RNA干渉(RNAi)の発見により、RNAの機能解析などRNAに関する研究が注目されています。このことは、任意の配列・鎖長のRNAを自在にかつ、簡便に合成できる基盤技術向上の必要性を意味しています。RNAの化学合成は、ホスホロアミダイト法の開発によりDNA/RNA合成機を用いることで比較的容易に行うことが出来ます。しかし、DNA合成とは異なり、RNA 合成は、1) 用いるホスホロアミダイトユニットの 2′ 位水酸基の保護基の立体障害のため縮合時間が長く、また縮合収率が低いこと、2) オリゴマー合成後に 2′ 位水酸基の保護基の除去操作を必要とするために精製法が煩雑であること、3) 脱保護後の 2′ 位水酸基の寄与により、RNA 鎖の切断や異性化が起こりやすいこと、などの問題があり、化学合成とそれに続く精製操作の難易度は DNA に比べると遥かに高くなります。これら問題点のうち一つ目に関しては、様々な新しい2`位水酸基の保護基が開発され縮合効率の向上が報告されています。しかし、精製過程の煩雑さを解決するような研究はほとんどされていません。
そこで私たちはRNAの精製過程を簡略化するために、ビオチン化光解離性保護基を2'位水酸基へと導入したウリジンユニットを用いることによる`キャッチ&リリース'法を開発しました。この方法は、まずRNAオリゴマー5'末端へとこのウリジンユニットを導入し、樹脂からの切り出しと2'位水酸基の保護基の脱保護を行います。続いて、ビオチン‐アビジン相互作用を利用して目的とするRNA鎖のみを選択的に`キャッチ'し、最後に光により`リリース'を行うことで高純度RNAを簡便に得ることに成功しています。
現在、さらに効率的な方法の開発をめざし、Staudinger ligationを利用した`キャッチ'を鍵とする方法の開発に取り組んでいます。

研究内容の図解

閲覧履歴 このページと関連性の高いページ