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計算で可視化する分子の世界 「量子化学計算実習」

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対象:理工学部理工学科応用化学システムコース 3年生(物理化学分野で実施)
大学院社会産業理工学研究部 物質機能化学分野

吉田 健 (よしだ けん)
(取材 2025年5月)

「応用化学コース 実験1」は、化学分野における実験技術や手法を習得し、応用化学の専門知識を実践的に学ぶことを目的とした授業です。
その中でも特徴的な取組のひとつが、量子化学計算ソフト「Gaussian 16(ガウシアン16)」を用いた実習です。

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授業は情報センター2階の情報処理実習室で実施。「Gaussian 16」を一度に80人が同時に利用できます。「Gaussian 16」は実習だけでなく、研究にも利用できます。

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この実習を指導する吉田先生は、自身の学生時代の経験から「量子力学や量子化学の概念は、教科書や講義だけで理解するのは非常に難しい」と感じていたといいます。そのため、「分子の構造や動きを量子化学計算で可視化しながら学ぶことで、より直感的に理解できるようになる」と、量子化学計算とそれに伴う分子シミュレーション・プログラミングの基礎が身につく、この実習に力を注いでいます。

量子化学計算の実習では、「水の二量体の構造計算」や「遷移状態計算」などに取り組みます。全4回という限られた時間で効率的に進められるよう、事前に予習用動画や約300枚に及ぶスライド資料を提供。また吉田先生の研究室のゼミ生がTAを務め、実習をサポートしています。

こうすることで、多くの学生はプログラミングの経験がほとんどない中、「データサイエンス」でよく使われるPythonも短時間で活用できるようになるのだとか。

さらに実習では「量子化学」「分子シミュレーション」「プログラミング」の3つの観点から報告文の作成も必須。ただ実習を「やって終わり」ではなく、自分の言葉で手順や結果を整理し、考察する過程も重視しています。

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授業のはじめに前回の報告文の講評があり、多かったミスなどを指摘。自分が該当していると思ったら修正して再提出可能で、最終提出したもので評価を決めているという吉田先生。この実習ではプログラムや報告文作成の際にChatGPTなどの生成AIの使用を認めているそう。ただし「実習中は自分の力でやってみること」「使用した場合は申告すること」がルールです。

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吉田先生は「書くことは重要なトレーニング」と、報告書の作成による思考の深化にも期待を寄せています。「量子化学は難しい分野ですが、現代化学の最前線では欠かせないツールです。水の水素結合から反応の活性化状態まで、講義で学んだ現象を計算で〝見える化〞することで、理論と実際をつなげて理解してもらいたい。そしてこの経験は、将来研究や実務に携わる際、必ず役立つはず」といいます。

近年、データサイエンスやマテリアルズインフォマティクス分野の人材需要は急速に高まっています。将来の研究活動に活かせる実践的なスキルの習得はもちろん、未来を担う人材育成の場としても注目の授業です。

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↑分子の吸収スペクトルや活性化状態の3D構造可視化などにより、量子計算科学の幅広い応用例を体験し、理論的背景の理解も深まります。

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