研究活動の内容

2011年10月17日

1)代謝疾患およびストレスを制御する栄養科学

1)代謝疾患およびストレスを制御する栄養科学

環境、活動など生活習慣の著明な変化によって、肥満、糖尿病、骨粗鬆症、等の生活習慣病が著明に増加している。心理的ストレスにより酸化障害を生じ、長期間にわたる心理的ストレスは多くの疾患の誘引となる。精神的および心理的ストレスによる酸化ストレスに対して食品摂取が予防機能を有することが考えられる。経口グルコース摂取に対する早期インスリン分泌反応はグルコース代謝を調節するために重要である。早期インスリン分泌反応が障害されると、食後高血糖からインスリン抵抗性を示すようになる。高血糖は活性酸素種生成を促進する。したがって、食後高血糖を抑制する機能性食品は心血管障害だけでなく心身ストレスを制御するために重要と考えられる。
Recent publication:
Arai H, et al: Effects of a palatinose-based liquid diet (Inslow) on glycemic control and the second meal effect in healthy men. Metabolism 56: 115-121, 2007
Takeda E, et al: Gene expression in low glycemic index diet-impact on metabolic control. Forum of Nutrition, 60:127-139, 2007

2)食品や栄養素の組み合わせ効果

2)食品や栄養素の組み合わせ効果

世界一を誇る日本人の長寿に対して、日本食が貢献していると考えられる。日本人にとってご飯は重要な日常食であるが、グリセミック・インデックス(GI)値が高いことが欠点である。そこで、ご飯とともに摂取する副食の効果をみると、大麦、納豆、やまいも、オクラをいっしょに摂取するとGI値が低下することが明らかになった。
また、それぞれ糖質および脂質の質の効果について動物研究を行った。糖質としてスクロースよりパラチノースを摂取すると、内臓脂肪蓄積、脂肪細胞肥大化、高血糖、高脂血症、ラ氏島肥大化を防止できる。また、脂質としてリノール酸よりオレイン酸を摂取させると、ラ氏島障害、脂肪組織へのマクロファージ浸潤、腫瘍壊死因子αを抑制できた。このような食品の組み合わせが疾患予防に重要と考えられる。
Recent publication:
Sato K, et al: A combination of dietary palatinose and oleic acid ameliorates disorders of glucose and lipid metabolism in Zucker Fatty rats. J Nutr, 137: 1908-1915, 2007

3)リン酸トランスポーターの細胞内局在制御と生体リン恒常性維持機構の分子レベルでの解明

3)リン酸トランスポーターの細胞内局在制御と生体リン恒常性維持機構の分子レベルでの解明

生体内でのリン恒常性は、近位尿細管でのリン再吸収を担うナトリウム依存性リン酸トランスポーター(NaPi-IIa)の活性制御により一定に保 たれている。多くのリン代謝調節ホルモン(PTHやビタミンD、FGF23など)は、NaPi-IIaの細胞膜上での発現量を増加させたり減少させたりす ることで、活性を調節する。最近、これらのトランスポーターは、脂質ラフトあるいはカベオラと呼ばれるような脂質マイクロドメイン上に様々なシグナル分子 や足場タンパクと共に集積し、巨大機能複合体(トランスポートソーム)を形成していることが明らかになりつつある。我々は、NaPi-IIaを中心とした リン酸トランスポートソームの実体解明とホルモンなどのシグナルによるトランスポートソーム機能調節の分子メカニズムを明らかにするべく取り組んでいる。
Recent publication:
Nashiki K, et al: Role of membrane microdomains in PTH-mediated down-regulation of NaPi-IIa in opossum kidney cells. Kidney Int. 68:1137-1147, 2005

4)リン酸による生体機能調節の分子メカニズムと生活習慣病

4)リン酸による生体機能調節の分子メカニズムと生活習慣病

腎不全などの高リン血症状態では、血管の石灰化が促進し、突然死や心血管イベントによる死亡リスクが高まることが知られている。特に、高リン血症 は、血管平滑筋の骨芽細胞への分化を促進し、石灰化を促すことが知られている。我々は、高リン血症が、血管内皮機能にも影響を及ぼすことを見出し、そのメ カニズムと動脈硬化との関連について研究している。
Recent publications:
Takeda E, et al. A novel function of phosphate-mediated intracellular signal transduction pathways. Adv Enzyme Regul 46:154-161, 2006
Nishida Y, et al. Acute effect of oral phosphate loading on serum fibroblast growth factor 23 levels in healthy men. Kidney Int 70(12): 2141-2147, 2006

5)血中リンの濃度は腎臓や腸管に発現しているナトリウム依存性リントランスポーター 1

5)血中リンの濃度は腎臓や腸管に発現しているナトリウム依存性リントランスポーター 2

5)血中リンの濃度は腎臓や腸管に発現しているナトリウム依存性リントランスポーター

(NaPi)により調節されており、骨健康、臓器石灰化、ビタミンD代謝に重要である。そこで生体でのリン代謝やビタミンD代謝調節機構を解明するために、甲状腺ホルモンやビタミンA,ビタミンDによるNaPi-2a, 2b, 2cや25水酸化ビタミンD1α水酸化酵素遺伝子発現調節機構の解明に取り組んでいる。
骨健康は骨芽細胞や破骨細胞機能によって調節されているので、種々栄養素の効果について検討した。ケルセチン、冬中夏草抽出液、コラーゲントリペプチドが骨健康増進に有効と考えられた。
Recent publications:
Yamamoto H, et al: Alternative promoters and renal cell-specific regulation of the mouse type IIa sodium-dependent phosphate cotransporter gene. Biochim Biophys Acta. 1732: 43-52, 2005
Mizuha Y, et al: Water extract of Cordyceps sinensis (WECS) inhibits the RANKL-induced osteoclast differentiation. Biofactors. 30:105-16, 2007