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薬学の未来を切り拓く! Ph.D.-Pharmacistプログラム第一号としての挑戦

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蔵本キャンパス
薬学研究科 博士課程1年
小野 美月(おの みつき)さん

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薬学部で新たに始まった「Ph.D.-Pharmacistプログラム(通称:こころざしプログラム)」は、卓越した研究能力(Ph.D.)と高度な臨床・薬学実践力(薬剤師)をあわせ持つ「研究マインドを持った薬剤師」を学部4年次からの早期一貫教育で養成する全国的にも珍しい教育課程です。
このプログラムの第1号として道を切り拓いているのが、小野さんです。有機合成と生物活性評価という、2つの研究分野を同時に手掛ける「二刀流」の研究スタイルを貫き、脳への薬物デリバリーシステムの開発に挑んでいます。「人と違うことに挑戦するのが好き」と語る小野さんに、プログラム選択の理由や、前例のない研究生活の魅力、そして将来のビジョンについて詳しく伺いました。

「とくtalk」2026年夏号掲載/取材2026年4月)

4年生で一度休学し、博士課程へ――「こころざしプログラム」の驚きの仕組み

---まず、小野さんが進学された「Ph.D.-Pharmacistプログラム」について教えてください。
小野さん 正式名称は「Ph.D.-Pharmacistプログラム~こころざしプログラム~」といいます。薬学部の4年生を修了した時点で一度「休学」という形をとり、そのまま大学院の博士課程に進学します。そこで4年間研究に没頭して博士号(Ph.D.)を取得した後、再び薬学部の5年生に復学し、薬剤師国家試験の受験資格を得るための実習や講義を受ける流れです。

※補足「Ph.D.-Pharmacistプログラム~こころざしプログラム~」とは・・・
次世代のリーダーとして薬学研究を牽引できる卓越した人材の育成を目指しています。通常、6年制の薬学科卒業後に4年間の博士課程へ進みますが、このプログラムでは早期に研究能力を洗練させ、博士号取得後に実務実習・国家試験を経て薬剤師資格を取得することが可能です。
詳しくはこちら↓
https://www.tokushima-u.ac.jp/ph/research/Pharmacist/

---なぜこのプログラムに挑戦しようと思われたのでしょうか?
小野さん 
理由は大きく3つあります。まず、学部時代から「有機合成」と「医薬品生物(生物活性評価)」の両方に興味があり、通常の4年間の研究期間だけでは、この2つの研究を深めるには圧倒的に時間が足りないと感じていたことです。2つ目は、経済的な支援が非常に充実していた点です。大学院進学には費用面の不安がありましたが、このプログラムは手厚い支援があり、研究に集中できる環境が整っていました。そして3つ目は、このプログラムの「第1号」になれることです。1学年上の先輩から募集を行っていましたが、志願者がいなかったそうで、「誰もやっていない」、「人と違うことに挑戦するのが好き」な性格なので、「それなら私が第1号としてやってみよう」と決意しました。

 

有機合成×生物活性評価。前例のない「二刀流」研究へのこだわり

---「有機合成」と「生物活性評価」の2つを同時に研究されているとのことですが、これはかなり珍しいことですよね?
小野さん 
はい、かなり珍しいと思います。通常はどちらか一方の分野を極めるのが一般的です。研究室選びの際も、化学か生物かでずっと迷っていました。そんな時、現在所属している研究室の先生から「両方できる人を探している」と声をかけていただき、「それならどちらも諦めずに済むし、自分でやってみたい」と飛び込みました。

---具体的にはどのような研究をされているのですか?
小野さん 
一言で言えば「脳に薬を届ける仕組み(デリバリーシステム)」の開発です。脳には異物の侵入を防ぐ非常に強力なバリア機能(血液脳関門)があり、それが原因で薬が脳まで届きません。私は「クレアチントランスポーター欠損型の脳クレアチン欠乏症」という疾患を対象に、そのバリアを突破できる分子を自ら「合成(有機合成)」し、その分子が本当にバリアを通り、狙った場所に届いているか、マウスなどを使って「検証(生物活性評価)」しています。
---自分で作った薬を、自分で試していると。全く別の研究というわけではなく、一気通貫の研究という感じなんですね。
小野さん そうです。最初は2つの分野を並行して進めるため、時間のやりくりに苦労しましたが、今は「自分で合成した化合物を、そのまま評価系に持っていく」という効率的なパイプラインが確立できています。自分が作った分子が、実際に生物学的な反応を示す瞬間を自分の目で確かめることができるのは、このスタイルならではの醍醐味です。

 

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▲実際に合成している時の様子。

世界の壁に挑んだアメリカでの国際学会

---学部生の時に、国際学会で発表を経験されたと伺いました。
小野さん 
はい、4年生の時にアメリカへ行き、自ら合成し、薬物動態まで評価した一連の研究成果を発表しました。

 

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▲学会会場のミシガン大学。

---海外の研究者との交流はいかがでしたか?
小野さん 
正直、かなり厳しかったです(笑)。専門的な質問で激しく詰められる場面もあり、英語でうまく答えられなかった悔しさが強く残っています。でも、その厳しさを肌で感じたことで、「もっと深く研究を突き詰めていきたい」という強い動機付けになりました。あの経験があったからこそ、今、博士課程で研究に向き合う姿勢がより真剣になったと感じています。

 

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▲ミシガン大学内の博物館に展示されていた、細胞の核のオブジェ。
 

---先ほど、こころざしプログラムのメリットをお話しいただきましたが、デメリットを挙げるならどういう点でしょうか?
小野さん 
実習や講義の時期が同級生とずれてしまうことですかね。友達がいない環境で実習を受けたり、国家試験の準備をしたりすることに不安を感じる人もいるかもしれません。それがこのプログラムの志願者が少なかった一因かも・・・と思います。でも、私にとってはそれ以上に、4年生からぶっ通しで研究を続けられるというメリットの方がはるかに大きかったです。研究者としてのキャリアをスタートさせる上で、この集中できる環境は得がたいものです。将来は研究職に就き、創薬の現場で新しい価値を生み出せる研究者になりたいと思っています。

---このプログラムに挑戦しようか迷っている人にメッセージをお願いします。
小野さん 
「自分にできるかな」と躊躇する前に、「とりあえず一回やってみる」という気持ちが大切だと思います。私自身、2つの研究をすることも、このプログラムに挑戦することも最初は不安でした。でも飛び込んでみれば何とかしようと自分なりに工夫し、道が開けていきました。やる気さえあれば背中を押してくれる制度や先生方がたくさんいます。皆さんもぜひ、自分の好奇心を信じて、面白いと思う道に挑戦してみてください。

 

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▲2つの研究に没頭する小野さん。リフレッシュにゲームやYouTubeを楽しむという、等身大の学生らしい一面も語ってくれました。
「こころざしプログラム」の先駆者として進む一歩一歩は、これからの薬学界を担う新しい薬剤師・研究者のモデルになるかもしれません。

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