【研究成果報告】卵巣機能の低下が中枢のストレス制御機構に及ぼす影響とその機序の解明

2017年1月26日

平成27年度 若手研究者学長表彰 研究成果報告

 

報告者

徳島大学病院 地域産婦人科診療部 特任准教授 岩佐 武

 

研究タイトル

卵巣機能の低下が中枢のストレス制御機構に及ぼす影響とその機序の解明

 

研究経緯等

 

【研究の背景】

卵巣機能は生殖機能の維持や骨代謝のほか、栄養代謝機能や認知機能など複数の神経・生理機能に関わることが知られています。一方、卵巣機能とストレス調節機構の関係については十分解明されていません。我々は実験動物を用いた検討により、卵巣摘出が炎症性ストレス反応を増強することを明らかにしてきました。この結果から、今回、卵巣摘出による性腺ホルモンの低下がストレス反応を高める神経内分泌学的機序を明らかにすることを目的として研究に取り組みました。

 

研究概要

1.卵巣機能低下がストレス反応に及ぼす影響

卵巣を摘出した動物と摘出していない動物に同等のストレスを負荷したところ、①卵巣を摘出した動物ではストレスによる体重と摂食量の減少がより顕著であること(図1)、②卵巣を摘出した動物では脳および脂肪組織における炎症反応がより顕著であること(図2)、および③これらの変化は卵巣ホルモンを補充するだけでは軽減しないことが明らかとなりました。これらの結果から、卵巣機能が低下することで全身のストレス反応が高まること、およびこれらの変化は卵巣ホルモンを補充するだけでは改善しないことが示唆されます。

2.卵巣機能低下に伴うストレス反応増強におけるアディポサイトカインの役割

脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインは、栄養代謝調節機能以外に炎症反応の調節作用を有することが判明しています。我々は特に作用が強いとされるビスファチンというタンパク質について、卵巣機能によるストレス反応の変化との関わりを検討しました。その結果、①卵巣を摘出した動物ではストレスによってビスファチンの遺伝子発現が高まりやすくなること、および②ビスファチンを阻害する物質を投与するとストレスによる炎症反応が軽減することが判明しました。これらの結果から、ビスファチン反応の高まりが、卵巣機能低下によるストレス反応の増強に関与していることが示唆されます。

 

図1

 

図2

 

 

今後の展望(研究者からのコメント)

今後、より具体的な機序を解明することで、ストレス関連疾患の予防法を確立することを目標としています。

 

その他参考となる事項

【学術誌等への掲載状況】

1.Takeshi Iwasa, Toshiya Matsuzaki, Riyo Kinouchi, Ganbat Gereltsetseg, Masahiro Murakami, Munkhsaikhan Munkhzaya, Tungalag Surv Althankhuu, Akira Kuwahara, Toshiyuki Yasui, Minoru Irahara. Changes in central and peripheral inflammatory responses to lipopolysaccharide in ovariectomized female rats. Cytokine 2014 65: 65-73.

2.Takeshi Iwasa, Toshiya Matsuzaki, Altankhuu Tungalagsuvd, Munkhsaikhan Munkhzaya, Takako Kawami, Takeshi Kato, Akira Kuwahara, Toshiyuki Yasui, Minoru Irahara. Effects of ovariectomy on the inflammatory responses of female rats to the central injection of lipopolysaccharide. J Neuroimmunol, 2014 277: 50-56.

3.Takeshi Iwasa, Toshiya Matsuzaki, Sumika Matsui, Altankhuu Tungalagsuvd, Munkhsaikhan Munkhzaya, Eri Takiguchi, Takako Kawakita, Akira Kuwahara, Toshiyuki Yasui and Minoru Irahara. The sensitivity of adipose tissue visfatin mRNA expression to lipopolysaccharide-induced endotoxemia is increased by ovariectomy in female rats. Int Immunopharmacol, 2016 35: 243-247.

4.Takeshi Iwasa, Toshiya Matsuzaki, Sumika Matsui, Altankhuu Tungalagsuvd, Munkhsaikhan Munkhzaya, Takako Kawami, Mikio Yamasaki, Masahiro Murakami, Takeshi Kato, Akira Kuwahara, Toshiyuki Yasui and Minoru Irahara. The effects of ovariectomy and LPS-induced endotoxemia on resistin levels in female rats. Cytokine, 2015 76: 558-560