【研究成果報告】自己免疫疾患発症を制御する分子機能を解明

2017年6月14日
報告者

先端酵素学研究所 免疫系発生学分野 准教授 大東いずみ

 

研究タイトル

自己免疫疾患発症を制御する分子機能を解明

 

研究経緯等

【研究グループ】

  • 徳島大学先端酵素学研究所 免疫系発生学分野 髙濵洋介
  • 徳島大学大学院医歯薬学研究部歯学域 口腔分子病態学分野 石丸直澄
  • 新潟大学医学部 免疫・医動物学分野 片貝智哉
  • 理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター 清成寛
  • University of Lausanne, Faculty of Biology and Medicine, Sanjiv A. Luthe

 

【学術誌等への掲載状況】

Essential role of CCL21 in establishment of central self-tolerance in T cells.

Mina Kozai, Yuki Kubo, Tomoya Katakai, Hiroyuki Kondo, Hiroshi Kiyonari,Karin Schaeuble, Sanjiv A. Luther, Naozumi Ishimaru, Izumi Ohigashi, Yousuke Takahama

The Journal of Experimental Medicine July 3, 2017. Volume 214, No. 7.

 

研究概要

【研究の背景】

自己免疫疾患は、からだにとっての異物を排除する役割を持つ免疫システムが正常な細胞や組織に反応して攻撃を加えてしまうことで発症します。自己免疫疾患の多くは、免疫細胞の一つであるTリンパ球の異常であると考えられています。Tリンパ球は胸腺で産生され、その過程で自己(自分のからだをつくる物質)と非自己(病原体などからだにとっての異物)の識別能を獲得します。Tリンパ球は産生される過程で胸腺内を次々に移動しますが、胸腺深部の髄質に移動すると、自己に応答して攻撃する自己反応性Tリンパ球が除去されるとともに、免疫応答を抑制する制御性T細胞が生成され、自己を攻撃しない仕組みである「免疫細胞の自己寛容性」が確立されます。T細胞の自己寛容性が破綻すると、自己免疫疾患を発症します。Tリンパ球が胸腺内を移動するためには、ケモカインと呼ばれる生理活性タンパク質の連携が必要です。その中でも、髄質に局在する髄質上皮細胞によって産生されるCCR7ケモカイン分子種は、Tリンパ球を髄質へと誘導するのに必要であり、Tリンパ球の自己寛容性確立に重要であることは明らかにされてきました。しかし、CCR7ケモカイン分子種にはCCL19やCCL21などの分子種があり、それぞれ機能が重複しているのか、それとも固有に機能的重要性を担っているのかを含め、どのCCR7ケモカイン分子種が必要なのか長年解明されていませんでした。

 

【研究の成果】

本研究で私たちは、CCR7ケモカイン分子種のひとつCCL21を特異的に欠損するマウスの作製に成功しました (図1)。このマウスでは、胸腺でのTリンパ球の髄質への移動と自己反応性Tリンパ球の除去が障害されていました (図2)。また、唾液腺や涙腺で炎症を発症し、涙量の低下など自己免疫疾患の一つであるシェーグレン症候群に類似した症状を示しました (図3)。

図1、図2、図3

 

今後の展望

複数存在するCCR7ケモカイン分子種の機能は重複していないこと、また、そのうちの1分子種であるCCL21こそがT細胞の自己寛容性確立に重要な分子であることが明らかになりました。自己免疫疾患の発症を制御する分子機能が解明され、自己免疫疾患の治療法開発につながることが期待されます。