脳血管障害によるめまい

2011年10月13日

脳血管障害が大脳半球に生じてもめまいが突発することはほとんどありません。脳血管障害によってめまいが突発するとしたら、それはほとんどが脳幹・小脳の脳 血管障害です。めまいの頻度が特に高いのは前下小脳動脈(AICA)領域の梗塞、後下小脳動脈(PICA)、あるいは小脳の出血ないし梗塞が考えられま す。これらの脳血管障害ではめまいが初発症状であったり、めまいが最も前景に立つ症状であることも多く、内耳疾患と間違えられる可能性があります。よく中枢性のめまいは浮動性であると言われますが、小脳・脳幹の梗塞や出血におけるめまいの約30%は回転性です。そのため中枢性めまいの鑑別のために随伴する 神経症状に注意するべきでしょう。脳血管障害は脳外科が専門ですので、認めた場合は脳外科へ紹介となります。

 

脳梗塞

1.前下小脳動脈(AICA)領域の梗塞

AICA領域の梗塞はPICA領域の梗塞に比べると頻度は少ないです。AICAは脳底動脈の主要分枝の一つで、主に橋・小脳に血流を供給し、分 枝として橋の蝸牛神経核に血流を供給しているのみならず内耳の蝸牛にも血流を供給しているため症状が内耳疾患に似ています。AICAの閉塞は通常、橋下部 外側に梗塞をもたらしますが、その際に同側の聴力障害や耳鳴が突発することが多いです。めまいは回転性めまいも多いので、鑑別のために上下肢の失調や腹 肢、顔面や半身の感覚障害など他の神経症状に注意します。

 

2.後下小脳動脈(PICA)領域の梗塞

PICAは椎骨動脈から分岐する主要血管で、その閉塞はしばしば延髄外側梗塞(Wallenberg症候群)をもたらします。 Wallenberg症候群は回転性めまいをきたす代表的脳幹梗塞ですが浮動性めまいを訴えられることも多いです。また、PICA領域の梗塞ではPICA よりも椎骨動脈に閉塞性変化が見られることが多いです。典型例では急性の頭痛・めまい・悪心嘔吐を伴って発症して、疑核の障害により同側の咽頭・声帯麻痺 をきたし、嚥下障害・さ声を呈し、交感神経下行路の障害によって同側のHorner症候群、下小脳脚の障害によって同側上下肢の運動失調が見られます。三 叉神経脊髄路(下行性)と外側脊髄視床路の障害によって同側の顔面と対側の体幹及び上下肢の温痛覚障害を示します。ただこのような典型的症状を呈するものは少なく、このような症状のいくつかが見られるものの方が多いです。

 

3.小嚢の梗塞または出血

小脳はAICA,PICA及び上小脳動脈(SCA)から血流を供給されています。これらの血管が破綻または閉塞した場合、小脳に限局した脳出血 または小脳を中心とする梗塞が生じることがあります。小脳出血または梗塞ではめまい・嘔気・嘔吐が主な症状で他の神経症状が乏しいことが多く、内耳性のめ まいとの鑑別が難しい場合があります。構音障害や失調が比較的認められるので注意が必要です。