山本哲也准教授らの研究グループによる,緊急事態宣言下において生じる希死念慮の予測因子を同定した研究が,第28回日本行動医学会学術総会優秀演題賞を受賞しました

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徳島大学大学院社会産業理工学研究部 山本 哲也准教授,同研究部 内海 千種准教授,同大学院創成科学研究科
修士1年 鈴木 菜穂,横浜市立大学医学群 菅谷 渚助教の研究グループは,過去4回のすべての緊急事態宣言下に
おける人々のメンタルヘルスについて追跡調査を行い,希死念慮(死にたいという気持ち)に影響を及ぼす要因を
検討しました。研究結果は,2021年11月27日に「第28回日本行動医学会学術総会」において発表され,その成果
から優秀演題賞を受賞しました。
【発表演題の情報】
題目:新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況で生じる希死念慮の予測因子の同定~計4回の緊急事態宣言下に
おける前向きコホート研究~
発表者:山本哲也,内海千種,鈴木菜穂,菅谷渚
【研究成果のポイント】
  ・自殺リスクとなる希死念慮の生起は,2ヶ月〜15ヶ月前の心理社会的状態から予測可能であった。
  ・一度生じた希死念慮はパンデミック下では残遺・再発する可能性が示され,自殺リスクを予防する上での
   優先すべき査定・介入対象であると考えられた。
  ・社会的ネットワークの大きさや孤独感,内受容感覚の鋭敏さ,睡眠習慣,不安症状等も希死念慮の生起に
   影響しうることから,これらを介入対象にすることで,希死念慮の効果的な予防方略となる可能性が示唆
   された。
  ・希死念慮を予測する変数の早期アセスメントと早期介入を可能とする柔軟な対応が必要であり,様々な
   機関による協働的・領域横断的なアプローチが重要であると考えられる。
 なお,本調査プロジェクトに関連する内容については,以下のリンクからも確認できます。

https://www.catlab.info/covid-19

【研究成果の発表概要】
背景・目的 
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染が拡大した2020年以降,我が国の自殺率が急増している。自殺の
強い危険因子は希死念慮であるため,希死念慮に影響する要因の同定が喫緊の課題である。希死念慮の要因の同定
には継続的な縦断研究が極めて重要となるが,COVID-19パンデミック下において希死念慮に対する縦断研究は
非常に限られており,基礎的知見が乏しい現状にある。そこで,緊急事態宣言下における人々のメンタルヘルスに
ついて継続的な追跡調査を行い,希死念慮に影響を及ぼす要因を検討した。
方法
2020年4月から2021年9月までに発令された計4回の緊急事態宣言下において,オンライン調査を実施した。
全調査は宣言発令から約1ヶ月後に行われた。宣言が発令された都市在住の10代〜80代の男女49476人から
データを収集し,全調査に参加した2624名を解析対象とした。主な指標として,性別や所得等の属性情報,
抑うつ(PHQ-9)や不安(GAD-7),発令中の対人関係や生活習慣等を測定した。4回目調査時(2021年8月)の
希死念慮を予測するため,1回目(2020年5月),2回目(2021年2月),3回目調査時(2021年6月)の指標計
185個を特徴量とし,ランダムフォレストに基づく予測器の精度を検証した。また,最適な介入目標を見出すため,
同様の指標で決定木分析を行った。なお,本研究は筆頭著者の所属機関内の研究倫理審査委員会の承認を経ており
(No.212),開示すべき利益相反関係にある企業等はない。
結果
予測モデルの正解率は0.91であり,適合率,再現率,F値は,それぞれ0.90, 0.91,0.89であった(加重平均)。
予測因子として最も重要度の高い特徴量は,2ヶ月前や半年前に経験した希死念慮であった。さらに,決定木の
結果から希死念慮の有無を決定しうるものとして,2ヶ月前の不安症状や内受容感覚,利他的な感染予防行動,
さらに半年前の社会的ネットワーク,睡眠習慣,孤独感等が示された(下図)。

 

結論
 本研究で構築された予測器は,希死念慮の有無について高い予測精度を有していた。解析結果から,一度生じた
希死念慮はパンデミック下では残遺・再発する可能性が示され,アセスメントの優先対象であると考えられた。
さらに,社会的ネットワークの大きさや孤独感,睡眠習慣や不安症状等が希死念慮の生起をわけうることから,
これらを介入対象にすることで,希死念慮の効果的な予防方略となる可能性が示唆された。

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