徳島大学大学院医歯薬学研究部遺伝情報医学分野 教授 森野豊之 

 令和3年6月1日付けで徳島大学大学院医歯薬学研究部遺伝情報医学分野の教授を拝命いたしました。私は広島大学医学部を卒業したのち第三内科(現脳神経内科)に入局し、広島大学病院および関連施設にて臨床の研鑽を積んでまいりました。その後、原爆放射線医科学研究所で遺伝学の研究を行い、遺伝性神経疾患をはじめとして麻酔科疾患や歯科疾患の原因遺伝子を解析し、いくつかの新規原因遺伝子を同定してきました。さらに、同定した遺伝子の病因機序を解明するため、CRISPR/Cas9などのゲノム編集技術を応用してモデル動物やモデル細胞を作製し、生化学的および生理学的解析から病態や新たな治療標的を明らかにする研究を行ってきました.また、主に神経変性疾患で孤発例を含む患者集団を用いて遺伝的要因の頻度を調べる疫学的な解析にも携わりました。

 近年、遺伝性難病に対する核酸医薬が次々と実臨床で用いられるようになり、今まででは考えられないほど画期的な治療効果がみられる薬剤も登場してきました。令和元年から本格的に始まったがんゲノム医療も、短期間でかなり洗練され非常に有用な個別化医療を提供できるようになっています。それに伴い、医療の現場においても遺伝カウンセリングをはじめとして、遺伝情報を説明したり適切に扱う必要性が増してきており、ゲノム情報に関するリテラシーが求められる時代になってきました。また、医学研究でも前述したゲノム編集技術のみならず、ゲノム解析技術も飛躍的な進歩を遂げており、遺伝情報とその応用が疾患理解や新規治療法の開発に強力なツールとなっています。私たちの分野でも、神経疾患やがんを中心に幅広い疾患を対象として、基礎的な研究にとどまることなく、治療を視野に入れ臨床に還元できるテーマを心がけて研究を進めていこうと考えています。

 今後も医療・医学の広い領域で遺伝情報のニーズが高まることが予測され、学内外のさまざまな教室との連携を図りながら実用的かつ発展的なリサーチを展開していきたいと思っています。まだまだ未熟者で至らぬ点も多々あろうかと思いますが、何とぞご指導、ご鞭撻賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

閲覧履歴