香川学長と飯泉徳島県知事が対談を行いました

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挙県一致で取り組む地方創生 -「徳島の地(知)の拠点」徳島大学の役割 -

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社会の変化に柔軟に対応する組織改編により機能強化を図る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

香川: 本日は、徳島大学のこれまでの取組や、来年度から始まる第3期中期目標期間の重点的取組について、飯泉知事のご意見、本学へのご要望をお伺いしたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

飯泉: こちらこそ、このような機会を設けていただき、ありがとうございます。今日はよろしくお願いいたします。

香川: まず、平成28年4月の組織改革から話を進めさせていただきます。

この組織改革の背景としては、グローバル化や少子高齢化の進展、さらには新興国の台頭などによる競争激化など、国立大学を取り巻く環境の変化から、平成25年11月に文部科学省が発表した「国立大学改革プラン」があります。その内容は、平成25年度から27年度までの3年間を「大学改革加速期間」として設定し、各大学の機能強化の視点として、①強み・特色の重点化、②グローバル化、③イノベーション創出、④人材育成機能の強化 の4項目を掲げ、社会の変化に対応できる教育研究組織づくりを求めるものでした。もっとも本学では、この「国立大学改革プラン」が出される前から、本学の「強み」を活かした学部改組計画を検討しており、その中には、飯泉知事からも強い要請のあった農学系学部の新設計画もあったわけです。

その内容は、「本学の強みである『生命系』『理工系』をさらに進展させるとともに、地域からの要請に応えうる大学」をコンセプトとして、既存の総合科学部と工学部を改組し、社会科学系に特化した「総合科学部」に、「理」と「工」の知識を持つイノベーション人材を育成する「理工学部」、そして新たに、ヘルス・フード・アグリとバイオを融合した産業を創出する人材の育成を目的とした「生物資源産業学部」を設置するというものです。平成26年度に入って、本格的にこの改革案について文部科学省と交渉を進め、先般、8月27日に晴れて認可をいただきました。

学部の設置申請に際しては、要望書を提出いただくなどご尽力いただきました。また、大学設置基準という省令により、農学に関する学部には附属施設として農場を置くこととされていますが、本学に農場などどこにもない。ましてや、整備するにも敷地がない。このような状況下、県立農業大学校跡地をお貸しいただき、本当に助かりました。ありがとうございました。

生物資源産業学部の新設・地方創生のフラッグシップ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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飯泉: 徳島大学に30年ぶりの新学部として「全国初」、農林水産資源を活用した、新たな産業の創出に資する人材を育成する「生物資源産業学部」が設置されることは、県としても国への政策提言等を通じ、6次産業化人材を育成する学部創設の重要性を訴えてきた成果であり、大変喜ばしい限りです。

県内に農学系の学部が設置されることにより、中・四国9県の中で唯一農学部がなかった本県において、職業系のコースを持つ高等学校から、専修学校である農業大学校、そして、徳島大学へと連なる「6次産業化人材育成システム」が形成されることとなり、本県農林水産業及び関連産業の発展に大いに貢献できるものと考えています。ひいては、偏差値重視の価値観を大きく変えるとともに、本県高等学校における専門教育の在り方や新たなキャリアパスを実現する「起爆剤」になり得るものと大いに期待しています。

今後、徳島大学とより一層の連携強化のもと、「生物資源産業学部」と「農林水産総合技術支援センター」を中核とした、全国初となる「アグリサイエンスゾーン」を構築し、幅広い「産学官金」のネットワークを形成することにより、新技術の開発や人材の育成において新たな展開を図り、農業の成長産業化を具現化していきたいと考えているところです。

まず、新技術の開発については、徳島大学が有する先端技術を活用させていただき、ICTやロボットによる「スマート農業」の推進、バイオ技術を用いた地球温暖化に適応する「新品種の創出」、農畜産物の機能性を活かした「サプリメントの開発」など、農業生産の向上や地域資源の高度利用に資する新技術の開発を加速する。

また、人材の育成については、教員の相互派遣はもとより、「6次産業化のプロフェッショナル」を目指す高校から大学までの一貫した養成カリキュラム、先進的な農業者や食品関連事業者のもとでの実地研修などにより、専門教育の高度化を図り、6次産業の起業や輸出にも果敢に挑戦する高い実践力を有する人材の育成などについて、新しく生まれ変わる徳島大学とともに、徳島から農林水産業の未来を拓くイノベーションを創出し、本県農林水産業が魅力ある成長産業として地方創生を牽引できるよう、進めていきたい。このように考えているところです。

香川: 生物資源産業学部は、「1次産業、食料、生命科学に関する幅広い専門知識と、生物資源の製品化、産業化に応用できる知識と技術を有し、国際的視野に立って、生物資源を活用した新たな産業の創出に貢献できる人材」の養成を目指しています。農業分野、1次産業の活性化だけでなく、極めて多様な生物資源を対象として、最新の生命科学技術を応用した生物資源の生産及び加工に加えて、市場ニーズに合致した製品化と産業化に必要な経営、商品開発等の基礎知識を総合的に学べることがこの学部の特長です。

徳島県の持つ豊富な資源を活用して、新たな産業を起こすことができるような人材を育成することにより、地域の活性化に役立てばと思っています。

また、新たなキャリアパスとして、「地方創生型」入学試験を導入しました。これは、センター試験を課さない推薦入試で、農業高校や工業高校などの実業高校を対象としており、8名の定員枠を設けました。うち4名は、県内の実業高校を対象とする「地域枠」としています。意欲ある生徒さんの入学をお待ちしています。

このほか、高大接続の最適化を目的とする教育・研究の実施を目指して、学内及び高校キャンパス内へのサテライト研究室の設置や高校への出前授業、開放授業の充実を図りたいと考えているところです。

飯泉: 是非とも、地域創生のフラッグシップとなる学部として、頑張っていただきたい。県としても、最大限の協力をさせていただきたいと考えているところです。

県が挙県一致で取り組む地方創生に主要プレイヤーとしての役割を果たす ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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香川: 「地方創生のフラッグシップ」というお話が出たところで、私も「地方創生"挙県一致"協議会」の委員ですので、次は地方創生について、話を進めたいと思います。

本学では、平成28年度から始まる「第3期中期目標期間」における重点的取組として、徳島県が挙県一致で取り組む「VS東京『とくしま回帰』総合戦略」の主要プレイヤーとして、「県内若者の地元定着」や「雇用の創出」などに大きな役割を果たし、徳島の地方創生に貢献することを重点的戦略の一つに位置付けています。

この総合戦略における本学との連携による施策について、お話を伺えればと思います。

この程、若年層人口の東京一局集中の解消をめざし、徳島県をはじめとして、県内の高等教育機関、地元企業等、県内35機関のご協力を得て申請した「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」 "とくしま元気印イノベーション人材育成プログラム"が採択されました。

この事業において、地域の「産」「学」「官」で事業協働体を形成し、雇用創出と就職率向上が期待できる「次世代技術」「地域医療・福祉」「6次産業化」「地域づくり・観光・ICT」の4分野において、地域ニーズを踏まえた専門教育やインターンシップにチュートリアル方式を取り入れた「寺子屋式指導法」などの教育プログラム開発や雇用創出に協働して取り組み、徳島のイノベーションに意欲と専門知識等の能力を持って主体的に参画する「元気印イノベーション人材」を育成し、県内就職率の向上を目指したいと考えています。

飯泉: 今回、徳島大学が中核となり、文部科学省の「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」に採択されたことは、本県の地方創生の取組みを推進する上で、大変心強く思っています。大学への進学や就職の段階における若者の県外流出が顕著な本県において、県や他の高等教育機関、NPO、企業等が一体となり、挙県一致で地方創生の担い手となる人材育成に取り組むことは、地方創生の「起爆剤」になると考えています。

県においても、「VS東京『とくしま回帰』総合戦略」において、「若者の『とくしま回帰』を生み出す大学等の活性化」を柱の一つに位置付け、大学生自らが地域の課題解決に取り組む「地域連携フィールドワーク講座」の開講や大学の地域での活動拠点の開設・運営を支援する「大学等サテライトオフィス開設支援制度」の創設、今年度、徳島大学において先行実施していただいている大学生の地域でのボランティア活動を大学の単位として認める「ボランティアパスポート制度」の導入など、大学と地域が連携した教育・研究活動を支援し、地方創生の担い手となる人材の育成に取り組んでいます。

また、企業との官民連携事業に取り組むことも重要です。今年度から県内の経済界や企業と連携して、官民協働海外留学支援制度の地域人材コースとして「徳島県地域グローカル人材育成事業」を立ち上げ、学生の留学離れが進んでいる中で、企業の皆さんにお金を出していただき、海外でのインターンシップ先を県等が手当をして、グローバル人材の育成に取り組んでいます。

これからは、企業も巻き込む形で、ローカルでありながら、視野はグローバルで進めていく必要があると考えています。

香川: 知事お話のとおり、「VS東京『とくしま回帰』総合戦略」では、本学の役割は極めて大きく位置付けられています。このため、本学の重点的戦略と県の総合戦略とを連動させることで、県はもとより、市町村や産業界等の全県的な協力が得られることとなり、本学の戦略ひいては中期目標・中期計画の達成がより実効性を持ってくるものと考えています。

このことから、戦略の目標となる地域創生に資する多種多様な取組の達成度を測る指標として、①県内就職状況、②県内インターンシップ参加状況、③県内自治体との協定状況、④地域課題解決事業の実施状況(実施件数等)、⑤地域人材バンクの登録状況(登録者数)、⑥フューチャーセッション実施状況、⑦地域産業人材育成講座の実施状況(年間受講者数)、⑧県や産業界との連携による共同研究実施状況(実施件数)、⑨徳島県地域グローカル人材育成事業への参加状況 などを取組に即した指標として定め、県と連携して取り組んで参りたいと考えています。

次に、「雇用の創出」ですが、雇用の創出には、イノベーションを導く社会的要請の強い課題を研究力で解決する必要があると考えています。

このため、本学の「理工系・生命系」の強みを生かし、特色である「酵素」「LED」「生物資源」研究領域などにおいて、先端酵素学研究所や先端LED研究センターの創設などにより研究拠点を形成し、医歯薬学研究部、理工生物資源研究部を中心に、最先端の特色ある異分野融合型の研究の強化を図ることを重点的戦略の一つに位置付けていますが、この点についてはいかがでしょうか。

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飯泉: 地方創生を実現するためには、人材育成はもとより、新しく業を起こすことが不可欠です。

県においては、「VS東京『とくしま回帰』総合戦略」の基本目標に「地域における仕事づくり」を掲げ、5年間で4,000人の雇用創出を図ることとしました。これを達成するには、大学と連携して新しいイノベーションを創出する必要があります。

県では、本県の強みである2つの光王国、「LED」と「全国屈指の光ブロードバンド環境」を活用した成長産業の誘致を進め、今では情報通信関連企業が12社17事業所立地し、1,000名を超える雇用がうまれています。また、中山間地域の神山町や美波町、三好市等でサテライトオフィスが31社になりました。こうした新しい業を起こし、県下全域に拠点を持っていくことについては、徳島大学理工学部の「地(知)の拠点」としての役割が期待されています。

もう一つは、徳島大学と連携して取り組んでいる「とくしま『健幸』イノベーション構想」の推進です。糖尿病ワースト1の脱却を図るとともに、世界レベルの糖尿病研究開発の推進により、新しい業を起こす拠点となっており、新しい製品、製薬、健康食品が出てきている。そして、足掛け20年ほぼワースト1だった糖尿病死亡率が平成26年はワースト7となり、脱却の兆しが見え始めました。こうした部分でも、新しい業も生まれてきています。

さらに、我々として期待しているのは、国をあげて取り組んでいるインバウンドです。国は、2020年に訪日外国人2,000万人を目指しており、すでに平成27年度中に2,000万人を突破しそうだということで、これからは、観光といった観点、インバウンドの対策をしていく必要があります。東京を中心としたゴールデンルートは満杯状態になっており、ゴールデンルート以外の新しいルートを作ろうと観光庁が音頭をとって広域観光周遊ルートを作り、本県は、四国、中四国の瀬戸内、関西広域連合と3つの広域観光周遊ルートに入っている唯一の県です。それだけ、インバウンドの受入が期待をされています。そういった中で、徳島大学にもご協力いただいた医療観光については、これから大きな起爆剤になると思っています。

こうした新しいイノベーションを徳島から起こしていく、そこに若い皆さんの徳島回帰、さらには、徳島出身の若い子が徳島で大学を出て、徳島で就職する、"Think global,Act local" を実践する時代が来ていると考えています。

香川: 「雇用の創出」に向け、一層連携を強化して、産学官連携を通じて大学の「知」の活用を推進し、大学発ベンチャーの育成支援や株式会社テクノネットワーク四国(四国TLO)との連携によるイノベーション創出など、研究成果を社会に還元したいと考えています。

地域医療の再生のための医療拠点「総合メディカルゾーン」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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香川: 最後に、総合メディカルゾーンについて、お話を伺いたいと思います。

平成24年10月の県立中央病院開院と同時に、徳大病院とを結ぶ連絡橋が架かり、本年9月には、知事にも完成式典にご臨席いただきました新外来診療棟が完成し、診療を開始しています。

新外来診療棟の開院は、徳島大学病院におけるこれからの医療を発展させるための新しいスタートです。大学病院は、徳島県唯一の特定機能病院として、また、徳島県立中央病院との連携による総合メディカルゾーンにおける、地域医療の中核病院としての役割を担っており、全国的に例のない立地条件を活かし、2病院を一体とした「医療・教育の拠点化」を目指しています。

今後も社会的使命を自覚し、期待に十分応え得る高度先進医療をさらに推進するとともに、地域の皆様へ高度で良質の医療をご提供することで、地域に貢献して参りたいと考えています。

飯泉: 政策医療を担う高度急性期病院としての「県立中央病院」と、教育・研究や高度医療の提供を行う特定機能病院としての「徳島大学病院」による緊密な連携・協力が具現化しており、新中央病院開院に併せて整備した、両病院を繋ぐ連絡橋を使用した患者搬送や職員の交流は、平成26年度実績で19,311件に上っています。

中央病院は、ドクターヘリの基地病院であり、出動件数は平成24年10月の開始以降、6月に1,000件を突破しましたが、搬送患者のうち、脳卒中や広範囲熱傷等の特殊疾患を有する患者は、連絡橋を通じ大学病院へ搬送しています。

周産期医療では、両病院合わせて、MFICU 6床、NICU 12床、GCU 18床をメディカルゾーンとして有しており、連絡橋を通じて、例えば大学病院が満床の時は、新生児を中央病院へ搬送するなど、正に一体的な運用が図られています。

災害医療では、10月18日に総合メディカルゾーンを会場とし、徳島市医師会による負傷者のトリアージの他、中央病院で受け入れた重症患者を連絡橋を介し大学病院へ搬送する「患者引き継ぎ訓練」など、初の「総合メディカルゾーン・災害医療訓練」を実施することとしています。

また、職員の交流の面では、中央病院の救命救急センターに大学病院から指導医が派遣され、若手医師にとって、救急や総合診療の魅力ある研修の場を形成しています。

こうした効果もあって、両病院合わせた初期臨床研修医数は年々増加しており、将来、県南部・県西部も含めた県下全域において地域医療を担う若手医師を着実に育成しているところであります。

9月の「徳島大学病院・新外来診療棟」の開院に引き続き、将来的には両病院の敷地をメディカルストリートでつなぎ、駐車場を共同利用するなど、今後さらに、総合メディカルゾーンとしての一体的な整備を進めて参りたいと考えています。

香川: 名実ともに「総合メディカルゾーン」となるよう、ますます一体化を図るなど、努力して参りたいと思います。

「徳島の地(知)の拠点」として地域の期待に応える大学 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

香川: 徳島大学は、「徳島の地(知)の拠点」として、地方創生及びグローバル化の視点から、産業界や行政さらには住民の期待に応え、地域振興の核となる「人材」教育や研究など、地域貢献に重点をおいた取組みを進めるとともに、本学の強みや特色のある分野では、我が国、あるいは世界をリードする教育研究を重点的に推進することとし、資源の再配分による全学的な組織改革を基軸として、教育研究機能の強化を図りたいと考えています。

これまで以上に、徳島県との連携を強化し、地方創生や産業競争力の強化に貢献したいと考えていますので、引き続きよろしくお願いします。

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