先進的糖尿病診療

糖尿病診療は、次々と有効な新薬や治療デバイスが登場し大きな変化の時期を迎えています。しかし、糖尿病患者の増加を抑制することはかなわず、また重篤な合併症患者も年々増加しています。これからの糖尿病診療には、適切な薬剤選択のための精度の高い糖尿病病態の評価法の開発、血管合併症のリスク解析と早期診断、先進医療機器や治療法の積極的導入が不可欠です。当研究室で取り組んでいる代表的な先進的糖尿病診療について紹介します。

 

1.人工膵島を用いた糖尿病の病態評価

2型糖尿病ではインスリン分泌能の低下とインスリン感受性の低下が病態の根幹となります。写真に示す日機装社製人工膵島(STG-55)を用いることで、経口ブドウ糖負荷試験などの病態評価に比して、2型糖尿病のインスリン分泌能およびインスリン感受性を高い精度で評価できます。本機器を用いた後述するContinuous Glucose Monitoring (CGM)の精度評価を行い最近報告いたしました(Kuroda et al. J Diabetes Sci Technol. 11:1096-1100, 2017)。

 

2.インスリンポンプ療法の最適化

1型糖尿病のインスリン皮下注射療法では基礎インスリンとして長時間作用型のインスリンを、食事用あるいは血糖補正用の追加インスリンを超速効型インスリンを用いることが多いです。しかし、基礎インスリンの必要量は常に一定なものではなく、覚醒や運動によりダイナミックに変動します。このような変動にも対応できるのがインスリンポンプ療法です。インスリンポンプ療法では微量シリンジポンプの中に超速効型インスリンを入れて時間毎に注入量を変化するようなプログラムを入力することができます。当研究室では累計100例を超える症例で詳細に設定を検討して基礎インスリン必要量が1日総インスリン必要量の28%程度であることを見出し(Kuroda et al. Diabetes Care 34:1089-90, 2011)、さらに各食事に対する追加インスリン必要量を1日総インスリン必要量から算出する方法を見出しました(Kuroda et al. Diabetes Technol Ther 14:1077-80, 2012)。2016年から利用可能になったグルコース値がリアルタイムでわかるリアルタイムCGMとインスリンポンプを組み合わせたSensor Augmented Pump療法やFlash Glucose Monitoringを用いた治療も積極的に行っております。

 

3.膵β細胞由来遊離DNAの検出

ヒト膵β細胞のインスリン遺伝子に含まれるすべてのCpGアイランドという配列において他の体細胞と異なり特異的に脱メチル化状態であることが知られています(Kuroda et al. PLoS One. 4: e6953, 2009)。1型糖尿病では大部分の膵β細胞が特異的に破壊された結果高血糖を呈する疾患です。循環血液中からこれらの配列を特異的に認識して検出することで膵β細胞の破壊を非侵襲的に評価する技術を当研究室で発明しました。この方法によって1型糖尿病発症の予知、あるいは膵臓移植、膵島移植時の臓器あるいは組織傷害の評価が可能になることが期待されます。

 


日機装社製人工膵島(STG-55)

 

以上のように、当研究室では糖尿病診療の明日を変える成果を打ち出していきます。