公衆栄養学の実習が始まった。先日視聴したテレビの健康番組の内容は(一般の人にとって)誤解を与えることが多かった。番組には色々と疑問点があったが、このような健康情報にどんな問題点があるのか、学生さんに考えてもらうのも良い学修方法かもしれない。番組自体は、一般の人が視聴するものなので、面白さ自体は私の(退屈で)下手なパワーポイント資料よりはるかにいいだろう(実際、ブツブツ言いながら最初から最後まで見てしまった)。ある特定の食品に含まれる栄養成分が、基準よりどの程度多いのか○○%で示していた。「それは栄養所要量の考え方ではないですか。」と独り言でツッコミを入れる。栄養学科の学生なら知っているように、現在は「日本人の食事摂取基準 」を用い、個人および集団の栄養状態を評価することになっている。栄養摂取量が○○gであれば充足している確率が○○%くらいと、いわゆる確率論的な考え方に変わりすでに10年近くが過ぎようとしている。ある芸人さんは、忙しくて食べる暇が無く、1日の総摂取カロリーが300 kcal台だった。これが毎日続けば餓死してしまうだろう。たまたまの1日の値を大げさに表現したいのか。ある運動をすると毛細血管の血流がよくなることを示す写真が写し出されたが、運動直後と安静時の違いかもしれないし、そもそも別人の写真を合わせたのかもしれない。標準偏差が示されない平均値のみの値では、信頼性あるエビデンスを示すことは不可能だ。また水分を含んだ食品と高野豆腐などの水分量が少ない食品の栄養成分を、単に重量当たりで比べるのもフェアーではない。ストーリーありきでそれに沿って制作会社が番組を作製したことがうかがえる。大手テレビ局であろうが、大手ゼネコンと同じ構造で、番組制作を下請け、さらに孫請け会社に投げている構図が浮かび上がる。一般の方はそのまま信じてしまう(可能性がある)ので、正しい情報を管理栄養士はどのように伝えることができるのか、知識をしっかり身につけておく必要がある。

今年の「蔵本祭」は天候にも恵まれ例年より多くの地域住民の方にお越し頂いた(様な感じがする)。楽しそうで多くの方の笑顔が見受けられた。タダ酒を何回も飲ませてあげた卒業生のT君も(笑って)顔を見せてくれた。学外実習でお世話になっている保育園を(学生が真面目にやっているか確認するために)訪問すると、小さな男の子が私に向けて手を振ってくれた。番組内容に対して私見を(勝手に)言ったが、このような光景を思い出すと、自分はただ正論を過剰に振りかざしている気もしてきた。真意ではないが周囲の状況で止む無くしているかもしれない。でも一般の方が何の疑いもなく真実と思い実行するのはどうだろうか。

<平成30年10月29日:酒井>

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