武田教授より

2011年10月18日

武田教授

 

平成11年12月より、徳島大学医学部耳鼻咽喉科学講座を担当しております。徳島大学耳鼻咽喉科教室は、昭和19年に白川吾一郎教授が開講されました。徳大が長く四国唯一の医学部であったために、教室の関連病院は徳島県だけでなく、香川県、高知県、愛媛県、兵庫県に広がっています。幸い優秀な医局員に恵まれ、このような伝統のある教室を担当させていただくことを、大変光栄に存じております。

 

私は、医学の根本は惻隠の心にあると思っています。孟子曰ハク、人皆、惻隠ノ心有リ。惻隠ノ心ハ仁ノ端ナリ。病める患者さんに対し、憐れみ同情する惻隠の情こそが、心を癒すことができると思います。一方で、医療の基本は痛みや苦痛を取り除くことにあります。しかし、耳鼻咽喉科は頭頸部の感覚や機能に密接に関係した疾患を扱っています。これからの耳鼻咽喉科には、痛みを取り除く医療から、感覚や機能障害を回復してそれに伴う不快を取り除く医療が求められていると思います。

私は、「医学は人を幸せにする学問である。」という言葉も好きです。そして、医療は医学の社会的適応であります。耳鼻咽喉科疾患による感覚障害や機能障害を回復してそれに伴う不快を取り除き、患者さんが幸せになり、満足を得る医療をめざしたいと思っています。

 

耳鼻咽喉科学は、外科学の一部であった耳科学と、内科学の一部であった喉頭科学が合わさってドイツで誕生し、すでに100年以上が経っています。従来の耳・鼻・咽喉頭といった解剖学的区分ではなく、現代の耳鼻咽喉科学は、頭頸部の機能再建外科学、感覚器医学、頭頸部腫瘍外科学を中心に、新たな発展を模索している時代にあると認識しています。私は、21世紀には徳島の地から新しい耳鼻咽喉科学を開拓し、それを世界に向かって発信していきたいと決意しています。恩師松永 亨教授が、最後に私に残してくれた言葉、「世界に向かって派を立てよ。」を思い出しながら。

 

文責 武田憲昭