【研究成果報告】難治性のすい臓がんに対する効率的な薬物送達システムの開発

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令和元年度 若手研究者学長表彰 研究成果報告

報告者

徳島大学大学院医歯薬学研究部薬学域薬物動態制御学分野 准教授 異島 優

研究タイトル

難治性のすい臓がんに対する効率的な薬物送達システムの開発

研究経緯等

【研究グループ】
・徳島大学大学院医歯薬学研究部薬学域 薬物動態制御学分野 教授 石田 竜弘
・徳島大学大学院医歯薬学研究部薬学域 薬物動態制御学分野 准教授 異島 優
・徳島大学大学院医歯薬学研究部薬学域 薬物動態制御学分野 特任助教 清水 太郎
・徳島大学大学院医歯薬学研究部薬学域 薬物動態制御学分野 特任助教 安藤 英紀
・徳島大学大学院医歯薬学研究部薬学域 製剤分子設計学分野 准教授 奥平 桂一郎

【学術誌等への掲載状況】
1. Ishima Y*, Kinoshita R, Chuang VTG, Nakamura H, Fang J, Watanabe H, Shimizu T, Okuhira K, Ishida T, Maeda H, Otagiri M, Maruyama T. Improved anticancer effects of albumin-bound paclitaxel nanoparticle via augmentation of EPR effect and albumin-protein interactions using S-nitrosated human serum albumin dimer. Biomaterials. 140:162-9. (2017)
2. Ishima Y*. Albumin-Based Nitric Oxide Traffic System for the Treatment of Intractable Cancers. Biol Pharm Bull. 40:128-34. (2017)
3. Ishima Y, Kinoshita R, Ikeda M, Kragh-Hansen U, Fang J, Nakamura H, Chuang VT, Tanaka R, Maeda H, Kodama A, Watanabe H, Maeda H, Otagiri M, Maruyama T. S-Nitrosated human serum albumin dimer as novel nano-EPR enhancer applied to macromolecular anti-tumor drugs such as micelles and liposomes. J Control Release. 217:1-9. (2015)
4. Ishima Y*, Inoue A, Fang J, Kinoshita R, Ikeda M, Watanabe H, Maeda H, Otagiri M, Maruyama T. Poly-S-nitrosated human albumin enhances the antitumor and antimetastasis effect of bevacizumab, partly by inhibiting autophagy via the generation of nitric oxide. Cancer Sci. 106:194-200. (2015)

研究概要

 血流の乏しい臓器であるすい臓への抗がん剤の送達性は極めて悪いことが知られています。そのために、膵臓がんの5年生存率は5%前後と、特に予後不良の高難治性がんに位置付けられており、この問題の臨床現場での必要性は極めて高いという背景があります。そこで我々の研究グループでは、すい臓がん組織への薬の送達性を高める技術の開発に取り組んできました。その結果、ヒト血清中に最も多く存在するタンパク質であるアルブミンを積極的に取り込むというすい臓がん特有の生存手段を利用し、血流を増大させる物質(一酸化窒素)をアルブミンに運ばせること(SNO-HSA Dimerの投与)で、すい臓がん組織へ薬が効率的に届く環境を作り出すことに成功しました。この図は、実際にヒトすい臓がんモデルをマウスにて作成し、膵がんの治療に現在使用されているAbraxaneⓇによる治療効果におけるSNO-HSA Dimer投与の効果を検証しているデータです。この結果より、SNO-HSA Dimerは、AbraxaneⓇによる治療効果を増大させ、副作用を軽減することが明らかになりました。

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今後の展望(研究者からのコメント)

 SNO-HSA Dimerを投与することにより、すい臓がんへの効率的な抗がん剤送達が可能になり、少ない副作用で効率的な治療を達成することができます。今回の研究成果が、難治性がんと位置付けられてきたすい臓がんに対する革新的な治療戦略になるよう、SNO-HSA Dimerの臨床応用を目指し、これらも研究を進めて参ります。

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