嬉しいことに今年も学外から実践栄養学分野に入学希望者がいる。今年も英語の受験対策を始める。

栄養学科の大学院に進学するためには当然だが入学試験がある。試験内容は、語学試験と面接であるが、実際は英語の試験が重要なウエイトを占める。自分が試験を受けた時代では、微生物学や生理学等の専門基礎問題、公衆栄養学や病態栄養学等の専門試験に加えて英語の試験があった。試験問題を作成するのは学内の教員なのでなるべく学外からの受験生に不利にならないことを勘案して、語学の試験だけになったと聞いている。とはいえ栄養学科の各教室では最低週1回、英語論文を紹介するセミナー(別名 Journal club)が開催されているが、他大学(特に多くの私立大学)では大学院生が少なく、そもそも1人教員制(栄養学科は教授、准教授・講師、助教、事務員といった複数人で一つの教室が構成されている)のためセミナーで英語論文に馴染む機会が少ないと聞いている。そのため、学外からの受験生は大学院受験に関しては内部進学者と比べ差があるのが現実である。

自分の教室に限定すれば内部からの進学者が(他の研究室に比べ)少ない。そのため外部からの大学院入学者を増やすために英語の受験対策(といっても英語論文の読み合わせ)を数年前から始めている。切っ掛けとなったのはKさん。毎年、大学院のオープンが開催されるが、大学院説明の後、希者に対しては各教室の教授から直接話を聞く機会がある。その時は、私の教室にも2名ほどが訪れた。1人は1年後に受験を考えているとのことだった。一方、Kさんは約10日後の試験を受験するとの事だった。「なんでもっと早く言ってくれなかったんだ」と心の中で言葉を発するが、さりげなく「英語の勉強をしていますか」と聞くと、なんとも頼りない答えが返ってきた。「明日から英語の勉強を始めるか」と聞くと、「是非、お願いします」との事だった。次の日から大学院受験日の2日前まで毎日お盆休みを返上して2人で英語の文章の読み合わせが始まった。英語学修に関しては短期間詰め込み式よりは、少しずつでもいいので長い期間学ぶことで成果が上がることは重々承知している。1次試験がだめでも2次試験で合格できる事をイメージして指導をした。結果は(意外にも)合格。1週間弱の勉強で合格させた合格請負人と自画自賛したが、実は本人の実力に大きく依存した結果だったのかもしれない。

希望があれば教室内の4年生に対しても英語論文の読み合わせも随時行っている。全体的なことが分かるので論文のintroductionの箇所を教材として使用することが多い。最初はこちらで論文を用意するが、回を重ねると自分たちで選んでもらっている。大学院入試も近づいたある日、「また(読み合わせを)やるか」とH君に聞いてみた。すると「みんな、色々と予定があるみたいで」と断れた。合格後、「あの時、一生懸命教えてもらえたので合格できた」、「これも先生のおかげです」という言葉はこれまで聞いたことがない。

<令和2年2月25日:酒井>

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