L-21:線維細胞を標的としたがん及び臓器線維化疾患の治療又は予防

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徳島大学シーズ<L-21>:ライフサイエンス、創薬 sdgs-03
 

線維細胞を標的としたがん及び臓器線維化疾患の治療又は予防
― 抗MX7抗体療法による線維化および腫瘍進展の抑制 ―

西岡 安彦 教授 大学院医歯薬学研究部 医学域 医科学部門 内科系 呼吸器・膠原病内科学
キーワード fibrocyte、がん免疫療法、臓器線維化、抗MX7抗体
研究室URL https://plaza.umin.ac.jp/sannai/
研究の概要

<Fibrocyte標的療法はがん免疫療法や臓器線維化疾患の治療・予防に貢献する>
 線維細胞(fibrocyte)は、損傷した臓器に存在し、マクロファージの炎症特性と線維芽細胞の組織リモデリング特性を併せ持ち、創傷治癒や線維化の促進に関与することが知られている。一方で、がんや臓器線維症との関わりについても研究が進められ、、腫瘍浸潤線維細胞が肺がんの腫瘍進展に寄与すること、線維細胞の移入が肺線維症を亢進すること、線維細胞の集積阻害が肺線維症を抑制すること、マウスモデルにおいて腫瘍内線維細胞の特異的除去が腫瘍進展を抑制することが明らかになってきた。本研究では、線維細胞表面に特異的に発現する新たな分子MX7を同定し、抗MX7抗体を作製した。担癌マウスを用いた実験で抗MX7抗体ががん細胞の増殖を抑制すること、免疫チェックポイント阻害剤との併用で抗腫瘍効果が増強されることを見出した。

<技術課題 fibrocyteマーカータンパク質の同定とfibrocyte標的療法の効果検証>
 線維細胞は、マクロファージと線維芽細胞との中間的な性質を有することから、独立した細胞集団として認識されていなかったが、我々はシングルセルRNAシーケンスよる腫瘍内線維細胞クラスターの同定と機能解析を行い、線維細胞がマクロファージから独立した細胞集団であることを示すことに成功した(図1)。さらに線維細胞マーカータンパク質としてMX7を新たに同定し、特異的に結合する抗体を作製することでMX7が線維細胞の表面に発現する特異的なタンパク質であること、MX7発現細胞を除去または増加を抑制することにより腫瘍組織内の線維化及び腫瘍進展を抑制することができることを見出した。


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図1 腫瘍内における線維細胞クラスターの同定とPD-L1阻害による抗腫瘍免疫における役割の解明


 腫瘍浸潤CD45+細胞のシングルセルRNAシーケンス解析により、in vivoおよび肺腺癌患者において「線維細胞クラスター」が「マクロファージクラスター」とは独立した集団として同定された。線維細胞はPD-1/PD-L1阻害療法への応答を制御する重要な調節因子である。

想定される用途と製品化・事業化イメージ

<肺がんや悪性胸膜中皮腫などに対する免疫チェックポイント阻害薬との併用療法>
 マウス腫瘍皮下移植モデルを用い、抗MX7抗体が腫瘍内コラーゲン量の増加を著明に抑制するとともに腫瘍内への免疫細胞浸潤を増加させた。抗MX7抗体単独で腫瘍細胞増殖を抑制する(図2)とともに、PD-L1抗体との併用で抗腫瘍効果が増強された(図3)。既にヒト抗MX7抗体作製に成功しており、線維細胞標的療法を単独または免疫療法と併用することで肺線維症などの臓器線維化疾患や肺がんなどの治療に貢献したい。

L-21-2.png 図2 マウス腫瘍皮下移植モデルにおける抗MX7抗体の治療効果(未発表データ)

 マウス中皮腫細胞AB1-HA株皮下移植モデル(1×106細胞/マウス)にて抗MX7抗体投与による治療効果を確認した。*p<0.05
 
L-21-3.png 図3 マウス腫瘍皮下移植モデルにおける抗MX7抗体と抗PD-L1抗体による併用効果(未発表データ)

 マウス中皮腫細胞AB1-HA株皮下移植モデル(1×106細胞/マウス)にて抗MX7抗体投与による治療効果を確認した。**p<0.01、***p<0.001
特許 ● 特願2025-114466 「がん及び臓器線維化疾患の治療又は予防剤」
論文 ● Mitsuhashi A, Goto H, Saijo A, Trung VT, Aono Y, Ogino H, Kuramoto T, Tabata S, Uehara H, Izumi K, Yoshida M, Kobayashi H, Takahashi H, Gotoh M, Kakiuchi S, Hanibuchi M, Yano S, Yokomise, H. Sakiyama S, Nishioka Y. Fibrocyte-like cells mediate acquired resistance to anti-angiogenic therapy with bevacizumab Nat Commun 6:8792, 2015. doi: 10.1038/ncomms9792
● Mitsuhashi A, Koyama K, Ogino H, Afroj T, Nguyen NT, Yoneda H, Otsuka K, Sugimoto M, Kondoh O, Nokihara H, Hanibuchi M, Takizawa H, Shinohara T, Nishioka Y. Identification of fibrocyte cluster in tumors reveals the role in antitumor immunity by PD-L1 blockade. Cell Rep 42(3):112162, 2023. doi.org/10.1016/j.celrep.2023.112162
● Mitsuhashi A, Nishioka Y. Fibrocytes in tumor microenvironment: Identification of their fraction and novel therapeutic strategy. Cancer Sci. 116(1):21, 2025. doi: 10.1111/cas.16385

最終更新日:2026年10月1日

 

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