近世実測図を活用した古地図GIS解析法を構築しました

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報告者

ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部 平井松午教授

 

研究タイトル

「近世実測図を活用した古地図GIS解析法の構築」

(注)GISはGeographic Information System(地理情報システム)の略で、デジタルマッピングの新たな研究ツール。

 

成果概要

近世における測量術ならびに測量(実測)絵図に関する新たな知見を明らかにするとともに、GIS手法を用いた新たな絵図解析法を開発し、15篇の論攷を収録した学術図書を出版した。

 

学術誌等への掲載状況

平井松午、安里進、渡辺誠編『近世測量絵図のGIS分析-その地域的展開-』古今書院、2014年1月. 295+7+口絵16ページ(執筆者15名)の出版

 

研究グループ

科学研究費補助金・基盤研究(B)研究グループ(研究代表者:平井松午)

 

研究概要

261106_1.jpg平井松午ほか編『近世測量絵図のGIS分析 -その地域的展開-』の第1部第1~7章では、領内で測量事業を広く展開した加賀藩、徳島藩、鳥取藩、熊本藩、それに18世紀中葉に間切針図を完成させた琉球王国を取り上げ、測量技術や測量絵図の特徴について論じた。これまで、地方諸藩の測量術や測量絵図の展開については等閑視されてきたが、今回の科研費による共同調査を通じて、諸藩における測量術(家)の系譜・展開、測量法や絵図仕立てについて具体的に解明でき、近世測量術の全国的な広がりを明らかにできた点で、本申請図書の果たす学術的な役割は大きい。さらに、これら諸藩が作成した国絵図(国図)、郡図、村図について、GISソフトなどの新たな解析ツール用いて現在の地図と重ね合わせ、近世測量絵図の精度についても検証している。

本書第2部第8~15章では、稀覯史料ともいえる測量帳と測量絵図の検証(金沢)、城下絵図の歪みに関するGIS分析(佐賀・鶴岡)、計画都市である城下町の成立と都市プランの関係性(名古屋)、さらにはGIS城下図のデータベース機能を活用した侍居住地分析(鳥取)に関する論攷や、旧版地形図の活用法、GISによる絵図画像の位置補正(幾何補正)に関する論攷も収録されており、時空間分析ツールとして期待されるGISを活用した新たな絵図の解析法や分析法が提示されている。

このように、測量絵図作成に関わる技術史的背景だけでなく、実際に作成された測量絵図・城下絵図についてGISという先駆的な科学的分析手法を用いて検証したことで、関連分野において果たす学術的な役割は極めて大きいといえる。

 
研究者からのコメント

261106_2.jpg研究代表者である平井は、引き続き、平成25~28年度の科学研究費補助金・基盤研究(A)「GISを用いた近世城下絵図の解析と時空間データベースの構築」(研究代表者 平井松午、研究分担者18名、課題番号25244041)に採択されており、今後は近世城下(町)絵図をもとに、研究分担者・研究協力者と共同で全国の城下町のGIS歴史地図を作成するプロジェクトを遂行中である。

 
参考

平成21~24年度科学研究費補助金・基盤研究(B)「近世実測図を活用した古地図GIS解析法の構築」(研究代表者:平井松午、課題番号21320158)

平成25年度科学研究費補助金・研究成果公開促進(学術図書)(研究代表者:平井松午、課題番号:255125)

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