令和8年度全国発明表彰「未来創造発明賞」を受賞して
公立学校共済組合四国中央病院 病院長
元 徳島大学大学院医歯薬学研究部 地域総合医療学 特任教授 岡 久 稔也
徳島大学キャンパスライフ健康支援センター 教授 曽我部 正弘
このたび、未来創造発明賞を医工連携チームの5 名が受賞いたしました。本賞は、科学技術的進歩性に優れ、今後大きな実施効果を挙げると期待される大学や中小企業などによる優秀な発明を対象とした第2 表彰区分において、第一席に位置付けられる賞であり、大変光栄に思っております。
本発明は、進行癌や肝硬変によって生じる難治性胸腹水に対する腹水濾過濃縮再静注法(CART)に用いる装置の自動化技術です。ろ過器の自動膜洗浄技術と濃縮圧の制御技術を開発し、多量の癌性胸腹水を安全かつ効率的に全量処理できるようになりました。
今回の開発では、医療機器の承認取得や製品化はゼロからの挑戦でした。しかし、経済産業省、AMED、文部科学省、NEDO のご支援のもと、医療機器センターをはじめとする有識者の皆様の伴走コンサルによって、実用化への道を切り拓くことができました。
大学、病院、企業が医工連携・多職種連携のコンソーシアムを構築し、留学先の米国ベイラー医科大学人工臓器開発センター 故 能勢之彦先生から学んだ「世の中の役に立つ医療機器をチームで現場に届ける」という理念と、株式会社タカトリ
の「創造と開拓」という物づくりの心を胸に、研究者、医療スタッフ、企業技術者、学生が一つの部屋で研究開発する集中研方式を実践しました。多様性のある集合知を活用したことが本発明の原動力となり、5 年でクラス3 の医療機器を上市することができました。
今回の受賞は、多くの皆様のご協力とご支援によるものです。心より御礼申し上げます。今後も、より安全で質の高いCARTの実現に努めるとともに、医工連携・多職種連携による新たな医療技術の創出と普及に貢献してまいります。

令和8年度全国発明表彰「発明賞」を受賞して
泌尿器科 講師 佐々木 雄太郎
このたび、令和8 年度全国発明表彰 第1 表彰区分「発明賞」を受賞する栄誉を賜りました。全国発明表彰の第1 表彰区分は、科学技術的に非常に優れた進歩性を持ち、かつ産業の発展や経済効果において顕著な成果を上げている高度な発明・意匠などを対象とする表彰部門です。日頃より多大なるご支援をいただいている徳島大学の皆様に心より感謝申し上げます。
今回評価していただいたのは、私たちが開発したロボット支援手術における新規デバイス「ヴァスガイド」の意匠です。近年普及が進むロボット支援手術は、精密な操作が可能である反面、「術者に直接的な触覚が伝わらない」「特定の操作に高度な技術と時間を要する」といった課題がありました。泌尿器科医として日々手術に向き合う中で痛感した、「手術をより安全で簡便にできないか」という臨床現場のリアルな気づきが、この発明の出発点です。
そのアイデアを形にする「医工連携」の道のりは、決して平坦ではありません。医療現場のニーズを工学的な設計に落とし込み、製品化するまでには数々の試行錯誤という大変さがありました。一方で、異なる分野の専門家と議論を重ね、自分のアイデアが実際に触れられる形となって課題を解決していく過程には、何物にも代えがたい面白さがあります。さらに、本デバイスの知的財産を徳島大学が保有することで、大学の知を適切に守りつつ広く社会へ還元するという、理想的な知財運用も実現できました。社会実装も進み、現在、本デバイスは全国100以上の施設に導入され実際の手術で活用されています。
医学部で学ぶ学生の皆様にお伝えしたいのは、日々の臨床実習や講義で感じる「なぜだろう」「もっと良くならないか」という素朴な疑問を大切にしてほしいということです。未来の医療を変えるイノベーションは、現場の小さな気づきの積み重ねから生まれます。患者さんを救う新しい技術は、皆さんの情熱とアイデア次第で自ら創り出すことができるのです。
保護者の皆様におかれましては、学生が自由な発想で新しい医療の形に挑戦し成長できる本学の環境を、ご支援いただけますと幸いです。私自身も、徳島から世界へ新しい医療技術を発信できるよう、教育と研究に一層精進してまいります。


