トップ特集次世代ひかりトクシマの中核機関 “キラリと光る徳島大学” を目指して

“新しい光の創出と応用”を
キーワードに
地方創生を担う徳島大学 

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「次世代ひかりトクシマ」において、徳島大学が取り組む事業を、徳島大学副学長(外部資金担当)兼地方大学・地域産業創生事業部長を務める木村賢二氏に語っていただきました。

1.地方が元気になるイノベーションを創出

"三密厳禁!"
意図する、しないにかかわらず、大都会にヒト、モノ、カネを集中させ、得られた利益を地方に再配分してきた我々の成長スタイルは大きな疑問が突きつけられました。
自由度が低い働き方が少子化を生み、大都市圏を中心とした様々な経済活動は、層が薄くなりつつある若者を中心に働き手を吸い寄せ、これらが相まって、人も水も空気も食糧も都会に供給している我が国の大事な地方の活力を奪ってきたと、私は考えています。いわゆる、”コロナショック”は大変不幸なことではありますが、今こそ、コロナショックを契機に、"地方が元気になる"新たな価値創造、"イノベーション"を創出することが、我が国が抱える課題解決の一助になると考えます。

2.国における検討

コロナショック以前のことではありますが、国においては有識者会議により、東京への若者の転入超過は是正すべきとの議論がなされていました。
若者の転入超過の主な原因については、地方の国立大学の課題の視点から、「総花主義」、「平均点主義」のため特色が見えないこと、産業構造の変化や地域のニーズに応じた人材育成・研究成果の創出が十分でないなどの指摘がなされています。その上で、地方創生に資する地方国立大学の改革の方向性として、①「特色」を明確化させる大学改革・再編、②地方のニーズに応じた学部・学科等の再編・充実にスピード感を持って取り組むガバナンスの強化、③首長のリーダーシップの下、地方での役割・位置づけの明確化と産官学連携の強力な推進、④地域の生涯学習・リカレント教育への貢献等が取りまとめられています。これを受け、国においては、「地方大学・地域産業創生交付金事業(以下、「地方大学交付金事業」という。)」を開始することとしたところです。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/about/daigaku_kouhukin/
https://www.tokushima-u.ac.jp/hikari/about/

 ※地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議(平成29年2-12月)

創造的超高齢社会このような議論を踏まえ、徳島大学においては、自治体、企業等多様な方々による徳島の未来を考えるフューチャーセッションを開催、”創造的超高齢社会”を目指すことを提案のコンセプトとすることを決定しました。そして、このコンセプトに基づき徳島県は、「次世代“光”創出・応用による産業振興・若者雇用創出計画(光科学を学ぶなら徳島!光産業を仕事にするなら徳島!と“光”を目指して若者が集う徳島の実現;次世代ひかりトクシマ)」を策定、地方大学交付金事業において、採択に至った次第です。
徳島大学はその中で、最先端のフォトニクス研究、人材育成、社会貢献を担う中核機関として位置づけを担うこととなり、国及び徳島県から令和4年度までの5年間地方大学・地域産業創生交付金の支援を得て、“キラリと光る徳島大学”実現に向けた取組を行っています。

3.“キラリと光る徳島大学”の概要

徳島大学は、これまで、光源材料として重要な窒化物半導体に関係する材料物性の分野で優れた研究を進めており、医/歯/薬/栄養/保健学領域等フォトニクス研究の応用展開が想定される部門を有すとともに、研究領域を越えた融合研究が盛んです。また、国立大学として初めて「光」を学科名に冠した「光応用工学科」を設立するなど伝統的にフォトニクスに係る教育研究領域を強みとして打ち出してきました。加えて、徳島県内には、世界有数のLEDメーカーが立地、150社を越えるLED関連企業も集積しており、これら企業は照明器具のLED化等に大きく貢献しています。しかし、可視光のLED製品の国内需要は飽和に近づき、安価な労働力による諸外国での LED生産が進みつつあることから、今後は、深紫外光や赤外光等の未開拓の光を活用した新市場の開拓が急務であり、そのための社会実装を目指す研究開発が求められています。

このような状況を踏まえ、地方大学交付金事業において、徳島大学は、これまでのフォトニクス研究の強みを更に強化する取組として「ポストLEDフォトニクス研究所(以下、「pLED」という。)」を設立し、進めることとしました。pLEDでは、創造的超高齢社会を目指し、非侵襲・低侵襲な医療の実現や水銀灯に変わる殺菌技術の確立、Beyond 5Gの次世代超高速無線通信の実現等最先端の研究開発を行っています。

研究の最新の取り組みは次のサイトにてご紹介しています。
https://www.pled.tokushima-u.ac.jp/

また、徳島大学全体の取組としては、人材育成を一層進めることを目的に、幅広い素養を持つ専門人材の育成のための分野横断的な大学院「創成科学研究科」の修士課程を令和2年度に設置し、令和4年度には博士課程の設置に向けて準備中です。学部の授業については、“教えたいことを教える”に陥らないよう、産業界ニーズに応じて、“学ぶべきことを学ぶ”カリキュラムを明確に打ち出すことを進めています。リカレント教育においては、「人と地域共創センター」において、リカレント教育の体系化を図るとともに、県下のものづくり企業へのアンケート調査を踏まえ、「光殺菌」に係る新製品開発の核となる素養を身につけることを目的とした「紫外線LED活用入門講座」を開講するなどニーズに基づく実践的な取組を進めています。 国際連携においては、双方向インターンシップや留学生の県内企業への就職サポートや国際共同研究の強化を図る検討を進めています。広報活動については、研究成果の企業向けの展示会や講演会、中高生向けのサイエンスカフェ等の理解増進のイベントを開催しています。さらに、地域の皆さん一人一人が地域の将来を自身のこととして考え協働する意識を涵養するとともに、デザイン思考を学ぶイノベーションワークショップ等を開催しています。

徳島大学では、これら取組を体系立てて行うことで、創造的超高齢社会へ向けた地域創生に貢献していきたいと考えています。

 

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木村 賢二 徳島大学副学長(兼) 地方大学・地域産業創生事業部長
1991年科学技術庁入庁。文部科学省、経済産業省などを経て、2013年国立研究開発法人物質・材料研究開発機構総務部門長、2016年国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構新事業促進部参事、2018年内閣官房内閣参事官。2020年4月から現職。