創薬生命工学


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研究概要

近年、遺伝子工学技術を基盤とするバイオ医薬品開発やゲノム創薬、また次世代シークエンシングによる個人ゲノム情報に基づくオーダーメイド・先制医療が進展しています。一方、エピジェネティックな遺伝子発現制御に基づき、2007年にヒトiPS細胞が樹立され、免疫拒絶を克服できる再生医療やヒトiPS細胞から分化誘導した組織細胞を利用するiPS創薬を指向した研究が急速に発展しています。創薬生命工学分野では、現代の先端医療に対応すべく、遺伝性糖質代謝異常症やがんなどの遺伝子疾患を対象とし、遺伝子変異や発現異常がどのようなメカニズムで多様な臨床症状の発症につながるのかを解析し、得られた知見を一般疾患(common disease)の発症機構の解明や治療法の開発に役立てることを目的として研究を進めています。また薬学部保有ライブラリーから新規生理活性化合物を発掘する創薬シーズ探索も行っています。

 

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1.ヒト遺伝子疾患の分子病理学的研究と創薬への応用

1)リソソーム糖鎖分解酵素欠損症(リソソーム病)の分子病理学的解析

β-Hexosaminidase AHexA)欠損により脳内GM2 gangliosideの蓄積と中枢神経症状を伴うTay-Sachs病(α鎖欠損)及びSandhoff病(β鎖欠損)等を対象に、遺伝子KO疾患モデルマウスや患者iPS細胞由来神経系細胞を用い、神経炎症やイメージングMSによる糖質・脂質代謝の変動解析(浜松医科大との共同研究)により、欠損症モデルにおける発症機構の研究を進めています。また、イタリア・ナポリ・Telethon遺伝医学研究所(TIGEM)との共同研究により、リソソーム病におけるリソソーム制御転写因子(Transcription Factor EB: TFEB)の発現制御やオートファジーの変動について解析を進めております。特に、リソソーム病におけるオートファゴソームとリソソームの融合に関して、メンブレントラフィックの観点から解析を行っております。さらに、九州大学との共同研究により、糖脂質のリゾ体について、その生理活性や病態への影響について解析を進めております。 

 

2)高機能型リソソーム酵素及び関連因子のデザイン・創製と治療薬開発

 これまで中枢神経症状を伴うリソソーム病の脳内酵素補充療法の確立をめざし、(独)科学技術振興機構(JST)・戦略的創造研究事業(CREST)(H1519年度)、(独)医薬基盤研究所(NIBIO)・保健医療分野における基礎研究推進事業(H2125年度)などの大型競争的資金を用い、より有効性が高く副作用の少ない組換え酵素開発を目的とし、GM2分解能をもつ改変型HexBを高発現するCHO細胞株を樹立し、精製酵素のSandhoff病モデルマウスに対する脳内補充効果を明らかにし、海外製薬企業からも注目されています。またAMED ACT-MSの事業(H28H29年度) において、AAVベクターを利用した改変型HexBによる遺伝子治療の研究を自治医科大学・(株)遺伝子治療研究所と共に進め、臨床応用できるように努力しております。

 

3)新規バイオ医薬品への応用を目指したネオグライコバイオロジクスの創製

 農水省「カイコによるヒト・動物用医薬品の開発」プロジェクト(H22H26年度)で、(独)農業生物資源研究所との共同で、ヒトCathepsin A Serine Carboxypeptidase, CTSA)を生産する組換えカイコの作製と、絹糸腺からの活性型CTSAの大量精製に世界初で成功し、本学先端酵素学研究所や(独)産業技術総合研究所と連携し、X線結晶構造解明とシャペロン化合物のin silico予測を行ってきました。また高エネルギー加速器研究機構(KEK)との共同で、哺乳類培養細胞内で形成されるヒトNeuraminidase1NEU1)結晶を用い、SPring8SACLA)でX線構造解析を進めています。今後、CTSANEU1の同時欠損症(Galactosialidosis, GS)患者由来培養細胞(iPS細胞由来神経系細胞など)や、新規に作製した、スプライシング異常誘導型GSモデルマウスを用い、上記の治療薬候補の有効性や毒性評価を進める予定です。 また ケミカルグライコバイオロジーと糖鎖工学技術に基づき、組換えヒトリソソーム酵素と、均一な機能性合成糖鎖とのコンジュゲートを、東京化成工業(株)や伏見製薬所(株)との共同で創製しています。また本学・機能分子合成薬学分野(大髙教授ら)との共同で、化学合成したGM2アクチベーターと機能性合成糖鎖とから完全合成糖タンパクを創製し、リソソーム病モデルに対する有効性・毒性評価を行い、治療薬への応用を目指した研究を進めています。
 

4)ゲノム編集技術を利用する遺伝子疾患マーカーや医薬品評価モデルの構築

CRISPR-Cas9システムを用いる特定遺伝子のノックアウトや校正(Editing)による遺伝病モデルの作製や遺伝子治療技術の開発、さらに iPS細胞のみならず、健常者由来培養細胞に対し、様々な症例で報告されている遺伝子変異を人為的に導入し、患者由来細胞を用いる倫理的問題を回避した創薬用モデル細胞パネルの構築を目指した研究を開始しています。

 

 

2.学内外研究機関との創薬指向性連携研究プロジェクトの推進

薬学部内で整備されつつある徳島大オリジナル化合物ライブラリーを利用し、医学部・歯学部・先端酵素学研などとの共同研究プロジェクトを推進しています。特に、幹細胞の分化や体細胞の分化転換をエピジェネティックに制御できる分子の探索・創製と機能性組織細胞株の樹立に基づく、創薬スクリーニングシステム構築と再生移植治療への応用を目指しています。また上記の研究機関に加え、京都大iPS研究所、東京大院医学系生体情報分野、浜松医大イメージングMS部門、国立医薬品食品衛生研究所生物薬品部、群馬県蚕糸技術センターなどとの産学官連携研究プロジェクトも推進しています。

 

研究業績

 

研究室について

最終更新日:2017年4月17日