【研究成果報告】未利用日本ナシ剪定枝を原料とした有用化学物質の生産

2017年3月7日

平成27年度 若手研究者学長表彰 研究成果報告

報告者

生物資源産業学部 講師 佐々木千鶴

 

研究タイトル

未利用日本ナシ剪定枝を原料とした有用化学物質の生産

 

研究経緯等

【研究の背景】

日本ナシ(以下、ナシ)は、西洋ナシと比較しても国内の生産量は多く、有名産地ではない徳島県(収穫量全国第14位)内でも作付け面積234 ha、ナシの収穫量5,180 tにのぼり、剪定枝はおよそ1,450 t排出されています(含水重量、平成27年度農林水産省特産果樹生産動態調査)。また、ナシの果樹園は都市部近郊の市町村の平地部のみに点在しており、試料の集荷がしやすいのも特徴です。しかし、有効な利用法がないのが現状です。実際に徳島県のナシ生産地域である松茂町にある生産農家に剪定枝の廃棄方法についてインタビューしたところ、排出された剪定枝の大半は粉砕機にかけて細かくして焼却する、ごく一部は農作物のための肥料にするが、すべての費用は生産農家が請け負っており、剪定枝に高付加価値を見出したいとの回答でした。そこで、ナシ剪定枝の有効利用および高付加価値資源として見出す研究に着手しました。含有成分等を調査したところ、美白成分として基礎化粧品等に配合されているポリフェノールであるアルブチンが含有されていることを見出しました。

 

【学術誌等への掲載状況】

1. Sasaki C., Ichitani M., Kunimoto K., Asada C., Nakamura Y., Extraction of arbutin and its comparative content in branches, leaves, stems, and fruits of Japanese pear Pyrus pyrifolia cv. Kousui, Biosci. Biotechnol. Biochem., 78, 874-877, 2014

2. Sasaki C., Yoshida Y., Asada C., Nakamura Y., Total utilization of Japanese pear tree prunings: extraction of arbutin and production of bioethanol, J. Mater. Cycles Waste Manag., 18, 385-392, 2016

 

研究概要

1. 抽出アルブチン量の原料部位の比較

アルブチンは、ハイドロキノンにグルコースが結合した配糖体です。表皮にあるメラニン産生細胞のメラニン生成経路においてチロシンからメラニンに至るまでに関わる酸化酵素であるチロシナーゼの働きを阻害する作用を有することから美白成分として基礎化粧品に添加されています。国内外においてコケモモの葉やナシの葉、果皮や花の蕾、ハーブなどから抽出されることは知られていますが、ナシ(剪定)枝からの抽出に関する報告はありませんでした。そこで、ナシの果樹園から排出される剪定枝(一年枝)、葉、幹、果実の皮および果肉に含まれるアルブチン含有量を比較しました(図1)。抽出には10%(v/v)メタノール水溶液を用い、試料乾燥重量50 mgに対し25 ml添加し、超音波洗浄機中に10分おいて抽出しました。得られるアルブチン量は乾燥試料1 gあたり多い順に枝(12.8 mg)、葉(12.0 mg)、果皮(5.1 mg)、果肉(0.3 mg)および幹(0.1 mg)となりました。さらに、枝の樹皮をカッターナイフで削ぎ、樹皮以外の部分とに分けてアルブチンの含有量を調査したところ、樹皮には乾燥試料1 gあたり27.1 mg、樹皮以外には5.2 mg含まれていることがわかりました。次に、樹皮から得られたアルブチン含有抽出液(ESCA)の美白成分としての機能であるメラニン産生抑制能を調査しました。

 

図1 抽出アルブチン量の原料部位の比較

 

2. ナシ剪定枝由来アルブチンのメラニン産生抑制能

メラニン産生抑制能を調査するために、マウスB16メラノーマ細胞を用い、樹皮を水のみで抽出した試料を凍結乾燥し、培地に10%(w/v)となるように溶解したものをアルブチン含有抽出液(ESCA)としました。細胞毒性試験も行い、それぞれの試験についてESCA濃度は4.0×10-3、8.0×10-4および1.6×10-4%(w/v)を試験しました(これらに含まれるアルブチンの濃度は16.0、3.2および0.64 g/ml)。アルブチン標品の16.0および3.2 g/mlと比較しました。図2に示す通り、4.0×10-3%(w/v)において細胞毒性を示すことなくコントロールのメラニン生産量の77.9%に抑制することが明らかとなりました。一方で、16.0 g/mlのアルブチン標品のメラニン生産量試験においてもコントロールの69.6%を示し、これによりアルブチン標品と同等の結果が得られたことにより、ESCAは生体に安全かつメラニン産生抑制剤として有効であることが示唆されました。

図2 B16メラノーマ細胞中のメラニン生産におけるESCAの効果 
Student’s t-test : *P<0.001, ** P<0.01

 

今後の展望(研究者からのコメント)

今後も、未利用の廃棄物を有効活用し、利益が創出できるような活用の仕方を模索し、徳島県から技術を全国に発信することで地域の活性化に繋げたい。