【研究成果報告】免疫補助受容体によるT細胞活性化制御機構の解明

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令和元年度 若手研究者学長表彰 研究成果報告

報告者

徳島大学先端酵素学研究所免疫制御学分野 助教 杉浦 大祐

研究タイトル

免疫補助受容体によるT細胞活性化制御機構の解明

研究経緯等

【研究グループ】
・徳島大学先端酵素学研究所免疫制御学分野 教授 岡崎 拓
・徳島大学先端酵素学研究所免疫制御学分野 准教授 岡崎 一美
・徳島大学先端酵素学研究所免疫制御学分野 助教 杉浦 大祐
・徳島大学先端酵素学研究所免疫制御学分野 特任助教 丸橋 拓海
・徳島大学先端酵素学研究所免疫制御学分野 特任研究員 清水 謙次
・徳島大学先端酵素学研究所発生生物学分野 教授 竹本 龍也

【学術誌等への掲載状況】
1. Sugiura D, Maruhashi T, Okazaki IM, Shimizu K, Maeda TK, Takemoto T, Okazaki T: Restriction of PD-1 function by cis-PD-L1/CD80 interactions is required for optimal T cell responses. Science. 2019 May 10;364(6440):558-566.
2. Maeda TK*, Sugiura D*, Okazaki IM, Maruhashi T, Okazaki T: Atypical motifs in the cytoplasmic region of the inhibitory immune co-receptor LAG-3 inhibit T cell activation. J Biol Chem. 2019 Apr 12;294(15):6017-6026. (*These authors contributed equally to this work.)
3. Mizuno R, Maruhashi T, Sugiura D, Shimizu K, Watada M, Okazaki IM, Okazaki T: PD-1 efficiently inhibits T cell activation even in the presence of co-stimulation through CD27 and GITR. Biochem Biophys Res Commun. 2019 Apr 9;511(3):491-497.
4. Mizuno R*, Sugiura D*, Shimizu K, Maruhashi T, Watada M, Okazaki IM, Okazaki T: PD-1 Primarily Targets TCR Signal in the Inhibition of Functional T Cell Activation. Front Immunol. 2019 Mar 29;10:630. (*These authors contributed equally to this work.)
5. Maruhashi T, Okazaki IM, Sugiura D, Takahashi S, Maeda TK, Shimizu K, Okazaki T: LAG-3 inhibits the activation of CD4+ T cells that recognize stable pMHCII through its conformation-dependent recognition of pMHCII. Nat Immunol. 2018 Dec;19(12):1415-1426.
6. Okazaki T, Okazaki IM, Wang J, Sugiura D, Nakaki F, Yoshida T, Kato Y, Fagarasan S, Muramatsu M, Eto T, Hioki K, Honjo T: PD-1 and LAG-3 inhibitory co-receptors act synergistically to prevent autoimmunity in mice. J Exp Med. 2011 Feb 14;208(2):395-407.

研究概要

 獲得免疫応答において主要な役割を果たすT細胞の活性化は、細胞表面に発現するT細胞受容体による刺激に加えて、様々な興奮性もしくは抑制性の補助受容体を介した刺激によって厳密に制御されている。近年、PD-1およびCTLA-4といった抑制性免疫補助受容体を標的としたがんの免疫療法の成功により、抑制性免疫補助受容体は大きな注目を集めている。抑制性免疫補助受容体PD-1はT細胞の活性化に伴い速やかに発現上昇するI型膜タンパク質で、様々な種類の細胞表面に発現するPD-L1/PD-L2という2つのリガンドに結合することが知られている。リガンドと結合したPD-1はチロシン脱リン酸化酵素SHP-2を介してT細胞の活性化を抑制すると考えられている。一般に、PD-1はT細胞の活性化段階ではなく、がん細胞や自己組織の傷害段階で主に機能すると考えられているが、その機能制御メカニズムは不明であった。
今回我々は、CD28およびCTLA-4のリガンドとして知られるCD80が、抗原提示細胞上でPD-1のリガンドの一つであるPD-L1と隣り合わせに結合(シス結合)すること、CD80がPD-L1にシス結合するとPD-1がPD-L1に結合できなくなること、その結果PD-1による抑制が回避され、T細胞が適切に活性化されることを見出した。また、CD80とPD-L1がシス結合できない遺伝子改変マウスでは、ワクチンに対する免疫応答が減弱し、自己免疫疾患の症状が軽減していた。以上よりT細胞が抗原提示細胞に活性化される段階においては、CD80が興奮性補助受容体CD28を活性化する一方で、PD-L1とシス結合することによりPD-1による抑制シグナルを制限し、強く免疫応答を誘導することができるという巧妙なメカニズムが解明された。

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今後の展望(研究者からのコメント)

 本研究では、PD-1がウイルスや病原菌に対する免疫応答などの有益な免疫応答は抑制せずに、自己免疫疾患につながる免疫応答を選択的に抑制するメカニズムを解明した。シスPD-L1/CD80結合は、今後、新たな自己免疫疾患やがんの治療法開発のターゲットになることが期待される。また、多様な興奮性および抑制性の補助受容体が複雑に相互作用しながら免疫応答を調整しているメカニズムを、様々な実験手法を用いながら明らかにしていきたいと考えている。

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