【研究成果報告】免疫チェックポイント分子LAG-3による免疫抑制機構の解明

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令和元年度 若手研究者学長表彰 研究成果報告

報告者

徳島大学先端酵素学研究所免疫制御学分野 特任助教 丸橋 拓海

研究タイトル

免疫チェックポイント分子LAG-3による免疫抑制機構の解明

研究経緯等

【学術誌等への掲載状況】(2018年以降)
○原著論文
1. Shimizu K, Sugiura D, Okazaki IM, Maruhashi T, Takegami Y, Cheng C, Ozaki S, Okazaki T. PD-1 imposes qualitative control of cellular transcriptomes in response to T cell activation. Mol Cell. 2019. in press.
2. Maeda N*, Maruhashi T*, Sugiura D, Shimizu K, Okazaki IM, Okazaki T. Glucocorticoids potentiate the inhibitory capacity of programmed cell death 1 by up-regulating its expression on T cells. J Biol Chem. 2019 Nov 13. in press. *equal contribution
3. Okamura H, Okazaki IM, Shimizu K, Maruhashi T, Sugiura D, Mizuno R, Okazaki T. PD-1 aborts the activation trajectory of autoreactive CD8+ T cells to prohibit their acquisition of effector functions. J Autoimmun. 2019 Jul 2:102296.
4. Sugiura D, Maruhashi T, Okazaki IM, Shimizu K, Maeda TK, Takemoto T, Okazaki T. Restriction of PD-1 function by cis-PD-L1/CD80 interactions is required for optimal T cell responses. Science. 2019 May 10;364(6440):558-566.
5. Maeda TK, Sugiura D, Okazaki IM, Maruhashi T, Okazaki T. Atypical motifs in the cytoplasmic region of the inhibitory immune co-receptor LAG-3 inhibit T cell activation. J Biol Chem. 2019 Apr 12;294(15):6017-6026.
6. Mizuno R*, Maruhashi T*, Sugiura D, Shimizu K, Watada M, Okazaki IM, Okazaki T. PD-1 efficiently inhibits T cell activation even in the presence of co-stimulation through CD27 and GITR. Biochem Biophys Res Commun. 2019 Apr 9;511(3):491-497. *equal contribution
7. Mizuno R, Sugiura D, Shimizu K, Maruhashi T, Watada M, Okazaki IM, Okazaki T. PD-1 primarily targets TCR signal in the inhibition of functional T cell activation. Front Immunol. 2019 Mar 29;10:630.
8. Maruhashi T, Okazaki IM, Sugiura D, Takahashi S, Maeda TK, Shimizu K, Okazaki T. LAG-3 inhibits the activation of CD4+ T cells that recognize stable pMHCII through its conformation-dependent recognition of pMHCII. Nat Immunol. 2018 Dec;19(12):1415-1426.

◯著書
1. 丸橋拓海、岡崎拓、第3の免疫チェックポイント分子LAG-3によるヘルパーT細胞応答の選択的な抑制機構、医学のあゆみ、2019;270(6,7):567–568
2. 丸橋拓海、岡崎拓、LAG-3によるヘルパーT細胞応答の選択的な抑制機構、 実験医学、2019; 37(6):942–945

研究概要

 免疫システムの司令塔であるT細胞の活性化はT細胞受容体が抗原ペプチド−MHC複合体を認識することによる抗原刺激に加え、正または負のシグナルを伝達する免疫補助受容体によって厳密に制御されている。このバランスが破綻すると、免疫不全や自己免疫疾患などの重篤な疾患につながる。一方で、一部のがん細胞が抑制性免疫補助受容体を利用することでT細胞の活性化を抑制し、免疫系による攻撃を回避していることが明らかとなってきた。実際に、抑制性免疫補助受容体PD-1とCTLA-4を標的としたがん免疫療法、いわゆる免疫チェックポイント阻害療法が複数のがん腫に対して劇的な治療効果を示し得ることが明らかとなり、近年大きな注目を集めている。LAG-3(Lymphocyte Activation Gene-3)はPD-1とCTLA-4に次ぐ第3の免疫チェックポイント分子として注目されているが、その免疫抑制機構はほとんど分かっていなかった。
 そこで我々は、LAG-3のリガンドの探索と免疫抑制機構の解明を試みた。その結果、LAG-3の機能的リガンド分子としてペプチド−MHC class II複合体(pMHCII)を同定し、さらにこの結合がpMHCIIの構造的安定性に依存することを見出した。MHCIIの構造的安定性は提示する抗原ペプチドとの親和性に大きく影響され、LAG-3はMHCIIへの親和性が高いペプチドによって惹起されるヘルパーT細胞応答のみを選択的に抑制することを見出した。また、LAG-3がMHCIIと安定な複合体を形成する自己抗原ペプチドに対するヘルパーT細胞応答を選択的に抑制することで自己免疫疾患の発症を防いでいることを明らかとした。このように、PD-1およびCTLA-4などの抑制性免疫補助受容体とは異なる、非常に特徴的な免疫抑制機構が明らかとなった。

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今後の展望(研究者からのコメント)

 PD-1およびCTLA-4を標的としたがん免疫療法の成功により、免疫補助受容体を標的とした新規治療法の開発が世界中で精力的に進められている。一方で、詳細な分子機能が分かっていない免疫補助受容体さえも臨床応用の標的とされ、基礎研究が置き去りにされているのが現状である。本研究では、すでに臨床応用が進められているにも関わらずほとんどその機能が分かっていなかったLAG-3の免疫抑制機構を明らかにしたものであり、LAG-3を標的としたがん免疫療法および自己免疫疾患の新規治療法の開発を加速させる一助となることが期待される。また、従来、抗原ペプチドの違いを判別できるのはT細胞受容体のみと考えらえて来たが、本研究によって明らかとなったLAG-3による免疫抑制機構は、提示される抗原ペプチドによって多様な構造を持つpMHCIIを構造依存的に認識することでそのpMHCII反応性のヘルパーT細胞を選択的に認識する、つまりLAG-3という多様性を持たない分子が抗原ペプチドの特性を区別し、免疫系の多様性を制御しうるという点で極めて興味深い。
 今後、LAG-3がどのようにしてpMHCIIの構造的違いを見分けているのか、また、LAG-3がどのようなメカニズムでヘルパーT細胞を抑制しているのかを明らかにしていく予定である。

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