2.タンパク質-核酸相互作用様式解明のためのケミカルツールの創製

核酸(DNAやRNA)はワトソン-クリック塩基対によって右巻きの2重らせん構造を形成します。このときDNAは図左側に示すようなB型と呼ばれるらせん構造を、一方RNAは図右側に示すA型と呼ばれるらせん構造を形成します。2重らせん構造にはメジャーグルーブ並びにマイナーグルーブと呼ばれる溝が存在し、タンパク質が核酸と相互作用する際には、その塩基配列だけでなくこれらグルーブの形を厳密に認識することが知られています。一般に核酸-タンパク質間の相互作用様式を解析するためには、X線やNMRを用いる手法が用いられますが、これらの手法を用いてこのような相互作用様式を解析しようとする場合、共結晶を得ることが困難であるなどの問題があります。そこで、私たちは簡便に核酸-タンパク質間の相互作用様式の解明に利用できるケミカルツールの創製を目指しました。

目的とするケミカルツールを設計に当たり、DNAのA-T塩基対上のそれぞれのグルーブに面する位置に、立体障害となるような置換基(Br基)を導入すれば、この置換基がタンパク質との相互作用を阻害し、どちらのグルーブが相互作用に寄与しているかを明らかにできると考えました。そこで立体的、電子的環境を考慮し、2種の2’-デオキシブロモデアザアデノシンの設計と合成を行いました。これらを実際にDNAオリゴマー中へ導入し、RNaseHやNF- κBを標的タンパク質として用いて、これらがDNA-タンパク質間の相互作用様式解明のためのケミカルツールとして有用であることを確認しました。

さらに現在はこの方法をRNA-タンパク質間の相互作用様式解明に利用するため、まず2種のブロモデアザアデノシン(7-ブロモ-7-デアザアデノシン、3-ブロモ-3-デアザアデノシン)を合成しました。続いてこれらをsiRNA中に導入し、近年高い注目を集めているRNA干渉機構における分子認識機構様式の解明に利用するため研究を行っています。