【研究成果報告】アフリカツメガエル転写因子の同祖遺伝子: 保存された遺伝子と進化する遺伝子

2017年7月13日
報告者

徳島大学教養教育院 教授 渡部 稔

 

研究タイトル

アフリカツメガエル転写因子の同祖遺伝子: 保存された遺伝子と進化する遺伝子

 

研究経緯等

【研究グループ】

  • 徳島大学:渡部稔
  • 沖縄科学技術大学院大学:安岡有理
  • 北里大学:回渕修治・伊藤道彦
  • 東京大学:近藤真理子・呉谷文・平良眞規
  • 山形大学:越智陽城
  • 長浜バイオ大学:荻野肇(現広島大学)
  • 北海道大学:福井彰雅(現中央大学)
  • 立教大学:木下勉

 

【学術誌等への掲載状況】

Conservatism and variability of gene expression profiles among homeologous transcription factors in Xenopus laevis.

Minoru Watanabe, Yuuri Yasuoka, Shuuji Mawaribuchi, Aya Kuretani, Michihiko Ito, Mariko Kondo, Haruki Ochi, Hajime Ogino, Akimasa Fukui, Masanori Taira, Tsutomu Kinoshita. Developmental Biology (Special Issue: Xenopus Genomes), Volume 426, Issue 2, 15 June 2017, Pages 301–324.

 

研究概要

【研究の背景】

転写因子は他の遺伝子の発現を調節するタンパク質です。転写因子をコードする遺伝子は“マスター遺伝子”と呼ばれ、生物にとって重要な働きを果たしていると考えられます。山中伸弥博士がiPS細胞を作成するために用いた4つの遺伝子も、すべて転写因子をコードする遺伝子です。私たち研究グループは、昨年のアフリカツメガエルのゲノム解読(Nature, 2016年10月20日号http://www.tokushima-u.ac.jp/docs/2016101800027/)を受け、アフリカツメガエルの転写因子の遺伝子の構造や発現を網羅的に調べました。

 

【研究の成果】

我々ヒトは2倍体ですが、アフリカツメガエルは異質四倍体であり、2種の祖先種由来の染色体のペア(同祖染色体)が存在します。すなわち各々の染色体が2種類ずつ存在しています。同祖染色体には同祖遺伝子のペアが存在しますが、進化の過程で同祖遺伝子のペアの片方が失われたり、新しい機能を持ったりすることが考えられます。私たちは412個の転写因子の遺伝子の構造を調べ、これらの遺伝子が他の遺伝子に比べ同祖染色体上で非常に安定に存在することを発見しました。これは転写因子は重要な機能を持っているというアイデアに一致します。また同祖遺伝子の発現パターンを調べたところ、多くのペアが同じような発現パターンを示しました。しかし一部のペアでは全く異なる発現パターンを示すものもありました。これは、一部の同祖遺伝子が、進化の過程で新しい機能を持ち始めていることを示唆します。

 

今後の展望

私たちはアフリカツメガエルの転写因子について網羅的な解析を行いました。転写因子は生物にとって重要な機能を持っていることから、この遺伝子の故障がヒトのガンや遺伝病の原因になることが知られています。今回解析したアフリカツメガエルの転写因子の遺伝子の多くは、同じ遺伝子がヒトにも存在しています。したがってこの研究から得られた成果は、ヒトのガンや遺伝病の研究にも役立ちます。また学術的な側面でも、同祖遺伝子の発現量の比較に関して初めて統計学的な解析を行いました。この解析法は、今後の類似した研究の標準となることが考えられます。

 

その他参考となる事項

研究の詳細は、以下のウェブサイトを参照してください。

 

ゲノム研究特別号の解説

論文