徳島大学・高知大学との共同開催「授業について考えるランチセミナー」<合理的配慮の必要な学生に対する授業実践 が開催されました。

ご参加いただいた皆さま、大変ありがとうございました。

■開催日時
 第1回 2023年4月13日(木)12:05~12:50
 第2回 2023年4月20日(木)12:05~12:50

■参加者
第1回 4月13日
 66名(Zoomによるオンライン)
第2回 4月20日
 60名(Zoomによるオンライン)

■コーディネーター・講師・登壇者
第1回 4月13日
 講師:杉田 郁代(高知大学学び創造センター)
第2回 4月20日
 講師:杉田 郁代(高知大学学び創造センター)
登壇者:南川 慶二(徳島大学教養教育院)
    桐畑 尚真(徳島大学理工学部3年)

■内容
第1回
 最初に、講師より大学教育における「合理的配慮」の趣旨、ならびに「合理的配慮」を必要とする背景である「障害者差別解消法」の成立、加えてそのような「合理的配慮」を必要とする学生の実態について説明がなされた。
 その中でも、今回は精神障害・発達障害を有する学生に向けた支援の方法について紹介が行われた。とくに、コロナ禍での経験(オンライン授業)を活かし、ユニバーサルデザインな視点での授業作りの方法について、以下のような具体的な提案がなされた。

  • 講義内容をLMSで事前(難しければ事後)に配布することで、資料を読み取ること・ノートを取ることが困難な学生に十分な時間を確保し、安心感を与えることができる(教科書・参考書を紹介することも有効)
  • 教員の話を聞きながらノートを取ることが苦手な学生に対して、ノートを取るための時間を少し長めに設ける
  • 携帯電話・ICレコーダー等を用いた録画・録音の許可や教員側によるZoomやTeamsによる授業動画の録画・公開により、繰り返し授業を見ることで学習を深めることができる(プレゼンテーションソフトを使うと有効)
  • 文字を読むことに困難を感じる学生に対して、大きめの文字や、資料で用いる字数を少なくする
  • 授業の流れやどのような学習活動を行うかをあらかじめ提示することで、授業に対する学生の不安を軽減する
  • グループワークに苦手意識のある学生のために、手順や求められることを明確化する等で心理的な負担を軽減する
  • どう評価されるかに対して不安を持つ学生のために、具体的な評価基準と方法をシラバス等に明示する(聞かれた際はその資料を示す)
  • 授業に関する情報を得るための起点を1つに定める(ワンプラットフォーム、とくにLMSを活用する)
  • 教員の連絡先を毎回明示し、質問・問い合わせを歓迎することを示す 

最後に、教員1人で対応するのではなく、カウンセリング等の学生支援担当部署との連携による支援の重要性が講師から示された。

2回
 今回は、前回(4月13日)の内容を踏まえ、精神障害・発達障害を抱える学生に焦点を当てた、ユニバーサルデザインな視点での授業実践事例に関する紹介が行われた。事例として報告されたのは、徳島大学における2021年度の教養教育科目「身近な高分子物質の科学と技術」である。今回は、講義を担当した徳島大学 教養教育院 南川 慶二 先生、当時の受講生である理工学部3年生 桐畑 尚真さんに対する講師のインタビューや、南川先生による授業内容の報告が行われた。
 この授業の特徴として、授業に関する動画を作成しLMSを通じて配信するオンデマンド形式で実施されたこと、その中で「高分子」に興味を持ってもらいながら学習することを目的とした授業であることが南川先生から説明された。そのための授業動画の工夫として、以下のような点が主に挙げられた。

  • 授業動画においては、教科書からの説明のほか、網を用いてゴムの伸縮の例を示すといった工夫がなされていること
  • 学生の質問をきっかけに、学生の高分子に対する興味を引くような説明動画を作成したこと
  • 南川先生自身の経歴や経験について語る「雑談動画」を作成し、学生自身がキャリアや研究について考えるきっかけにしてもらうこと
  • また桐畑さんからは、授業を通じて影響を受けた点として、以下のことが語られた。
  • 授業では質問を行うことが求められるが、質問が動画内で採用され、フィードバックが返ってくることで理解が深まるため、積極的に質問を行うことが促されること
  • 動画を通じて、高分子に興味を持つようになったこと
  • 雑談動画から、自身のキャリアや研究への関心について影響を受けたこと

最後に講師のまとめとして、今回の授業が障害のある学生が学びにアクセスしやすくなっている点として、以下のことが示された。

  • 動画を配信することで、学生が自身のペースで学習ができるということ
  • 動画の中で図やイラストを積極的に活用していることで、教育効果が高まること
  • 講義動画や雑談動画の工夫によって、学生が学修への動機付けを促していること
  • 動画以外にも相談や質問等、講義の理解が深まり、かつ教員との関係を深めるような配慮がなされていること

■成果と課題
 参加者アンケートを行った結果、「5. 本セミナーは今後の教育活動において有益なものであった」という設問において、概ね肯定的な回答 (「とても当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」の合計) を得ることができた。また、他の設問においても回答者の大半から肯定的な回答が得られた。

表 アンケート設問「5. 本セミナーは今後の教育活動において有益なものであった」回答結果

  第1回(4月13日) 第2回(4月20日)
とても当てはまる 21(62%) 17(63%)
どちらかといえば当てはまる 12(35%) 8 (30%)
どちらかといえば当てはまらない 1(3%) 2 (7%)
まったく当てはまらない 0 (0%) 0 (0%)
合計 34 (100%) 27 (100%)

※その他のアンケート項目の結果はグラフを参照。
 

自由記述においては、第1回では大学教育における「合理的配慮」の必要性が分かった、障害を持った学生の状況や困りごとが分かった、障害を持った学生に対する具体的な工夫を知ることができ、これらは支援が必要な学生だけでなく、全ての学生に対して有益であることを知ることができたという回答が寄せられた。第2回では、動画作成の効果について知ることができ自分もやってみたいと思った、受講した学生の意見が聞けてよかったといった意見のほか、動画作成についての技術的な工夫について知りたい、動画を使った授業と障害のある学生に対する支援との関係性をもう少し深掘りして欲しいといった要望もあった。
 今年度からはSPOD全体に対して本セミナーの広報を行った結果、これまでの徳島・高知両県にとどまらず、愛媛県・香川県を含めた四国全体から多くの教員が参加した。そのため、第1回ではこれまでで最も多くの参加者がセミナーを受講する機会となった。また、新たに参加した教員からと思われるアンケートの回答においても、昼休みに気軽に聞けるセミナーという形式についての好意的な意見が寄せられた。今後も教員の幅広いニーズに合致するようなセミナーを実施し、多くの教員の授業実践に役立つ情報を提供していきたい。

■アンケート回答結果
第1回 (n=34)
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第2回 (n=27)
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■セミナーの模様(アーカイブ動画より抜粋)
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ご不明な点などございましたら,下記アドレスもしくは,電話でお問合せください。
教育支援課教育企画係 メール:kykikakuk@tokushima-u.ac.jp 
           電 話:088-656-7679 内線(82)7124

徳島大学全学FD推進事業も紹介していますのでぜひご覧ください!
http://www.tokushima-u.ac.jp/highedu/reform/

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