ある先生が蔵本祭のパンフレットに寄稿した文章で興味深いものがあった。それは、教授になる時期と結婚する時期におもしろい共通点があるといったものである。最近は晩婚化が進んだと言われているが、自分の時間を楽しみたい、自由でいたい、束縛をされたくないといっていつまでも結婚しないでいると適齢期を過ぎてしまう。准教授や講師の先生は、自分の手で実験を行い、その成果を論文として発表することを最も重要なことと考えて日々を送っている。いずれは教授になりたいのだが、第一線で活躍できる期間ができるだけ長くありたい(スポーツであれば現役バリバリの選手か)。そう思っている先生が多いのではないだろうか。教授になれば、必然的に研究以外の仕事が増え(あえて雑用とはいわない)、自分の手で実験・研究をする時間がなくなってしまうことが一目瞭然だ。しかし、いつまでも准教授・講師でいると教授昇進に適した年齢を逃してしまう。

ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の機能を評価する方法の一つとしてNK活性測定がある。免疫細胞の中に腫瘍細胞を見分けて破壊してくれる細胞がどれだけあるかを調べるものであり、方法はリンパ球と放射性同位元素の一つであるクロム51で標識された腫瘍細胞を混ぜ合わせ、どのくらい細胞培養液中にクロム51が放出するか調べる試験である(腫瘍細胞はクロム51で細胞内がラベルされているので、壊されると細胞外にクロムが放出される)。ある実験でNK活性を計ることになったが、今回は学生さんの都合により私が実験をやるようになった。腫瘍細胞のラベルからスタートするのだが久しく実験をやっていないので、実験に用いる培地をどのくらい放射性同位元素を使用する施設に持ち込まなくてはならないのか、どのくらい放射性同位元素を使用するのか、実際に実験をやっている学生さんに聞いて確認してみる。最近、自分の手で実験をする機会が減っているので(いやほとんどない)細かな数字をすぐには思い出せない。私があまりに細かなことまで聞くので、学生さんが私に対して言った言葉。「先生、手順を書いたプロトコールを渡しましょうか?」。そこまで言われたか。その学生さんにNK活性の測定方法を教えたのは、まぎれもなく私なのだが。もう少し実験をしなくては。

<平成25年12月17日:酒井>

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