寒の戻りの朝冷えの中、朝早くから運動部らしき学生さんが建物の前に群がっていた。今日は、新入生オリエンテーションが開催されるので、それに合わせての勧誘活動だろう。

新入生を対象としたオリエンテーションで挨拶を頼まれている(強制されている)ので、どんな話をすれば相応しいのか事前に考えてみた。自分が入学した学科がどのような経緯で誕生したのか、歴史的背景を含めて知ってもらうことは必要だろう。栄養学科設立に多大な尽力を頂いた黒田喜一郎先生の著書である “蔵本雑記”を読んでみると、その歴史的背景を伺うことができる。(以下、著書を引用)「第2次世界大戦の苦戦と、その結末としての敗戦とにより、食糧事情が逼迫し、栄養失調症が巷にあふれるようになり、栄養学の必要性を感じないものはなかったであろう。ところが、栄養学の研究は主として生化学者、生理学者、衛生学者などが、その専門の一部として片手間にやっているのが一般で、やれ戦争だ、やれ飢饉だという非常事態に直面して、初めて主力を栄養学の研究に向けるのが世の常であった。これというのも、栄養学を研究教育する学部学科が大学教育の中にないからである。」その当時は、栄養学を専門に教育・研究する教育機関がなかったと記されている。また、「戦後、わが国民の低下した栄養を引き上げ、さらに向上させるために栄養指導者が必要となり、栄養士法を立法して、栄養士の社会的役割を明らかにするとともに、栄養士養成機関の設立に力を尽くした。ところが、高等学校卒業後二ヵ年間の教育で、無試験で栄養士の免許を与えられる短期大学が乱立し、学力の低い経験の浅い栄養士が世に氾濫するようになった。そこで、より高い学力とより深い経験を持ち、複雑で困難な栄養指導を行い得る管理栄養士の必要に迫られた。昭和三十七年九月の第四十一国会において栄養士法の一部を改正して管理栄養士の制度を設立させた」と管理栄養士制度ができた経緯も記述されている。管理栄養士を養成する4年生大学を新たに設立する必要があり、その結果誕生したのが、徳島大学医学部栄養学科であると結ぶ。初めてで緊張している感じもあったが、皆真剣に聞いてくれた。新入生にこのような深い歴史的背景があることを知ってもらえると、こちらも準備した甲斐がある。(来年度まで挨拶が回ってくるので、この話を使い回そうか。パワーポイントで作成したので。) 

<平成31年4月4日:酒井>

引用文献:黒田喜一郎 著「蔵本雑記」黒田教授定年退職記念会

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