薬理学講義概要

2011年10月13日

薬理学講義概要

薬理学は、薬と生体との相互作用の結果起こる現象を研究し、その機構を明らかにすることを目的とした科学である。 高等動物における生体の特徴は、恒常性を維持するために調節機構が発達していることであり、病態とはその調節機構の障害により引き起こされた状態といえよう。 薬の多くは生体に作用してこれらの調節機構をゆり動かすことができるので、乱れている調節機構を正常方向に動かすことも可能であるとともに、正常生体でも薬によるゆり動かしの結果、極めて興味深い現象が引き起こされる。前者が、薬物療法の基礎になり、また、後者は生体の調節機構を解明する有力な手段として利用される。これらのことから解るように、薬理学の授業においては、化学物質としての薬の性質によりゆり動かされる生体の生理および病態生理機能を十分に理解しなければならない。医学部における薬理学授業の主目的は、正しい薬物療法を行うための基礎知識を習得することにある。しかし、薬理学授業は単に知識だけの習得にのみに費やされることなく、医師をめざす学生がより良い薬物療法を行えるように自ら思考する訓練ができる授業にしたい。すなわち、薬理学授業は講義だけでなく実験動物を使用したin vivoでの実習をおこない、薬物が引き起こす多くの生命現象の変化を直接観察し、問題点や疑問点を討論する過程において、自主性・創造性を養うことに努める。

 

一般目標

薬物療法の基礎知識を習得することを目標とする。このためには、化学物質としての薬の性質およぴ生体内動態を理解することが不可欠である。より適切な薬物療法を行うためには、人体の恒常性を維持するための各種調節機構(生理)を理解し、さらに、疾病時の各種調節機構の異常(病態生理)を理解したうえで、その調節機構を修飾する各種薬物の性質を理解することが必要である。
さらに、薬物によりゆり動かされる生体側の反応を正確に把握・比較・評価する事により、生体の複雑な調節機序を解明できる可能性を秘めている。すなわち、薬は薬物療法の手段としての価値のみならず、薬が生体調節機構を解明する道具として有用であることを理解し、生命機構の解明の大きな武器である薬を生命科学研究の道具として使用する基礎能力を養うことを目標とする。

 

到達目標

  1. 各種疾病に対して薬理学的根拠に基づいて薬物の適切な選択ができる。
  2. 化学物質としての薬の性質と起源についての知識を習得する。薬物および生体内活性物質の構造を修飾することにより、より、有効な薬物が開発できることを理解する。
  3. 薬物の生体内動態(吸収・体内分布・代謝・排泄)を理解し、薬物の薬理作用と副作用の関係が説明できる。
  4. 各種薬物が、生体内に存在する各種受容体にどの様に作用し、生体の各種調節機構にどの様な影響を与えるかを説明できる。
  5. 実験動物を使用した実習により、薬物が生体の調節機構におよぼす作用および他の薬物との相互作用を観察・評価することにより、生体の調節機構を理解できる。
  6. 生体の調節機構を刺激したり抑制する新しい薬物の開発(創薬)の方向性を理解できる。

 

学習方法

講 義 : プリント・PowerPoint・討論
実 習 : in vivo およびin vitroの実験方法を用いた薬理学実験を行う

評価方法

  1. 講義および実習を修了した時点で筆記試験を行う。
  2. 実習レポートの採点

 

対象項目

  1. 薬理学総論:薬の作用様式と作用機序、薬の生体内動態、生体内情報伝達機構
  2. 臨床薬理学総論:臨床薬物動態、薬の有効性と安全性、薬物相互作用
  3. 神経薬理学:アドレナリン作用薬・拮抗薬、コリン作用薬・拮抗薬、中枢神経薬理
  4. 循環器薬理学:心臓作用薬、血管作用薬、血液・造血器作用薬
  5. 腎臓薬理学:利尿薬、輸液、腎臓内分泌学
  6. 内分泌薬理:膵臓ホルモン、副腎皮質ホルモン、オータコイド、生理活性ペプチド
  7. 呼吸器薬理:気管支拡張薬、喘息治療薬、風邪薬
  8. 消化器薬理:胃作用薬、腸作用薬
  9. 炎症薬理:非ステロイド性抗炎症薬、解熱鎮痛薬

 

参考書

  • Basic & Clinical Pharamcology 10th edition
    Edited by Bertram G. Katzung
    (Lange Medical Books/McGrawHil)
  • Goodman & Guilman's
    The Pharmacological basis of Therapeutics (McGrawHil)
  • NEW薬理学(南江堂)
  • 医科薬理学(南山堂)
  • 新薬理学入門(南山堂)