【研究成果報告】うつ病患者の血漿におけるキヌレニン/トリプトファン比、グルタミン/グルタミン酸比、メチオニン/メチオニンスルホキシド比の変化

2017年7月7日
報告者

大学院医歯薬学研究部 精神医学分野 准教授 沼田周助

 

研究タイトル

うつ病患者の血漿におけるキヌレニン/トリプトファン比、グルタミン/グルタミン酸比、メチオニン/メチオニンスルホキシド比の変化

 

研究経緯等

【研究グループ】

  • 徳島大学大学院医歯薬学研究部精神医学分野:大森哲郎、沼田周助、渡部真也、木下誠、梅原英裕、富岡有紀子
  • 徳島大学大学院医歯薬学研究部生体栄養学分野:二川健
  • 高知工科大学情報学群脳コミュニケーション研究センター:中原潔
  • 高知大学医学部附属医学情報センター:畠山豊

 

【学術誌等への掲載状況】

Altered KYN/TRP, Gln/Glu, and Met/methionine sulfoxide ratios in the blood plasma of medication-free patients with major depressive disorder. Umehara H, Numata S, Watanabe SY, Hatakeyama Y, Kinoshita M, Tomioka Y, Nakahara K, Nikawa T, Ohmori T. Sci Rep 2017; July 7

 

研究概要

【研究の背景】

本邦におけるうつ病の生涯有病率は3~7%で、社会経済的影響が大きい病気です。うつ病の診断は患者が呈する臨床症状に基づいて行われていますが、初診時に診断に苦慮する症例もあり、早期診断と適切な治療導入を促進する簡便で侵襲の少ないうつ病の診断マーカーの確立は、急務の課題です。これまでに研究レベルで血液を用いたうつ病の生物学的指標の探索は数多く行われてきましたが、客観的なうつ病の血液診断マーカーは未だ確立されていません。

 

【研究の成果】

研究グループは、うつ病患者33名とうつ病でない33名の二つのグループを、血漿中に含まれる代謝物質を網羅的に分析・解析するメタボロミクスという手法を用いて比較し、グループ間に差異を認める33の血中代謝物質を同定しました(図1)。さらに、グルタミン酸作動性代謝物質のバランスを示すグルタミン/グルタミン酸比や酸化ストレスを反映するメチオニン/メチオニンスルホキシド比やトリプトファン代謝経路物質であるキヌレニン/トリプトファン比の異常を明らかにしました。また、ROC曲線解析により、これらの代謝物質の一部が高い精度で二つのグループを区別できることを示しました(図2; 論文中Table2より作成)。続いて、同一サンプルを用いた抗うつ薬による治療8週間後の代謝物質の変化についても調べ、治療前に患者群で低下を認めていたグルタミン濃度とキヌレニン濃度が、治療により増加し健常者群に近づくことを明らかにしました。代謝産物は最終の表現系なので疾患の病態と関連した分子が見つかりやすいと言われており、本研究成果は、うつ病の診断マーカーの開発ならびに病態解明に役立つことが期待されます。

図1、図2

 

今後の展望

本研究成果により、血液の特定の代謝物質を測定することによりうつ病群とそうでない群を区別できる可能性が明らかになりました。今後、症例数を増やし、うつ病の血液診断マーカーとしての有用性・実用性を検討していく予定です。