「脳科学クラスター」や「脳科学サークル」にも参加 異分野との共同研究も始まり、研究のおもしろさが加速
蔵本キャンパス
大学院薬学研究科 薬学専攻 博士課程1年
岩本 緋天(いわもと ひてん)さん
神経病態解析学研究室に所属し、パーキンソン病のモデルマウスにおける精神疾患治療薬の薬効について研究を行う岩本さん。薬学部では臨床の機会が少ないため、医学部の脳神経系の先生方が集まる『脳科学クラスター』や、徳島大学病院パーキンソン病・ジストニア治療研究センター副センター長である森垣龍馬先生(大学院医歯薬学研究部先端脳機能研究開発分野 特任教授)が主催する『脳科学サークル』に参加し、症例などに関する情報を集めています。最近では、大学院社会産業理工学研究部物質機能化学分野の水口仁志教授との共同研究にも取り組んでいて、異分野の研究室と連携できるのは、徳島大学ならではの魅力だと感じているそう。どのような研究を行っているか、お話を伺いました。
(とくtalk2025年秋号掲載/取材2025年8月)
パーキンソン病のモデルマウスを使った精神疾患の治療薬の薬効を研究
岩本さんが取り組んでいる研究はどういったものでしょうか?
岩本さん パーキンソン病のモデルマウスを作って、そのモデルマウスの運動症状に精神疾患の治療薬が有効かどうかを確かめるといった研究を行っています。
岩本さんが所属する神経病態解析学という名称はなんだか医学部の研究分野みたいですね。
岩本さん そうですね。蔵本キャンパスの脳神経系の先生方などが集まった「脳科学クラスター」というのがあり、そこにも参加させてもらっていますし、「脳科学のサークル」にも所属していて、毎月一回、先生方の症例を聞いたりしています。論文を紹介してもらうこともあり、医学部との関連もあります。過去には研究室の先輩が医学部で研究させてもらったこともあります。共同研究まではいかないんですけど、情報共有や「こういう薬が有効かもしれない」というような情報交換をしています。
神経病態解析学についてはコチラ↓
https://www.tokushima-u.ac.jp/ph/faculty/labo/cmp/index.html
「脳科学サークル」というのもあるんですね。
岩本さん はい。大学院医歯薬学研究部先端脳機能研究開発分野 特任教授で、徳島大学病院パーキンソン病・ジストニア治療研究センター副センター長の森垣龍馬先生が主催されている会です。脳科学サークルでは、パーキンソン病の運動障害を軽減するための治療法として、脳の深部にある特定の部位に電極を埋め込み、電気刺激を与えることで、運動症状を改善するという治療法「脳深部刺激療法(DBS)」というのがあるんですが、症例について話を聞くことが出来ます。僕たちは臨床に触れる機会が少ないので、どういうふうに行ったか、その後、どういう経過をたどっているかといった話を聞くことが出来るのは、貴重な機会です。
何名くらい所属しているんですか?
岩本さん その回によって参加人数は変わるんですが、だいたい20名くらいです。
そういう会への参加もあって、研究は順調に進んでいるんでしょうか?
岩本さん そうですね、今のところは。パーキンソン病の治療では一般的にレボドパという薬(レボドパは脳内でドパミンに変換され、不足しているドパミンを補うことで、手足の震え、体のこわばりといったパーキンソン病の症状の改善に役立つ)が用いられているのですが、それを投与し続けたら手足や体が勝手に動くジスキネジア(不随意運動)が副作用として現れると言われています。実験ではこのジスキネジアのモデルマウスも作成することができるんですけど、精神疾患の治療薬はこれに対しても有効だということが確認できたので、博士課程では他の薬でも試してみているところです。
大学院社会産業理工学研究部 水口先生の研究室との共同研究も進行中
学会へも参加されましたか?
岩本さん 昨年、第63回日本薬学会・日本薬剤師会・日本病院薬剤師会中国四国支部学術大会に参加しました。今年は脳科学クラスターの方で発表できればと思っています。
脳科学クラスターは研究に興味があれば、入れてもらえるものなのでしょうか?
岩本さん 脳神経系に関係するような研究をしていたら入れると思います。今、大学院社会産業理工学研究部物質機能化学分野 教授の水口仁志先生と共同で、脳のドパミンなどをリアルタイムで測定するマイクロダイアリシスを行っています。マウスに装置をつけるのは僕たちが行い、測定を水口先生が担当されているのですが、共同研究を行うようになってから水口先生も脳科学クラスターに参加するようになりました。
動物を使う実験は付きっきりで行うので、かなり時間を拘束されるという話を聞いたことがあります。大変ではないですか?
岩本さん そうですね。40日ぐらいは、土日も大学へ来ていました。その代わり動物実験が終われば、少し休めるというか。次の実験に移るまで生化学的な実験も行いたいなとは思っているので、そっちをぼちぼちしようかなという感じです。
海外の研究者などを招いた講演会やセミナーにも参加
リフレッシュや息抜きは?何か好きなことがありますか?
岩本さん コーヒーが好きなので、自分でコーヒーを淹れて飲んでいます。地元が大阪なんですけど、いつも行っているコーヒー豆屋さんがあって、そこで豆を買って冷凍してあるので、豆を挽いて。朝が弱いので、朝はいつも一杯飲んでから動いています。
研究もですが、在学中に「これはしておきたい」というものはありますか?
岩本さん 国際学会で発表したいですね。留学もしたことがないので、チャンスがあったら経験してみたいなと思います。
留学するならどこへ行ってみたいですか?
岩本さん 神経病態解析学の先生で脳科学クラスターでもお世話になっている笠原二郎准教授がイタリアの先生方と仲が良く、講演などに来てくれたこともあるので、イタリアへ行ってみたいなとは思っています。
脳科学クラスター主催の講演やセミナーなども開催されているんですね。
岩本さん そうですね。直近では2025年6月19日(水)に藤井節郎記念医学センターで脳科学クラスターと希少疾患クラスターが主催する特別講義がありました。講師は株式会社レボルカの代表取締役CEOである浜松典郎氏で「北米での医薬品研究開発の経験と国内バイオスタートアップ経営から見るグローバルビジネス戦略」というテーマで講演が行われました。北米の医薬品研究についてや、日本との違いなどを教えていただいて、面白かったですね。他にもヨーロッパの研究者による動物実験に関する講演などもありました。実験に使用するマウスを極力減らす努力は必要だが、やはり動物実験でないと確認できない安全性もあるという話などは興味深かったです。
そうなんですね。これからも研究がんばってください!ありがとうございました。