野地学長と田村耕一 徳島経済同友会代表幹事 が対談を行いました

2016年10月24日

大学の財政難を解決するには?

野地: 本日は、お忙しいところ対談の時間を設けていただき、ありがとうございます。徳島大学は、第3期の大学改革案を現在策定しており、本日はその内容についてお話して、ご意見等をいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
早速ですが、国立大学法人は国からの運営費交付金により運営していますが、それがどんどん減っています。毎年約1%ずつです。

田村: 前に学長からお聞きした時は、病院の収入を除いて200億円の収入で、そのうち7割ぐらいが運営費交付金。それが1%ずつ減っているわけですね。

野地: 10年経つと1割減っていて、これまでは40億円ぐらい減っています。理由は、少子化や国の財政が悪いとか理解できるのですが、教育は国の将来にとって大事ですから、減らさずにむしろ増やす必要があると思います。

田村: この夏、経済同友会の西日本の代表幹事会では、大学がテーマとなりました。やはり知の拠点として、特に国立大学は将来の日本を考えると極めて重要ですので、運営費交付金が減ってきている状況に強く反対する声明を西日本の代表幹事名で出させていただきました。

野地:物件費もぎりぎりまで削って、終に人件費を削らざるを得ないという状況で、いろんな大学で人事凍結をしています。つまり、定年退職者の後任を補充しないという人件費の削減方法です。それでは人が減る一方なので、補充できないとなるとやはり大学運営は大変になりますが・・・。

田村: いかにして運営費交付金以外の資金を獲得するかというところですね。

野地: 削る方はネガティブなので、どうやって資金を獲得するかというところですが、企業ではないので利益を上げることはできません。授業料の値上げはそう簡単にはできませんので、寄附をお願いするしかありません。どうやって寄附金を増やすかということで考えたのが、クラウドファンディングです。

田村:野地学長は、新しいことにチャレンジされていると我々も感じていまして、その一つがクラウドファンディングです。現在の3件のクラウドファンディングのうち、一番驚いたのは「星が形成されるメカニズムの解明」の研究で、ハワイへ行く旅費が500万円近く集まっていたことです。普通に考えたらそんなにお金は集まらないと思うような案件でも、伝え方というか、ストーリーの作り方によっては、それだけお金が集まるというのは非常に驚きました。

野地:私も驚きました。結局、マスコミの力をお借りしたのがポイントでした。

田村:そういう違う人の力をうまく引き込んで情報発信につなげるという、そこの努力をされたということですね。

野地:情報発信がうまくできたことで目標金額以上の募集に成功しました。そういうことでクラウドファンディングの実施に勇気を得ました。

田村:大学のホームページを拝見したら、新しいクラウドファンディングを一件募集していました。

野地:新しい案件は、酵素が欠損している病気の治療薬を開発している研究者が募集しています。

田村:学長は今年の入学式の式辞で、人類の課題を地域で解決することを目指すと話しておられました。そういう誰もが解決しなければならないようなことを率先して徳島大学が研究テーマにして、それを日本だけではなく、ストーリーをつけて世界に発信して寄附を募るというのは新しい取組だと思います。そこは本当に良いところに目をつけられた、取っ掛かりを見つけられたと非常に感銘しました。

野地:ありがとうございます。

田村:人類の課題って多いです。

野地:しかも、大きな課題。

田村:誰もが何とかしなければならないというような大きな課題といえば、エネルギーもあるし、地球温暖化、食糧難、少子高齢化などたくさんあります。それに関連した研究をされている方は、徳島大学にたくさんおられると思います。

野地:研究者は学問への探求心で研究を行っていますが、その研究を支援してもらおうとして、皆さんにアピールすることはしてきませんでした。しかし、これからはそれをしないと研究費を得られない状況です。研究を支援いただくためのアピールを学内組織で行うことは難しいので、一般社団法人で行うことにしました。

大学支援機構を設置して、大学の基盤を効率化

徳島県経済同友会代表幹事 田村 耕平 氏

田村: 一般社団法人ですか。

野地:一般社団法人大学支援機構という大きい名前です。なぜかというと、86ある国立大学の基盤的なシステム、たとえば学生の成績管理、共同機器の利用、給与計算、遺伝子組み換えの等の申請、入試、e-learning、就職支援とか、共用できるシステムを各大学が独自に、例えば1億円なりを出してシステムを作って、それぞれを単独で運営しています。

田村:それは非効率ですね。野地学長が推進されるということですか。

野地:はい。いろんな方に話をすると、皆さん「良い構想ですね」と仰ってもらえます。今までに誰かがトライしているのでしょうが、実現していません。最初は徳島大学だけで実施してみて、それから様々な大学に広げようという構想です。そうなると日本の大学全体が楽になるという発想です。

田村:それはすばらしいです。日本全体の大学を考える構想が徳島大学から出ているということは、県民にとっては誇りでもあります。

野地:場合によっては、このシステムをアジアにまで広げるとか。

田村:是非実現できれば良いと思います。

野地:だんだん話が大きくなってきましたが、そうなるといろんな意味で世界が変わっていくと思います。

日本は鎖国状態?

野地:最近、日本は遅れていると思っています。ある先生は、鎖国状態だと。

田村:それは思いました。経済同友会の四国大会で、東京の経済同友会の小林代表幹事が記念講演をされたのですが、これからの経営者は今までのようにGDPで代表されるようにマーケットとしての価値を追求するだけではダメで、二つの視点が必要とお話されました。一つは環境問題とか社会的課題にどう答えていくかという視点と、もう一つは急速に進んでいるイノベーションを企業はどう取り込んでいくかという新しい二つの視点です。急速なイノベーションで具体的に取り上げられたのが、AIの人工知能、ビッグデータ、IoT、ロボット、3Dプリンタ、シェアリングエコノミーの動きです。

野地:どれも遅れています。大学にもシェアリングエコノミーがあって、例えば、今まで何億円もする測定装置を個人の研究者が使っていて、これをシェアしてみんなが使えるようにすれば稼働率が上がるし、みんなが楽になります。専門家がいれば良いデータが取れるし、そういうことを全大学で行えば、本当にみんな楽になります。

田村:公益財団法人徳島経済研究所が主催して、徳島で中小企業がこれからIoTを一層活用するようなムーブメントを起こしていきたいと研究フォーラムを開催しました。この秋には研究会を立ち上げる予定です。研究だけには終わらず、具体的な成果を出していければと考えています。

大学から新しい産業を興したい

徳島大学長 野地 澄晴

田村:大学経営もこれまでと違って大きく変わってきますね。

野地:資金を獲得する経営をしなくてはならない時代になってきました。

田村:徳島大学は、特許料収入が数年前に比べて大幅に増え、とても頑張っているなと感じています。それから、本当に役に立つ研究をしている研究者もたくさんおられるので、いかに実業の世界と結びつけるかというところでしょう。

野地:実際、大学が持っている知的財産を企業に持って行っても、ほとんど売れませんでした。逆に、大学のシーズを売るのではなく、企業のニーズにあったシーズを売り込むという企業目線のニーズであると非常にうまくいきました。

田村:課題解決型の産学連携手法みたいなものですね。それをするときに、金融機関が間に入る役割というのが非常に大事と思います。

野地:徳島大学は、平成24年度に阿波銀行と地域の産学連携を推進し、地域の発展と産業の振興に寄与することを目的とする協定を締結しています。

田村:金融機関と大学と企業との連携というのは、これからもっと取り組んでいかなければならないと思います。

野地:その方向性は、取り組まなくてはならないですね。

田村:クラウドファンディングでは、徳島大学に直接関係がなくても、徳島大学が行っていることに共感を持って寄附しようという人を、どれだけ世界から集めてくるかが非常に重要です。

野地:大学の研究はインターナショナルで、募金のサイトが日本語だったのを英語にして、国際的に発信してどれくらい効果があるか試そうとしています。

田村:クラウドファンディングにおいて、ファンドを集めるため、わかりやすくストーリーを作って発信することに慣れてない研究者もおられるかと察します。それをサポートするような専門の部署はありますか。

野地:リサーチ・アドミニストレーション部門というのを学内に設置して、そこがサポートしています。地域を活性化するために、大学は大事な役目を果たさなくてはなりません。地域の活性化は、地域に産業を興すことだと考えています。産業が興れば、人が増え、お金も流通し、どんどん発展するのは間違いありません。企業を立ち上げることと産業を立ち上げることはよく似ていますが、産業を立ち上げるというのは企業を立ち上げるより、もう少し広いかというイメージです。

田村:徳島県で産業を興すという意味で取り組んでいるのは、LEDバレイ構想です。徳島大学もかなり関わっておられますけど。

野地:もちろん頑張っていますが、県内ではもうひとつブレイクしないというか・・・。

田村:どうしてもLEDで普及する商品は大手企業が行っているので、なかなか爆発的に増えるというところまでいっていないようです。

野地:どうすれば産業が興るかと、ずっと頭の隅に置いて考えているのですが、これからの産業は、IoTも含めてICTを本格的に産業にする意識で取り組まなくてはならないと思っています。

田村:それは非常に重要なところだと思います。

野地:産業の一部がIoTですが、IoTそのものを産業にするみたいな、そんな仕方ができないかなと考えています。しかも徳島は、ネット環境がとても良いのです。今、クラウドファンディングを行っていますが、産業的にはクラウドソーシングだと思っています。それを本格的に産業にするという意識で、いわゆる単なる道具として使うのではなく、そのものを産業にするということを本気でできないかなと考えています。

田村:光ファイバー網の整備率は、徳島は全国で堂々の一位です。そういう意味では、ITを県全体の産業にするという環境としては悪くないです。

野地:本当にそう思います。意図的にここでICTをすると決めて、全部ICTの町にすることはできないでしょうか。所有でなくシェアで、その概念と結びつけることによって産業が興らないかなと、そういうところまで考えているのですが、そこから先は具体的になっていません。

田村:徳島を実験的モデルにして、シェアリングエコノミーの先進県にすれば、非常におもしろいかもしれませんね。徳島県が全国の中でも時代を先取りしているというムーブメントを起こしていかなけばならない。そういう意味ではシェアリングエコノミーと結びつけた、いろんな現象が起こっている地域だ、というのを目指すというのは非常に賛成です。

野地:実際に投資したことはすぐに影響は出ませんが、何年か経ってみるとそれが非常に良かったと感じるおもしろいやり方が、シェアリングの中にあるのかもしれないなと思います。

産業のネタはあるのか?

田村:大学がいかにして資金を獲得するかというところに話を戻すと、新設した生物資源産業学部には、資金獲得につながる種がたくさん出てくるのではと思います。それこそ朝鮮人参とか、松茸とかの人工栽培みたいなのができてくれば…。

野地:そうですね。今、一番期待しているのは豚です。石井町にある生物資源産業学部の農場に、豚舎を作っています。究極は、移植するためのヒトの臓器をヒトiPSを用いて豚で作ることを目指しています。

徳島県経済同友会代表幹事 田村 耕平 氏

田村:是非実現してほしいです。それ以外には食用コオロギですね。

野地:食用コオロギは産業になる可能性があると思います。

田村:食用コオロギもクラウドファンディングで寄附を集めていたようですが。

野地:コオロギの飼育装置を開発するために寄附を集めました。現在、ベンチャー企業の立ち上げを計画しているようです。

田村:地域に貢献する人材育成という点では、やはり徳島はこれから交流人口を増やさなければならないので、そのためには観光産業みたいなところに従事できるような人材育成も、徳島大学でさらに力を入れていただければと思います。地元のことを本当によく知っている人材の育成です。地元の人ならではの魅力的な観光商品を自分達で作って、それを発信して商品化していくような、そういう人材が徳島にもどんどん生まれてくれば良いと思います。

野地:徳島県がメインで売ろうとしているのは何かありますか。

田村:地鶏の阿波尾鶏ですが、最近では阿波牛・阿波ポークといった肉類とやはり水産です。

野地:観光を産業としていくにはどうすれば良いのでしょうか。

田村:観光商品としては、徳島のいろんな和菓子店がレンコンを使用した「ういろう」とか、徳島らしい変わり種の「ういろうみたいなもの」を作って、それを産直販売する動きは結構出てきていますが、ITを使っていかに全国に魅力を発信していくかという、そこのところがまだできるように感じています。やはり情報発信の仕方で、これからは特にITを使った情報発信です。IT感覚を持ったセンスのある売り出し方をできるような、そういう人材がもっと必要になると思います。

世界のトップ100に入る大学をめざして

徳島大学長 野地 澄晴

野地:徳島大学はそこそこの良い大学であると思っていると、絶対トップにはなれないです。

田村:学長は入学式の式辞で、10年後にはトップレベルの大学を目指すと言われました。トップレベルとは具体的にはどういうイメージでしょうか。

野地:徳島大学改革プランに書いていますが、世界のトップ100です。トップ100だと簡単だと思うかもしれませんが、今世界のトップ100に入ってる大学は日本では2校しかなく、東京大学と京都大学だけです。それだけ難しいのです。文部科学省がトップ100に10大学入れると言っているところです。

田村:具体的な成果としては、トップ100の中に10年以内に徳島大学を入れたいということですね。そのために特徴のある大学、人類の課題を地域から解決するような研究をし、どんどん発信していくというところですね。

野地:少子化で、これから日本の大学生が増えることはないと思います。そうなると、留学生に入学してもらうことも大事になってきます。留学生は大学ランキングを見ていますので、良い留学生に入学してもらうためにはランクを高くすることが必須です。

田村:レベルがより高い留学生が入ってくる大学にするということですね。

野地:しかも、長期に考えると日本語教育が大事で、留学生の中から日本に残ってくれる人を育成していくことが必要だと思います。残るためには、必ず日本語がきちんとできてなければならないし、日本の文化を知っていないとならないから、徳島大学でしっかり教育をして、徳島に留学生が残る。それがいろんな地域の問題を解決する一つになると思います。そのためにも大学のランクを上げていかなければなりません。

田村:人口減少に日本全体がどう対応するか、今は高齢者の活用とか女性の活躍とか叫ばれていますが、優秀な外国人にも日本に住んでもらうということも視野に、もっと行動しなければならないということですね。

コミュニティーと連携して、仕事作り、クラウドソーシングも

田村:徳島大学は県内の全市町村と提携されていますが、具体的にはどんな取組がこれから出てくるのでしょうか。

野地:徳島大学は、平成26年度に徳島新聞社と地域社会における地域貢献の推進に向けた連携協定を締結しています。「まちしごとファクトリー」それが中心となる取組です。小さな仕事でもしっかり仕事が起こって、そこで人が暮らせるようになると、地域としてはとても良いです。

田村:スモールビジネスを県内に起こしていこうということですね。

野地:クラウドソーシングの町にするとすごく良いと思います。クラウドソーシング、クラウドファンディングという結論に至るわけです。

田村:日本では、クラウドソーシング・クラウドファンディングは、企業とか団体がいろいろしているというのはあるでしょう。しかし、地域全体でそのことを掲げて取り組んでいるところはまだないです。

野地:作りましょうか、徳島システムを。

田村:それはちょっと、一つ大きな課題ができました。

野地:クラウドファンディングのシステムを10月に立ち上げました。その次はクラウドソーシングです。先程も徳島大学の話から全国の国立大学の話になりましたが、クラウドソーシングは徳島大学の話から徳島県の話になってほしい。そのうち世界の話になれればとても面白いと思うのですが。

田村:大学の話からとても大きな話になってしまいました。

野地:大きくないと成功も大きくならないし、大きいほうが夢もあります。大変ですが・・・。だから大きく構想して小さくスタートする。良いスタートはそうです。

田村:当面は、IoTでいろいろ連携させていただきます。それをきっかけにして広げていって、徳島がいろいろ時代を先取りする地域になるようなことを、是非一緒にさせていただければと思います。

野地:本日はありがとうございました。

解説:IoT (Internet of Things)

あらゆる物がインターネットを通じてつながることによって実現する新たなサービス、ビジネスモデル、またはそれを可能とする要素技術の総称。

解説:(シェアリングエコノミー)

スマートフォンやPCを使って個人の遊休資産の貸し出しを仲介するサービス。貸主は遊休資産の利活用により収入を得ることができ、利用者は資産を所有することなく利用することができる。