唾液腺腫瘍

2011年10月13日

基本的概念

唾液腺腫瘍は耳下腺腫瘍・顎下腺腫瘍・小唾液腺腫瘍に分けられますが、大部分は耳下腺腫瘍で次いで顎下腺腫瘍が多くみられます。唾液腺腫瘍の特徴として良性腫瘍、悪性腫瘍共に組織型が多彩で、長期予後は組織型によって大きく左右されます。

良性腫瘍では多形腺腫とワルチン腫瘍が多く、それぞれ全耳下腺腫瘍のうち約70%と約15%をしめます。顎下腺腫瘍ではほとんどが多形腺腫で す。多形腺腫はその名のとおり上皮性腫瘍細胞の部分と非上皮性の部分が混在する構造を示しています。30~60歳に多く、発育は緩徐で比較的硬い表面平滑 な腫瘤として触れます。通常は一側性で単発性ですが経過中に悪性化することがあります。ワルチン腫瘍は腺リンパ腫とも言われて、50~70歳に多いです。 発育は緩徐で嗅条の比較的軟らかい腫瘤として触れます。多発性、両側性のこともあります。

悪性腫瘍も組織型は多彩で様々なものがありますが、腺癌、粘表皮癌、腺様嚢胞癌、多型腺腫内癌、扁平上皮癌などがあります。

 

唾液腺上皮性腫瘍の組織分類(WHO,1991)

  1. 腺腫 adenomas
    1. 多形腺腫 pleomorphic adenoma
    2. 単形腺腫 monomorphic adenoma
      1. 腺リンパ腫Warthin腫瘍) adenolymphoma(Warthin tumor)
      2. 好酸性腺腫(膨大細胞腫) oxyphilic adenoma(oncocytoma)
      3. その他の単形腺腫 other monomorphic adenoma
  2. 癌腫 carcinomas
    1. 腺房細胞癌 acinic cell carcinoma
    2. 粘表皮癌 mucoepidermoid carcinoma
    3. 腺様嚢胞癌 adenoid cystic carcinoma
    4. 多形性低悪性腺癌 polymorphous low grade adenocarcinoma
    5. 上皮・筋上皮癌 epithelial myoepithelial carcinoma
    6. 基底細胞腺癌 basal cell adenocarcinoma
    7. 皮脂腺癌 seboacinous carcinoma
    8. 乳頭状嚢胞腺癌 papillary cystadenocarcinoma
    9. 粘液性腺癌 mucinous adenocarcinoma
    10. 好酸性腺癌(膨大細胞癌) oncocytic carcinoma
    11. 唾液導管癌 salivary duct carcinoma
    12. 腺癌 adenocarcionoma
    13. 悪性筋上皮腫(筋上皮細胞癌) malignant myoepithelioma
    14. 多形腺腫内癌(悪性混合腫瘍) carcinoma in pleomorphic adenoma
    15. 扁平上皮癌 squamous cell carcinoma
    16. 小細胞癌 small cell carcinoma
    17. 未分化癌 undifferentiated carcinoma
    18. その他の癌 other carcinoma

 

症状

耳下腺腫瘍の症状は一般的には耳下部の無痛性・単発性の時間をかけてゆっくりと大きくなる腫瘤で、良性ではまず顔面神経麻痺の症状はおこりません。悪性腫瘍を疑わせる症状としては顔面神経麻痺、腫瘍の急速な増大、自発痛、周囲組織との癒着などが上げられます。

顎下腺腫瘍の症状は顎下部にできる弾性硬の腫瘤です。悪性腫瘍では腫瘤は硬く、表面が凸凹で可動性が悪いことがあります。また、自発痛や顔面神経麻痺等をみることもあります。

 

分類

耳下腺 (C07.9)

顎下腺 (C08.0)

舌下腺 (C08.1)

 

TNM分類

T1 最大径が2cm以下の腫瘍で、実質外進展なし

T2 最大径が2cmをこえるが4cm以下の腫瘍で、実質外進展なし

T3 実質外進展を認めるが、第7脳神経浸潤の内腫瘍、および/または最大径が4cmをこえるが6cm以下の腫瘍

T4 頭蓋底、第7脳神経に浸潤する腫瘍、および/または最大径が6cmをこえる腫瘍

 

NX 所属リンパ節転移の評価が不可能

N0 所属リンパ節転移なし

N1 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3cm以下

N2 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3cmをこえるが6cm以下、または同側の多発性リンパ節転移で最大径が6cm以下、または両側あるいは対側のリンパ節転移で最大径が6cm以下

N2a 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3cmをこえるが6cm以下

N2b 同側の多発性リンパ節転移で最大径が6cm以下

N2c 両側あるいは対側のリンパ節転移で最大径が6cm以下

N3 最大径が6cmをこえるリンパ節

 

治療

唾液腺腫瘍の治療は手術による摘出が基本です。手術には腫瘍を摘出することと、摘出した腫瘍を病理検査に提出して腫瘍の組織型を確定する2つの 目的があります。耳下腺の手術を行う場合、耳下腺内を顔面神経という顔を動かす神経が貫通・走行しているため、良性腫瘍の場合はこの神経を保存し腫瘍を摘 出することが重要になります。ただ悪性腫瘍の場合は顔面神経の切除が必要となることがあります。当科では手術中に神経刺激装置を使用し、顔面神経を確認し ながら腫瘍の摘出を行っています。また、悪性腫瘍では手術に追加して放射線療法や化学療法を併用することもあります。