生活習慣により引き起こされる疾患の中で、唯一糖尿病は世界保健機関(WHO)が指定する克服すべき疾患に挙げられています。世界では8秒にひとりの率で、糖尿病に関連する死亡が生じています。徳島県でも克服すべき重要な課題が、平成5年からほぼ毎年続いている糖尿病死亡率国内ワーストワンでした。この課題を克服すべく、糖尿病の予防、重症化の阻止、そして健康寿命の延長をめざした研究と診療を推進するため、徳島大学は2010年1月に糖尿病臨床・研究開発センターを設立しました。初代センター長に、松本俊夫先生が、2014年1月から私がその任のバトンを引き継ぎました。2017年4月には、先端酵素学研究所の附属施設である糖尿病臨床・研究開発センターとして改組されました。

センターは、糖尿病臨床部門と糖尿病研究開発部門に分かれ、臨床研究から基礎研究、そしてそのトランスレーショナルリサーチまで推進しています。臨床部門では糖尿病の発症要因を明らかにするコホート研究を進める船木真理特任教授、県南部の地域医療を支え、血管合併症の成因とバイオマーカ解析を行う粟飯原賢一特任教授、そして徳島県の糖尿病診療の改革を目指す私が担当しています。研究開発部門では、小胞体ストレスをテーマに糖尿病の本質に迫る親泊政一教授、鉄代謝を切り口に糖尿病血管合併症の本質に迫る池田康将准教授、脂肪細胞の分化増殖の制御から抗肥満治療の創出を進める阪上浩教授、そして1型糖尿病の根治治療に再生医療で挑む池本哲也准教授と学内の錚々たる先生方にご参加いただいています。そして、アドバイザーとして松本俊夫前センター長にも引き続き加わっていただき、チームワークの良いメンバーが、それぞれの得意分野を活かした研究プラットホームを形成し、先進的な糖尿病の臨床と研究と人材育成を推進しています。  県医師会、行政、そして我々アカデミックの活動により、徳島県は2014年より糖尿病死亡ワーストワンが徐々に改善しています。この勢いをもって、世界的課題である糖尿病克服にさらに貢献していきます。

先端酵素学研究所
糖尿病臨床・研究開発センター長

松久 宗英