ビタミンDは心不全入院後の死亡率低下に関連

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 徳島大学循環器内科の楠瀬賢也講師、佐田政隆教授らの研究グループは、日本最大の循環器データベースである循環器疾患診療実態調査(JROAD-DPC)を用い、ビタミンD製剤内服と心不全入院後の死亡率低下との関係を報告しました。近年、COVID-19でもその有効性が示唆されているビタミンDですが、心不全の死亡率改善に役立つ可能性があります。この研究成果は1月23日付けで「Nutrients」に掲載されました。

(研究の背景)
 日本には現在約100万人の心不全患者がいます。総人口が減少していますが、今後の高齢化と共に心不全患者はさらに増えていきます。心不全の主な治療薬は、ガイドラインで示される薬がいくつかありますが、その死亡率は高止まりしており、新たな治療方法が期待されます。
 ビタミンDは脂溶性ビタミンの一つで、さまざまな役割を持っています。例えば、カルシウム代謝への関与、免疫反応に関与する役割などです。ビタミンDが欠乏すると、高血圧や末梢血管疾患、糖尿病やメタボリックシンドローム、冠動脈疾患と関連しているとされていましたが、重症を含む心不全入院症例に対するビタミンD補給の有効性は明らかでありませんでした。
 また、COVID-19が感染すると血中ビタミンD濃度が明らかに低く、ビタミンDを補充すると死亡率が減るという報告があり、ビタミンDの新たな利用法について注目が集まってきています。
 本研究では、日本循環器学会の実施する「循環器疾患診療実態調査(JROAD /JROAD-DPC)」を用いて、ビタミンD製剤投与が心不全入院症例の入院中死亡率と関係があるかを検証しました。


(研究の成果)
 徳島大学循環器内科の楠瀬賢也講師・佐田政隆教授らの研究グループは、2012年から2017年に発症した93,692人の心不全入院症例から、ビタミンD製剤を投与した症例と、患者背景や心不全重症度を統計により合わせたビタミンD製剤を投与しなかった症例を抽出し、10,974例(ビタミンD投与群5487例・ビタミンD非投与群5487例)で入院中死亡率を比較しました。
その結果、ビタミンD補給を受けた症例の院内総死亡率は非投与群と比較して低いことが示されました(6.5対9.4%・オッズ比:0.67,p <0.001)。重症心不全症例でもその効果は一貫していました。

(研究の意義)
 ビタミンDは心不全で欠乏することが知られており、その補充が死亡率低下と関係していました。本試験は過去のビタミンDの研究と異なり、重症心不全症例を含んでおり、今後、この因果関係を示すための研究が期待されます。

図:赤線:ビタミンD非投与群
 青線:ビタミンD投与群
ビタミンD投与群のほうが死亡率が低い。
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本研究成果は「Nutrients」に2021年1月23日に掲載されました.
掲載誌名:Nutrients
論文題目:Association between Vitamin D and Heart Failure Mortality in 10,974 Hospitalized Individuals
論文著者:Kenya Kusunose, Yuichiro Okushi, Yoshihiro Okayama, Robert Zheng, Miho Abe, Michikazu Nakai,Yoko Sumita, Takayuki Ise, Takeshi Tobiume, Koji Yamaguchi, Shusuke Yagi, Daiju Fukuda, Hirotsugu Yamada, Takeshi Soeki, Tetsuzo Wakatsuki and Masataka Sata

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