筋萎縮ゼロプロジェクト;重症患者における尿中タイチンによる筋萎縮の評価

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徳島大学病院集中治療部 中西信人助教は、ICU入室重症患者の筋萎縮評価に関する研究を米国集中治療医学会雑誌「Critical Care Medicine」から出版しました。

発表のポイント
 ▶筋萎縮ゼロプロジェクトで応援頂いた研究である。
 ▶尿中タイチンという物質による筋萎縮の評価、筋力低下の評価が可能である。
 ▶追加の採血やエコー検査もなしで、尿中の物質で筋萎縮の評価が可能である。

発表概要
 尿中タイチンの測定がICU入室患者さんの筋萎縮や筋力低下の評価に有効であることを発見した。

発表内容
 ICU患者では著明な筋萎縮を来す場合があるが、筋萎縮の評価に有用なバイオマーカーは明らかではない。近年、筋萎縮に関連するバイオマーカーとして尿中タイチンが注目されている。タイチンは34000個以上のアミノ酸から構成される筋原線維の構造タンパク質であり、筋崩壊を伴う筋ジストロフィー患者の尿中タイチン濃度は、健常人の100倍にも増加する。本研究では、ICU入室患者の筋萎縮の推移と尿中タイチン濃度について調査した。徳島大学病院および徳島県立中央病院ICUに3日間以上入室が見込まれる成人の非術後患者を対象とした。術後患者は筋肉の侵襲を伴うため除外した。筋萎縮の評価としてICU入室1、3、5、7日目に超音波を用いて大腿直筋の筋断面積を測定した。
 尿中タイチン濃度は、ICU入室1、2、3、5、7日目の24時間畜尿からタイチン測定キット(27900 Titin N- Fragment Assay kit-IBL:免疫生物研究所)を用いて測定した。対象患者は56人、尿中タイチン濃度(正常値:1-3 pmol/mg/dL)は、1、2、3、5、7日目にそれぞれ 27.9 pmol/mg/dL、47.6 pmol/mg/dL、46.6 pmol/mg/dL、38.4 pmol/mg/dL、49.3 pmol/mg/dLといずれも正常上限の10~30倍程度に増加していた。患者によっては筋ジストロフィーと同等な程度の筋肉の崩壊が起こっていることも明らかとなった。この尿中タイチンの増加が大腿直筋断面積の3-7日目の減少と関係していた。横隔膜萎縮とは関係していなかった。一方尿中タイチン量がICU獲得筋力低下やICU死亡率とも関係していることが分かった。


発表雑誌
 雑誌名: Critical Care Medicine
 論文タイトル:Urinary titin is a novel biomarker for muscle atrophy in nonsurgical critically ill patients: a two-center, prospective observational study
 著者:Nobuto Nakanishi , Rie Tsutsumi, Kanako Hara, Takuya Takashima, Emiko Nakataki, Taiga Itagaki, Masafumi Matsuo, Jun Oto, Hiroshi Sakaue
 DOI番号:10.1097/CCM.0000000000004486.
  2020 Jul 16.
 
【問い合わせ先】
 (1) 所属 :徳島大学病院救急集中治療部
 (2) 氏名 :中西 信人 
 (3) 電話番号 :088-633-9347
 (4) メールアドレス :nobuto_nakanishi@yahoo.co.jp

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