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令和5年度入学生へのメッセージ(徳島大学長式辞)

令和5年4月6日(木)
会場 アスティとくしま
徳島大学長
河村 保彦

 春爛漫の本日、徳島大学に入学された1394名の学部新入生、587名の大学院入学生の皆さん、入学おめでとうございます。この3年間は、世界で猛威を振るう新型コロナウイルス禍で日々の高校生活はもちろんのこと、大学受験にあっては格別に苦労されたことと思います。また、徳島大学大学院に入学・進学された皆さんは、本来の大学生活から一変し、学修や研究活動で多くの支障がある中、良く頑張られたと心から称えます。本日、こうして皆さんと共に入学式が挙行できますことを寿ぐとともに、このかけがえのない機会をしっかりと噛み締めたく思います。ご来賓ならびに本学教職員とともに、皆さんの入学・進学を心から歓迎しお祝い申し上げます。また、これまで皆さんを支えてこられましたご家族や関係者の皆様にお慶び申し上げます。 


 徳島大学は、昭和24年(1949年)5月に新制大学として発足し、令和元年(2019年)には70周年を祝いました。現在、6学部、6大学院研究科や教養教育院、附属図書館のほか、大学病院と国内唯一の大学産業院、多数の研究所等を有する総合大学です。学部の構成としては、四国地域で唯一、医学、歯学、薬学の医療系3学部を有するとともに、全国的に珍しい医科栄養学科を医学部に擁しています。また、理工学部は学生数、教員数とも中国四国地域で有数の規模を誇ります。さらに、農学系を基盤とした6次産業化人材の育成を目指す生物資源産業学部と、理系5学部を有しています。また、今や文系の範囲を超越し、現代社会の多彩な問題や地域の課題解決に対応できる人材の養成を目指した総合科学部があります。
 

 学部新入生の皆さんは、新型コロナウイルスの影響が緩和されてきた現在、これからの新たな出会いと学び、学生生活への期待で大いに胸が膨らむことでしょう。徳島大学では学生の皆さんが主役です。そして、皆さんが今後我が国と世界に雄飛し、リーダーとして世の中で活躍されるよう、各分野を牽引する優れた教員陣と、皆さんに寄り添い支援して下さる職員、さらに研究の推進や各分野のスキルを身につけていただくための最新設備を用意しています。ぜひ腰を落ち着けて、学びの真髄を味わい尽くしていただきたいと願っております。
 

 さて当地徳島は、かつて阿波藍で一世を風靡し、明治の時代には全国第10位の人口を誇った都市でした。藍の深い青色は、一昨年の東京オリンピック、パラリンピックの公式ロゴマークにも採用された伝統的な色です。深く輝く藍色は世界の人々に「ジャパンブルー」と称され、我が国を代表する色として愛されてきました。併せて、藍は防虫性、耐候性、薬効など多様な有効性で人々の生活に役立ってきました。英語で藍は“INDIGO”といいますが、この藍を利用した染色、いわゆる藍染では、さまざまな物質が混濁・共生する藍甕(あいがめ)に木綿など生地を浸してから外気にさらす工程を繰り返し行うことで、鮮やかな藍色が顕れます。これは、まさに徳島大学が目指す人材育成に例えることができます。すなわち、徳島大学は多様なヒト、モノ、コトが行き交う中で、学内外の人々との交流を繰り返すことで人材が成長し、幅広い能力で社会に貢献することを目指しています。このような思いを込め、私は徳島大学の進むべき途、方向性を象徴的に表す標語として、「徳島大学INDIGO宣言」を創案しました。先ず、アルファベットのIは、Integrity(誠実さ)です。NはNobleとNovelで「高潔さ」と「斬新さ」を示します。DはDynamismとDiversityで、「活力」と「多様性」を意図しています。次のIは、Inclusiveです。これは「寛容」を示します。GとOは、それぞれGlobal(世界へ発信)とOpen(開かれた徳島大学)を意図しています。以上、INDIGOの6つのアルファベットに徳島大学のあるべき姿を象徴するキーワードを当てはめました。皆さんもぜひ阿波徳島を代表する伝統ある藍と、眼前に広がる海の色-ブルーオーシャン-の色でもあるINDIGOとそれに結びつけたこの標語を念頭に置いていただき、かけがえのない大学生活を送っていただければと心からエールを送ります。
 

 次に今後の社会の動向と必要な学びについて触れます。我が国は第二次世界大戦の後、紆余曲折を経て成熟した社会となりました。他方、現代社会は簡単には解決できない課題が山積しています。地球環境の悪化や風水害の頻発、地震、民族間・国家間の対立や格差社会の到来など、多くは地球規模の課題です。日々目の当たりにする報道に心を痛めている方も多いでしょう。新型コロナウイルス禍もこの5月から感染症分類の5類になるとはいえ、目に見えない敵との戦いは続きます。こうした複雑な課題の解答はどこにあるのか、皆さんにも私たちにもその解を求められています。大学入試までは常に正解がありましたが、世の中は正解のない課題で満ち溢れています。この課題への取り組みは、人間ならではのクリエイティブかつチャレンジングな取り組みです。そこで、入学したばかりの新入生の皆さんに次のことをお話しするのはまだ早いのかもしれません。しかし、大学には学部の卒業後さらに大学院があり、そこには修士課程と博士課程があることにあえて触れさせていただきたいと思います。かつて我が国は世界を先導する科学技術と経済の大国でした。しかし、残念ながら現在はそうではありません。世界の先進国の多くの若者が博士号を取得するばかりか、理工系分野への女性の割合も顕著に高くなっています。一方、我が国の動向は世界の趨勢のようには変わってきていません。今やグローバルな企業間の交流には、博士号を有した人々であることが必須です。また、グローバルには理系はもちろんのこと多様な分野で女性の皆さんの活躍や、女性の博士号取得者が大いに活躍しています。とはいえ、学生の皆さんはもちろんのこと、ご家族の皆様も大学院での学びには学費や生活費、修了した後の就職先など多々心配もあると思います。今、大学院博士課程は国を挙げて変わろうとしており、本学独自の支援も含めて手厚い経済的支援が措置されているところです。企業の方々に直接お聴きしたことですが、博士の採用に熱い視線を注ぐところが増えてきています。ぜひこのことを新入生の皆さんも知っていただき、将来設計に役立てていただければ大いに幸いとするところです。
 

 結びとしまして、皆さんは若く力に満ち溢れています。毎日を支えていただいた家族の方々、友人、指導を受けた先生方、皆さんに思いを寄せ支えていただいた多くの皆様への感謝の心を忘れず、大いにチャレンジしましょう。それが世の中を変えていきます。人それぞれに違って良いので、それぞれの皆さんが徳島大学の主役として輝いていただきたいと切に願います。
 

 このたび、皆さんと出会い、ともに切磋琢磨できることを心から喜んでおります。先に述べました「INDIGO」を胸に、志を高く持ち、良く考え、その上でフットワーク軽く行動して下さい。徳島大学は皆さんに寄り添い、全力でサポートします。この大学生活が皆さんの輝かしい人生の礎となることを祈念しまして告辞とします。学部新入生ならびに大学院新入生の皆さん、ご入学、誠におめでとうございます。

 

最終更新日:2023年4月10日

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