【プレスリリース】口腔がん発生の初期に「遺伝子異常の組み合わせ」が免疫を呼び起こす仕組みを解明

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    大学院医歯薬学研究部歯学域口腔科学部門口腔生命科学分野の工藤保誠教授、毛利安宏准教授らの研究グループは、口腔がんで高頻度に認められるTP53※1とCDKN2A※2の遺伝子異常が、発がん初期の免疫環境を変化させる仕組みを明らかにしました。
    研究グループは、ヒト頭頸部がんのCDKN2A遺伝子変異を再現したマウスとTrp53機能欠失マウスを作製し、発がん物質4NQO※3で誘導される口腔発がん過程を解析しました。その結果、Trp53の片方アリル※4の機能が失われ、Cdkn2aの片方アリルに変異がある状態では、p53–RBシグナルのバランスが崩れ、cGAS–STING経路※5が活性化しました。これに伴い、免疫反応を活性化する情報伝達物質である炎症性サイトカインやケモカインが増加し、細胞傷害性T細胞やNK細胞を含む免疫細胞が口腔上皮へ集積しました。さらに、STING※6阻害薬を投与すると関連遺伝子の発現とT細胞浸潤が低下したことから、この免疫応答にSTINGが機能的に関与することが確認されました。また、この遺伝子型のマウスでは浸潤がんへの進展が相対的に遅れる傾向がみられました。ヒト頭頸部がん症例の遺伝子発現データを解析したところ、TP53とCDKN2Aの遺伝子異常の組み合わせにより全生存期間が有意に層別化されました。
    本成果は、がん抑制遺伝子の異常が単純にがんを促進するだけでなく、その組み合わせ(機能変化のパターン)によっては、発がん初期に抗腫瘍免疫を誘導し得ることを示したものです。本研究成果は、2026年8月15日に、学術誌「Oncogene」のオンライン版に掲載されました。
    詳細は、以下のPDFからご覧ください。
【徳島大学】口腔がん発生の初期に「遺伝子異常の組み合わせ」が免疫を呼び起こす仕組みを解明 (PDF 348KB)   

口腔がん発生初期に「遺伝子異常の組み合わせ」が抗免疫免疫を呼び起こす仕組みの説明図
 

【論文情報】
 
論文名 Imbalanced p53–RB signaling triggers cGAS–STING–mediated immune activation in early oral cancer development
和訳 p53–RBシグナルの不均衡は、口腔がん発生初期にcGAS–STINGを介した免疫活性化を誘導する
著者 Zichao Lu, Yasuhiro Mouri, Wenhua Shao, Akihiro Yasue, Chunhua Wang, Hiroko Hagita, Kiyotake Yamamoto, Naoko Matsumoto, Minoru Matsumoto, Takeshi Oya, Yasusei Kudo.
掲載誌 Oncogene 8月15日 オンライン版掲載 (Online ahead of print)
DOI 10.1038/s41388-026-03962-y
受理日 2026年8月7日
研究機関 徳島大学大学院医歯薬学研究部、
徳島大学フォトニクス健康フロンティア研究院 ほか

【用語解説】

※1)TP53/p53
DNA損傷などの異常を検知し、細胞周期の停止、修復、細胞死を誘導する代表的ながん抑制遺伝子(TP53)/タンパク質(p53)。ヒト遺伝子はTP53、マウス遺伝子はTrp53。
※2)CDKN2A
p16INK4Aとp14ARF(マウスではp19Arf)という2種類のがん抑制タンパク質をコードし、RB経路とp53経路を調節する遺伝子。ヒト遺伝子はCDKN2A、マウス遺伝子はCdkn2a。
※3)4NQO
4-nitroquinoline-1-oxide。喫煙関連のヒト口腔がんに似た遺伝子変化を誘導するため、口腔発がんモデルに用いられる化学物質。
※4)片方アリル
人間の体細胞は、父親から1つ、母親から1つ、同じ遺伝子を2つペアで持っている。このペアの片方の遺伝子変化や状態に注目するときに「片方のアリル」という表現が使われる。
※5)cGAS–STING経路
本来あるはずのない細胞質内の異常なDNAを察知し、I型インターフェロンや炎症性サイトカインの産生を誘導する自然免疫系の経路。
※6)STING(Stimulator of Interferon Genes)
細胞質に異常なDNAがあることをcGASから伝えられると、下流のシグナルを活性化し、インターフェロンなどの免疫応答を引き起こすタンパク質。

 

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