自然が多い長野県の特産品は色々ある。私の実家は長野県だが、今でもちょくちょく実家から荷物が届く。今回の荷物のなかにクルミ(から付き)が入っていた。クルミは、種実類に属し、比較的脂肪分(意外と知られていないが多価不飽和脂肪酸含有量)が多い。からのついたクルミを見る機会は滅多にないだろうと思い、大学の研究室にもっていった。「クルミってどう割ったらいいか分かる?」と学生さんに聞いてみると戸惑った様子を見せた。以前、研究室にくるみ割りをもってきたことを思い出し、まずはくるみ割りを使って割ってみた。学生さんも見るのが初めてなので興味津々、割れると感激の表情を示した(私がそう思うだけであるが)。「くるみ割りを使わなくても使い方によってはスプーンを使っても割れるよ」といってスプーンを用いて割ってみせた。学生さんも興味を持ってくれたのか、楽しみながら何個か割ってくれた。少しは信州の味を味わってもらったようだ。

“クルミはどうすれば割れるのか”講義を始める前の雑談でクルミの話しでもしてみるか。講義を始める前の短い時間、講義と関係ないことを話すことがある。朝一番の講義なので、学生さんを少しでも講義を聴く気にさせるためだ。女子学生と男子学生に一つずつクルミを渡し、「クルミ、知っている。割ることできる?」と声をかけた。から付きのクルミを見るのが初めての学生も多いので2人には視線が寄せられる。たぶん割れないから、後でスプーンで割るところを見せて、朝の眠気をさますというシナリオであった。少しすると、なんと女子学生がクルミを割ったではないか(後で聞くと、私がスプーン割る方法に近い方法で割ったらしい)。依然、男子学生は葛藤している。少しして講義に飽きてきたらクルミでも割ろうかと考え、講義を始めた。5分くらいしてから「メキッ」という音が聞こえてきた。粉々に割れたクルミがあった。机のはじにクルミを押しつけ割ったらしい。この時点で私の当初のシナリオは崩れ去った。

その夜、当の学生と飲みに行く機会があったので、どうして無理にクルミを割ったのか聞いてみた。何度か会話を交わし、話は「少し無理にクルミを割った後のことを考えた方がいいね」という言葉で終わった。酔いも回ってきて、再度クルミの話になると、今度は「先生が割れって言ったから、僕たちは割ったんですよ!」、「先生に従っただけじゃないですか!」、しだいに他の学生も荷担して怒濤の攻撃に遭った。たしかに割れとは言ったが、講義そっちのけで割れとは言ったつもりはないのですが。「過ぎたるは及ばざるごとし」ということわざがありますが。

<平成25年7月23日:酒井>

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