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【T-PEAKS 第2号】松木研究担当理事インタビュー
研究大学として高みを目指す徳島大学の活動や研究者の情報を発信する「T-PEAKS」第2号は徳島大学の松木 均理事(研究担当)・副学長に、研究支援・産官学連携センター所属でURA(University Research Administrator)の井貫恵利子准教授がお話を聞きました。
徳島大学は、文部科学省の令和6年度「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS:Program for Forming Japan’s Peak Research Universities)」に採択されました。徳島大学は、4つのイニシアティブ「光工学」「医学(慢性炎症研究)」「栄養学」「情報科学」の知の融合を源泉とし、創造的超高齢社会の実現に資するイノベーションを生み出し続ける研究大学へ発展するというビジョンをかかげています。ビジョン実現に向けた研究拠点として「フォトニクス健康フロンティア研究院(Institute of Photonics and Human Health Frontier:IPHF)」を設置し、本務・兼務合わせて現在20名の先生が所属して、研究力のピーク値の向上、研究活動の国際化、若手研究者育成を強力に推進しています。
■ J-PEAKS・IPFHのステータス

井貫准教授(以下、井貫):研究担当理事でIPHFのCEO(Chief Executive Officer:最高経営責任者)でもある松木副学長は、J-PEAKSの実質的なトップでいらっしゃいます。J-PEAKSに採択されて1年近く経ちますが、まず、この1年間注力されてきたところをお聞かせ下さい。
松木理事(以下、松木):昨年5月に立ち上がったIPHFはJ-PEAKSの核となる「研究特区」です。このような「研究特区」は徳島大学では初の試みであり、研究特区を設置して4つの強みである「光工学」「医学(慢性炎症研究)」「栄養学」「情報科学」を中心に発展させるということが評価されて、J-PEAKSに採択されたという経緯があります。IPHF設置の目的はもちろん研究成果を上げることですが、それとともに基礎研究、異分野融合、産学連携、スタートアップ、そこから出てくる人材育成、地域連携を一体的に推進し、強みのある大学にグレードアップしていく、それが一番大きな目的です。
初年度、IPHFは学内外から様々な人材を集め、ようやく1年経って組織が出来上がってきました。次年度以降は、ぜひ参画された方々が分野の壁を越えて、新しい研究テーマ、あるいは新しい研究のスタイルを生み出す拠点として、IPHFを利用していただきたいと考えています。
井貫:J-PEAKS採択前もしくは採択後の課題はありますか。

松木:徳島大学は、前年度のJ-PEAKSに申請した際には不採択となりましたが、令和6年度の再チャレンジで採択されました。採択に向けて内容を吟味し、ブラッシュアップして作り上げていきましたが、その過程で、テクニオン-イスラエル工科大学との連携を強めていたため、イスラエルの情勢にはかなり不安を感じていました。しかし、石破茂前首相の時代に、状況に少し改善し始めたのを見て、安心したことを覚えています。
井貫:情報分野はテクニオンのお力添えが不可欠というところがありましたし、海外連携の難しさかと思います。
松木:そうですね。「情報科学」は今や絶対に外せない時代ですが、人材を確保するのは難しい。そういう意味でテクニオンと連携できたのは非常に大きなことだと思っています。
井貫:テクニオンは情報関係で欧州のトップクラスです。
松木:テクニオンと徳島大学の研究をぜひ融合させてスパイラル・アップしていきたいと考えています。

井貫:ホームページで使われている絵には、今まである「光工学」「医学(慢性炎症研究)」「栄養学」が「情報科学」の力を使って、より発展していく未来への期待がよく表されていると思います。
松木:徳島大学のJ-PEAKSの目指す目標、というか、それを創造的超高齢社会の実現につなげることをうまく捉えていると思います。4つの領域が単に横に並ぶのではなく、情報が3つの領域のアイデアを取りもつ形で、スパイラル・アップしながらどんどん伸びていく図になっているところが良いと思います。
■ 令和8年度に注力すること
井貫:次年度から本格始動ということですが、この1年、後回しになっており次年度から巻き直したいと思っていらっしゃることはありますか?
松木:色々ありますが、まずは意識づけですね。昨年12月に実施したJ-PEAKSの認知度アンケートではJ-PEAKSを認知している方の割合が3割ぐらいでした。回答率そのものが低いので、実態は2割ぐらいかもしれません。ですから、まずはJ-PEAKSの取り組みをやっているということを全学レベルでもっと広めていく必要があります。一部の人だけのものというネガティブなイメージが先行していることも理解していますので、「皆さんに色んなことが還元されます、共有されます」ということを伝えていきたい。例えば共用機器に関しては、蔵本地区も常三島地区も良い機器が多く入りますので、J-PEAKS関係者に関わらず、皆さんに使ってもらえればと思います。様々な場でJ-PEAKS事業によるメリットを説明して、「J-PEAKS事業に参加することによって大学の研究力が上がれば好循環につながる」と理解いただくためのPR活動は、次年度やらなければいけないことの一つです。
それからJ-PEAKSの中から次の新たな強みを見つける、新しい若い研究者の育成、この2つは、ぜひやりたいと思っています。今の4つを強めるのはもちろんですが、大学としては、新しい強みを生み出すことをやっていくことも肝要です。そのためには研究の裾野を広げていかないといけないので、例えば、研究クラスター制度の見直しや引当資産を各部局に配布するなど、研究者が研究しやすい環境整備により、新たな強みが出てきてほしいと考えています。4つの強みの連携により新しい強みが生まれることも期待していますが、それ以外の部分にも期待しています。
それから次の時代を担う若手の育成です。1月に「次世代研究者育成推進センター(Rising Researcher Academy:RRA)」が始動できたのは、非常にタイムリーでした。次の世代を育てないと今の状態を継続できないし、新たなこともできないので、IPHFと組み合わせながらRRAの支援には、ぜひ力を入れて取り組みたいと思います。
井貫:J-PEAKSが一部に閉じたものではないということですね。
松木:みんなでやっているという意識づけをやっていきたいと思っています。
井貫:若い先生方が新しい連携テーマを生み研究クラスターに応募されているのは素晴らしいですね。
松木:色々と期待するところはあります。若い方が中心になって融合研究をしっかりやられているところに目を向けて、大学として拾い上げていくことは非常に重要だといつも思っています。
■ IPHFには横連携による新たな融合研究を期待
井貫:IPHFでの成果には大学内外から非常に注目が集まっているところです。IPHFにはどのようなことを期待されますか。
松木:そうですね。もともと、各研究領域で多くの業績を持った方々が集まっているので非常に優秀な研究集団になっていると思います。こういう組織ができたからこそ、何をするか、といいますと、横連携です。横連携を強めて、例えば光と医学が融合した形で結果を出していただきたいと思います。簡単ではないと理解していますが、それがうまくスタートアップや社会実装に一つでもつながればと思いますし、そういったことを目指してやっていただきたい。さらに、それに若手の方に積極的に参加していただきたいと思っています。すでにある業績に甘んじず、横連携による新たな融合研究が提案・評価されて、例えば大型の資金を獲得する、そういったことをIPHFの研究者にはぜひやってほしい。それによって間接経費が大学に入り、大学が潤うことも期待しています。
それから、研究しやすい環境づくりを、ぜひやりたい。例えば技術職員やURAの改革を含め研究開発マネジメント体制、研究の組織改革を積極的に進めていきたいと思っています。若手の人には、それが一番重要だと思います。
井貫:おっしゃる通りだと思います。IPHFの先生方には研究費を多めに寄せられていて、それだけのように思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、IPHFやRRAは研究体制の改革や研究支援体制の改革をトライアルする場としても機能しています。そういった大学改革を積極的にJ-PEAKSの枠の中で進めているということですね。
松木:そういったことをどんどん情報発信をしていきたい。ホームページもできたので、ネタを集めてアピールしていきたいと思います。
井貫:皆さんにご理解いただく工夫も、これから必要なのかなと思います。
■ 若い研究者は丁寧に、あきらめず、自分の思う研究に取り組んでほしい
井貫:先ほどおっしゃった若手の育成についてお伺いします。RRAは1月に始動して、キックオフも盛況でした。RRAで支援される教員も徳島大学でトップを走っていらっしゃる先生方が集まったと思っています。短期の支援ではなく5年間の長期支援ということで、従来の若手支援とは一線を画す取組みだと期待できますか?

松木:長期の支援が重要と認識しています。自分の研究者としてのお話をしますと、常に順調というわけではない状態で研究をしてきました。例えば、リン脂質の二重膜に圧力をかけると相互貫入するという大きな発見をしたのですが、少しの差で他のグループが先に発表しました。しかし、その後10年以上かけてその膜状態を示す領域の完全決定を行い、その後は我々のデータが引用され始めました。丁寧に研究を行い、データを出し続けた継続性が評価されたことは嬉しかったですが、非常に時間がかかったのも事実です。また、薬物(麻酔薬)が生体膜の膜タンパク質に影響を与えるのか、膜脂質に影響を与えるのかという論争で苦労した経験もあります。2つ以上の主義があると、どうしても強いところに人材もお金も流れます。私の所属していた研究室は圧倒的に不利で、最終的に教授と私二人だけで研究を続けました。世の中面白いな、と今は思いますが、逆転の機会が巡って来ました。冬になるとマイナス5度くらいになるソルトレークシティで、真っ暗のなか蛍を使った実験を続けて、初めて麻酔薬の圧力拮抗現象(麻酔薬の作用は圧力により抑制する)を酵素レベルで実証できたときは本当にうれしかったです。教授のところに走って行って、「これでいけます!」と言ったのを今でも鮮明に覚えています。
自分の経験から、逆境の中でもあきらめず、丁寧に自分の研究を続けていただきたいと思います。
もちろん、今の若い人にそう言ってもなかなか大変かもしれません。しかし、RRAではメンターの方を配置し、長期的な視点で相談できる環境を整えています。そのような環境のなかで研究を進め、次につながるステップを逃さず、そしてPI(Principal Investigator)として羽ばたいていただきたいと思います。
井貫:RRAの支援する若手の先生方やメンターの先生方にヒアリングすると、キャリアが不安定だったり、研究時間が雑務でつぶれたりという課題を伺います。J-PEAKSとしてサポートしていくことはできますか。
松木:IPHFやRRAに参画している人はその体制内でサポートしたいと考えています。一方で、参画されていない先生方への支援策は、現状では「T3制度」や研究クラスターという形になってしまいます。しかし、現在、研究支援・産官学連携センターが主導して行っている科研費のブラッシュアップAIの取組みは、J-PEAKSの予算が使われています。こうした形でJ-PEAKSだけではなくて全学レベルで使えるようなグッド・プラクティスに、J-PEAKSの予算を使うのはウェルカムだと思います。
井貫:J-PEAKSの中で、もしくはRRAの中で出てきた課題について取り組むことが、最終的に全学に波及することで全学の支援につながっていくということですね。
松木:ぜひ推進していきたいと思っています。
■ 研究力強化の徳島モデルを創る
井貫:既存の学部や研究者との連携についてどうお考えでしょうか。
松木:既存の学部の中でJ-PEAKSを波及させるというのは非常に難しいところがあると考えています。その学部に対するメリットを明確に打ち出せる方策を取りたいと思っています。サイトビジットで他の採択校の良い取組み事例を教えていただき、徳島大学でできることをぜひ進めていきたいと思います。
井貫:サイトビジットは、お互いのプラクティスを共有しあって、それを取り入れる、もしくは発展的にとらえて使っていくためにあると思います。
松木:そうですね。他の大学でどのようなことをやっているのか、うちとはどこが違うのか、どうすれば取り入れられるかを考える良い機会になりました。
井貫:松木先生は「J-PEAKSは大学改革そのもの」とおっしゃっていますが、改革によって10年後の徳島大学は一体どうなっていくと期待できるでしょうか。
松木:J-PEAKSが始まって、IPHFという拠点ができ、その中で新しい融合研究をぜひ生み出してほしい。新しい融合研究を生み出して、RRAの枠組みなどで人材を育成し、最終的にはスタートアップなどを通じて、徳島県にとって新しい付加価値をもたらすようなイノベーションで地域に貢献していきたいと考えています。採択されている25大学が色々な取組を打ち出していますが、徳島大学が独自の色を出して研究力を強化する一つのモデル大学となる方向性を見せていきたいと思います。
井貫:それは、今作り上げつつあるところということでしょうか。
松木:IPHFが立ち上り、次は組織改革もしないといけない。しっかりとした体制整備を進め、融合がうまく進む形にしていかないといけないでしょう。すべてを一度には行うのはなかなか難しいので、やれるところから確実にやっていき成果を上げていきたいと思います。
口だけで言うのは簡単ですけど、行動しないとダメだと思っています。例えば部局にも足を運び、私自身が現場ともっと近い距離で色んなことを話し合う場を持つようにしていければと思っています。
■ 「強い研究大学を一緒に作っていきましょう!」
井貫:最後に、教職員・学生の皆さんに向けて、一言メッセージをいただけますか。
松木:J-PEAKSに採択された大学は四国では徳島大学だけであり、中四国でも岡山、広島と徳島だけです。選ばれた大学であることを誇りに思い、自信を持って、自分たちが新しい徳島大学、これからの特色ある研究大学を作り上げるという気持ちを持っていただき、この事業に積極的に参画していただきたいと思います。そういう気持ちにさせるのは我々の役目ですし、そのためのサポートはすべてこちらで行っていこうと思います。ぜひこの事業を通じて、徳島大学を非常に強い研究大学、全国に誇れる大学として、皆さんと一緒に作っていきたいと思っています。
井貫:本日はありがとうございました。

松木理事、井貫准教授

