令和2年度徳島大学入学式式辞

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令和2年度徳島大学入学式式辞

令和2年4月6日(月曜日)

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「Zero to One」に挑戦を!

徳島大学長 野地澄晴

 新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。徳島大学は皆様を心から歓迎いたします。
 まず、はじめに、新型コロナウィルスの感染拡大を防止するために、このような入学式にしますのは、皆様の健康のためであることをご理解いただきたいと存じます。
 徳島大学は、国立大学として1949年に設置され、2019年に創立70周年を迎えました。現在、徳島大学は、総合科学部、医学部、歯学部、薬学部、理工学部、生物資源産業学部の6学部で構成されています。各学部には、前身の組織があり、その最も古い歴史を含めると創立145年になります。大学院として、医科学教育部、口腔科学教育部、薬科学教育部、栄養生命科学教育部、保健科学教育部、さらに、本年度からスタートする総合科学教育部と先端技術科学教育部が融合した先端科学の大学院である創成科学研究科が設置されています。
 これまでに、徳島大学から、ノーベル物理学賞を受賞した中村修二博士をはじめ、多くの優秀な人材を輩出してきました。皆様にも、世界にチャレンジする優秀な人材になっていただくことを期待しております。
 本日は、私の期待する優秀な人材像について紹介し、歓迎の言葉といたします。
 現在、われわれが使用している様々な物やシステムは、過去に誰かが発明や発見をしたものです。iPhone、コンピュータ、自動車など、日常的に使用しているものであっても、誰かが最初に考え出したものです。誰かが最初に考え出す前には、そのようなものは無かったのです。それを、米国シリコンバレーの有名な起業家であるPeter Thiel氏は「Zero to One」と表現しました。日本は、現在「Zero to One」を実現できなく、長いトンネルの中にいます。出口が見えないのです。特に、最先端の研究の成果は、「Zero to One」でなくてはなりません。
 通常、研究成果は、科学技術関連の学術雑誌において発表し、世界に公表するのですが、各論文はオリジナリティーがあるか?「Zero to One」か?などが審査され、合格したもののみが掲載されます。従って、雑誌に掲載された論文の数は、その国の科学技術の水準をかなり反映します。2020年2月20日の日本経済新聞によると、人口100万人当たりの論文数を国別に比較すると、日本は世界で39位になります。ちなみに、トップはスイス、米国は26位、アジアではシンガポールが8位、韓国が28位です。一方、日本の企業の価値もこの30年間で大きく下がっています。なぜ、この様な現象が日本に生じているのでしょうか?
 原因は主に2つあると思っています。一つ目は、教育の遅れ、2つ目は、大学の疲弊だと思っています。日本は明治時代以来、「西洋に追いつき、追い越せ」を目標として、国の体制、特に教育体制を整備してきました。日本の近代化には、高品質な製品を安価で、大量に製造して輸出することが必要であり、そのためには、ある一定レベルの人財を多く必要としてきました。それは、家電製品や自動車の製造に象徴されています。この方針は成功し、それなりに豊かな国になることができました。しかし、「西洋に追いつき、追い越せ」を目標にしてきたアジアの他の国が、まさに追いついてきたのです。
 この事により、日本のこれまでの方針では世界のトップにはなれなくなっています。その状態が30年継続しているのです。「失われた30年」と呼ばれています。この課題を解決するためには、教育を変えなければなりません。均一な人財ではなく、個性的でユニークな発想ができる人財が必要なのです。しかし、簡単には教育を変えることができずに、現在に至っています。
 2つ目の大学の疲弊は、特に国立大学法人を運営するための国からの資金が減少していることにより、大学が疲弊し、研究がまともにできない状況になっていることです。「Zero to One」の研究成果がなければ、「Zero to One」の企業も誕生しません。
 徳島大学では、このような課題を解決するために、「Zero to One」を生む教育や研究に力を入れ、「Zero to One」の起業、つまり会社の設立も奨励しています。共通教育の中に、「起業を知ろう」という講義がありますので、是非選択してください。
 新入生の皆様には、豊かな自然に囲まれた徳島の地の利を生かした大学生活を楽しんでいただき、素晴らしい人材に育っていただきたいと期待しています。
 本日はおめでとうございます。

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