富山短期大学の竹内弘幸教授が大会長を務める第66回日本栄養改善学会学術集会が富山市で開催された。北陸3県の中でも富山市を訪れるのは初めてなので、どんな街であろうと期待しながら長旅を経て当地に着いた。会場は富山県民会館と富山国際会議場で、いずれも富山駅から徒歩でも10分程度圏内で利便性は良かった。1日目は評議委員会や通常総会等、直接研究とは異なる内容であるが、当日担当する仕事があるので大会前日より富山入りをした。前日入りしたが特にやることもないので、富山市で有名なお好み屋さんを訪ねてみることにした。ネットではかなり人気店だということで、夕飯時刻よりはかなり早い時間に入店した。丸いお好み焼きを折り込み四角形にして長い時間をかけて焼き上げるのが特徴と書いてあった。手慣れた手つきでお好み焼きや焼きそばを仕上げていく光景は珍しく、手元に料理が運ばれてくるまでに45分ほど要したがあまり気にならなかった。

Society 5.0とは、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)(現代はこのレベル)に続く、新たな社会であり第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿で、その社会はビックデータと人工知能技術が基盤として支えている。人工知能により未来の労働構造が大きく変化することが予想されている。臨床検査データや身体データの情報を人工知能に処理させれば、医師がいなくても診断がついたり、適切な薬剤処方が行われる日が来るかもしれない。3年前であるが、東京大学医科学研究所は2016年8月、AIを備えるコンピューターであるIBMの「ワトソン」が、専門家でも診断が難しい特殊な白血病をわずか10分で突き止め、60代の女性患者の命が救われたとの報道があった。JST バイオサイエンスデータベースセンター長、富山国際大学学長の高木利久先生は、「ビックデータと人工知能がもたらすデータ駆動型社会」というタイトルの講演で人工知能の概論から現状についてお話しされた。現状は、これらの組み合わせでどんなことでもできるようになっているわけではなく、人工知能の性能はある程度あるが、問題は膨大かつ標準化したデータをいかに収集するのかがキーポイントであるとおっしゃっていた。電話番号のデータも、ハイフンありとなしとでは異なるし、また医学生物学データは必然的に莫大な情報が必要であり、また研究者が(公的あるいはスポンサーからのお金を使用して得られた)データを公表する仕組みも整備されていないところが問題点として挙げられていた。神奈川県立福祉大学の中村丁次学長は、「私たちは、何を学び、何を実現しようとしているのか?〜管理栄養士、栄養士はAIに勝てますか〜」というタイトルで教育講演をされた。ご講演では、“管理栄養士”は今後仕事がなくなるベスト10にも入っているし、逆にこれからますます必要となる職業のベスト10の両方に入っていることを切り口として、今後の栄養学の未来についてお話をされた。管理栄養士・栄養士はAIに勝てるのか?生活習慣の改善を受けている対象者は、改善案を提案している者の表情を伺う。指導者は対象者の表情も含め指導案に対する受容の程度を計り提案内容を考える。中村先生は、このような人間的なやりとりはAIでは困難との結論であった。“お酒は適量まで、塩辛いものは控えろ、ジャンクフードは食べるな”。確かに機械でなく、(言われたことを守らないと後が怖い)生身の人が言った方が、効果はあるかもしれない。

<令和1年9月10日:酒井>

kaizen2019.jpg

閲覧履歴