「ちくわカレーの話をした先生ですか?」。先日、栄養学科1年生との懇談会で声をかけられた。徳島大学では、徳島県立城東高校の生徒が年1回模擬講義を受ける(体験する)試みがされている。声をかけてきた学生は、2年前、私の公衆栄養学の講義を受けた学生であった。講義の内容は「我が国の食生活と栄養問題の変遷と現状」。教科書には、経済成長期の食生活の特徴として「昭和30年代はじめころから急速に人口の都市への移動が進み、国民の消費生活の変化とともに食生活も多様化した。特に1955年からの米の豊作により米食依存傾向が強まるとともに、動物性食品、油脂の類の摂取量が増加し、逆に麦類、雑穀類、芋類、緑黄色食野菜の摂取量の摂取量が減少した。また各種加工食品(魚肉ソーセージ、インスタント食品など)の普及や諸外国の調理法がさかんに取り込まれた」(栄養科学シリーズ 公衆栄養学第3版 講談社サイエンティフィック)という記述がある。魚肉ソーセージという言葉がでてきたので、魚のすり身をつかったちくわの話題。

カレーは、それぞれの家庭で色々な食材を使用して作られる。学生さんにどんな具材をカレーに入れるのか聞いてみると、牛肉、豚肉、ミンチ肉、シーフードと色々な答えが返ってくる。その家、家で特徴的な味があるのがカレーである。ハンバーグやコロッケもそれぞれの家の味があるが、カレーほど大差はないように思う。小さい頃、実家で食べていたカレーには、ちくわが入っていた。祖母が肉が苦手であったので、ちくわを入れるようになったらしい。小さい頃はそれが普通と思っていたが、大概の家では肉が入っているのが普通であることは後になってから知った。この話をすると学生さんは、たいがい興味深く聞いてくれるので講義のあいまによくする話。以前勤めていた大阪の大学では、この話をした翌週には、「みんなで、ちくわカレーを食べに行こう」と後ろの黒板に書かれていた。雑談ではあるが、関心をもってもらうのはうれしものだ。卒業の時にもらった寄せ書き。ある学生さんのコメントを見てみると“先生の授業はどの先生の授業よりも好きでした。後ろの黒板に「みんなでちくわカレーを食べに行こう」って書いたのはやはり先生ですよね?ありがとうございました。”と書かれていた。

1年生の女子学生さん、ちくわカレーの話を覚えていてくれて、ありがとう。

<平成25年8月8日:酒井>

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