最先端研究探訪(とくtalk175号 2019年4月号より)

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ポストLEDフォトニクス研究所新設!
光と医療の融合による新しい試みに高まる期待

髙成 広起

ポストLED 光を使った新しい医療の可能性

平成30年3月、徳島大学内に新たに創設されたポストLEDフォトニクス研究所で、光と医療の融合を目指した研究を行う、それが今回紹介する髙成先生です。 
光ファイバーを使った内視鏡もその例ですが、医療の現場にも光を応用した医療機器がたくさんあります。最近ではガンに蛍光物質を取り込ませ、光を当てるとガン細胞が光って、位置を特定できる 新しい技術も出てきているのだとか。しかし蛍光物質を体に取り込ませて病気を診断するという方法は、体が光に対して過敏になるので「しばらく太陽光線に当たれない」「暗室にこもっていないといけない」など、検査・治療の後に制約が生まれてしまいます。
「ガンの診断は、例えば胃ガンであれば開腹して胃を取った後に、ガンが残っていないことを確認しないといけません。さらにリンパ節転移があると予後が悪いので、リンパ節も取らないといけないのですが、リンパ節にガンがあるかどうかは、病理の先生が組織を見て判断しています。
診断には迅速性が求められるにもかかわらず、大変手間がかかるので、光を当てるだけでどこにガンがあるかが分かれば、病理診断の補助に役立つと期待されています」。

散乱光を読み解き、病理診断するという試み

診断をより簡単にするための機器開発に向けた研究の一環として、髙成先生は一番光を当てやすい皮膚の研究から取りかかっています。
「今、開発しようとしているのは、光をパッと当てた時に発生する微弱な散乱光を分析して、身体の病的な変化を捉える技術です。まずアプローチしやすい皮膚で炎症を検出する技術の開発を目指しています。アトピー性皮膚炎など皮膚の炎症を引き起こす病気は色々ありますが、どれくらい酷い炎症が起きているのかは、目で見て分からない場合があります。光を当てて炎症の程度が診断できれば、医師はより客観的に診断できるようになり、患者さんも納得しやすいと思います。ただ、炎症を特定する散乱光は、ものすごく微弱で、パッと光を当てて目で見えるものじゃない。それをいかに増幅して、感度よく捉えるか。色々な研究を組み合わせながら、医学部と理工学部の連携で社会実装するための研究は既にスタートしています」。

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医学部の研究室配属の学生さんが常三島キャンパスの実験室を訪問して、
理工学部の大学院生の 方々と一緒に共同実験。
既に理工学部と医学部との間で教育・研究の融合がスタートしています。 

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白い紙をあてるとレーザーが出ているのがわかります。

機械いじりが好きな人、大歓迎医療機器の開発を目指して

『ポスト LED フォトニクス研究所』では、国、徳島県、企業と大学が共同で、LEDに続く新しい光源を作り出す研究開発と、光を応用する研究開発が大きなテーマです。その中でも髙成先生の所属する「医光融合研究部門」では、光と医療の融合に向けた本格的な取組が始まります。
「私は昔、心臓に流れる電気を目で見えるようにする実験をやっていて、実際には目で見えないモノを、見えるようにする面白さに強い興味をもって、この道に進みました。
そのため私が行っている研究は、一般的に医学部で行っているものとはかなり毛色が違っていて、どちらかというと理工学部寄り。今の医療や研究を効率よくするための機器開発を目指しています。ですが、生命科学の基礎研究とはまた違った面白さがあり、医学への興味の幅が広がるのではないかと思います。
学生の受け入れに関してはオープンにしているので。医学研究の中にはこういう分野があるということを、学生のみなさんにもぜひ、知っていただきたいです。医学部の中にも機械いじりをしている特異な人間もいるんだよ、と知ってもらえたら(笑)。興味を持ってもらえるなら、大学院生もウエルカムですので、気軽に見学に来てください」。
平成31年度からは医学部と理工学部からの学生配属を受け入れ、若い力も取り入れて研究を活性化していくそうです。
光を医療に応用する取り組みは、近年、かなり進んでいるそう。光技術の研究拠点となる『ポストLED フォトニクス研究所』の開設で、こうした研究に弾みがつき、新しい医療機械の開発もそう遠い未来ではないかもしれません。

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材料はホームセンターで調達し、髙成先生が自作したという装置。
赤や青の光が出ます。

髙成 広起(たかなり ひろき)のプロフィール

髙成 広起
ポストLEDフォトニクス研究所 医光融合研究部門
特任講師

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