第32回顔面神経研究会

2011年10月13日

第32回顔面神経研究会

第32回日本顔面神経研究会は、徳島大学耳鼻咽喉科学教室が担当させていただき、平成21年6月4日、5日の両日、淡路島の淡路夢舞台国際会議場で開催いたしました。新型インフルエンザの流行の影響が心配されましたが、213名もの先生に参加していただき、盛会のうちに研究会を終えることができました。厚く御礼申し上げます。

日本顔面神経研究会は、顔面神経という1本の脳神経に関して、耳鼻咽喉科、形成外科、神経内科、リハビリテーション科、脳神経外科、麻酔科などの分野から学際的な研究を行ってきました。しかし、顔面神経の上位には脳が、高次には心が存在しており、私は今後の顔面神経研究は高次脳機能との関係も重要になってくると考えております。そこで特別講演ではまず、吉峰俊樹教授(阪大脳外)に「随意運動の脳内メカニズム」と題して、脳の随意運動制御メカニズム、運動ニューロンの可塑性、ブレイン・マシン・インターフェイスにつきご講演をお願いしました。生きたサルの脳表面の電極から脳の運動指令を取り出し、サルが頭で考えるだけでロボットアームを動かすことのできる動画には感銘を受けました。
もう1つの特別講演では、原島 博教授(東大工学部)に「コンピュータで探る顔の秘密」と題して、ご講演をお願いしました。原島先生は、日本顔学会の会長をお務めであり、我々とは違った視点、特に顔と心の問題についてお話していただきました。特に、ある職業に従事する複数の人の顔をコンピュータにより平均化すると、その職業に特徴的な顔が現れてくることには感銘を受けました。
顔面神経麻痺の臨床においては、診断法や治療法の進歩により、麻痺に対する治療成績が格段に進歩しました。その結果、顔面神経麻痺患者が最も困っている問題点は後遺症であると思われます。昨年の研究会のシンポジウムでは後遺症の評価が取り上げられましたので、本研究会では後遺症のマネジメントをシンポジウムのテーマとしました。「顔面神経麻痺後遺症のマネジメント」の司会を池田 稔先生(日大耳鼻科)と朝戸裕貴先生(獨協医大形成)にお願いし、顔面拘縮(保存的)は栢森良二先生(帝京大リハ科)、病的共同運動(保存的)は中村克彦先生(徳大耳鼻科)、顔面拘縮・病的共同運動(手術)は鈴木康俊先生(獨協医大形成)、後遺麻痺は山本有平先生(北大形成)、ワニの涙は田中一郎先生(東京歯科大市川総合病院形成)、アブミ骨筋性耳鳴は土井勝美先生(阪大耳鼻科)にシンポジストをお願いしました。顔面神経麻痺後遺症のマネジメントの現状と将来展望が、よく理解できたと考えています。
臨床セミナーのテーマには、顔面神経鞘腫を取り上げました。「顔面神経鞘腫のマネジメント」の司会を青柳 優先生(山形大耳鼻科)にお願いし、側頭骨内顔面神経鞘腫は村上信五先生(名市大耳鼻科)、耳下腺内顔面神経鞘腫は田邉牧人先生(耳鼻咽喉科サージクリニック老木医院)にお願いしました。聴神経腫瘍との鑑別、手術時期、再建法などにつき理解が深まったと思います。
ランチョンセミナーは、初日には柳原尚明先生(鷹の子病院耳鼻科)の司会で「先天性顔面神経麻痺に対する手術治療」について多久嶋亮彦(杏林大形成)にご講演いただきました。2日目には永廣信治先生(徳大脳外)の司会で「片側顔面痙攣に対する手術治療」について藤巻高光先生(埼玉医大脳外)にご講演いただきました。
一般演題は64題と多くの出題をいただき、研究会初日は2会場で運営しました。解剖、電気生理、再生医療、リハビリテーション、麻痺の評価、後遺症の評価、神経再建、表情再建、神経鞘腫、反復性麻痺、ハント症候群などの多岐にわたるテーマでの発表と質疑応答が活発に行われました。なかでも、病的共同運動、顔面拘縮、後遺麻痺などの後遺症に対するリハビリテーションや、笑顔の再建を目的とした形成外科的な取り組みが活発に行われており、今後の研究の発展が大いに期待できる分野であると思われます。
淡路夢舞台は、建築家の安藤忠雄先生が設計された淡路島の複合文化リゾート施設であり、淡路花博が行われたことでも有名です。学会会場である夢舞台国際会議場も安藤先生の設計の素晴らしい建築で、ウエスティンホテルが隣接しています。夢舞台の安藤先生設計の建築物群の1つに奇跡の星の植物館があり、本研究会の会員懇親会はこの植物館で開催しました。ライトアップされた植物を鑑賞しながら、夜遅くまで和やかに懇談が続きました。

次回の第33回日本顔面神経研究会は、福岡大学耳鼻咽喉科の中川尚志教授のご担当で、平成22年5月27日(木)、28日(金)の両日、福岡市で開催される予定です。また多くの先生のご参加を、お願いいたします。

第32回顔面神経研究会