文で、これまでに得られた最新かつ重要な知見をまとめ、今後の展望と合わせて報告しました。

 アミノ酸が連結して作られるポリペプチドは、天然構造と呼ばれる特定の三次元構造を形成して、タンパク質としての機能を獲得します。この天然構造を形成する過程をポリペプチド鎖の折りたたみ、フォールディング、と呼びます。非天然型の立体構造を形成した構造異常タンパク質は、神経変性疾患注1)や糖尿病などのミスフォールディング病を発症する原因と考えられています。またタンパク質は、インスリンや抗体医薬注2)などバイオ医薬品としても広く利用され、その社会的重要性は近年急速に高まっています。フォールディングを効率よく進める生体システムの理解と、フォールディングを促進する薬剤開発は、ミスフォールディング病の予防や治療、そしてタンパク質製剤の生産効率の向上に直結する重要な課題です。その中で我々は、独自に見出した「遅延制御機構」に基づき、以下に示す重要なメカニズムの解明と技術開発を世界に先駆けて達成してきました。
・分子シャペロンが、フォールディングを遅延させるホールダーゼ(Holdase)および促進するフォールダーゼ(Foldase)として対照的な二面性を示す分子メカニズムの解明
・ミスフォールディング病との関連が指摘されるジスルフィド結合触媒酵素群が、酸化還元反応の遅延制御によってフォールディング速度を精巧に調節する分子メカニズムの解明
・遅延制御機構に基づく、生体内システムと比肩する高い活性を持つ初めての人工フォールディング促進分子の開発

用語解説:
注1)神経変性疾患
中枢神経を構成する特定の細胞群が障害を受け発症する脳神経疾患の1つ。構造異常タンパク質の蓄積や沈着が神経細胞群の障害を引き起こす主要因の1つと考えられている。
注2)抗体医薬
抗体を利用した医薬品。抗体は、がん細胞などの細胞表面にある抗原を特異的に認識し、治療する。抗原を持たない他の細胞は攻撃しないため、副作用が少ないと考えられている。

【プレスリリース】タンパク質フォールディングの速度論的制御分子の開発に関する最新の知見と展望―「遅延制御機構」が反応を促進する新しい学理と、構造異常タンパク質に起因する難病治療に貢献する学術基盤 ※無断転載禁止(PDF 1.1MB)

お問い合わせ先

<研究に関する問い合わせ>

徳島大学先端酵素学研究所

教授 齋尾 智英

TEL 088-634-6421

E-mail saio@tokushima-u.ac.jp

 

<報道に関する問い合わせ>
先端酵素学研究所事務室
電話番号 088-633-9420
メールアドレス kousojimc@tokushima-u.ac.jp

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